深いところまで突き詰めた作品
── どうして北海道で録ろうと?
村田:スタジオが広くて、ドラムが良い音で録れるというのと、空気が乾燥しているから湿度が低い。それと、スタジオのまわりが森なのでリフレッシュ出来るし、うちらが行った時は天気が良くて、エンジニアさんが「L.A.みたいな音で録れてるよ」って言ってました(笑)。フェリーで行って、間に1日ライブをやって全部で9日間ぐらい。レコーディングが終わってからのビールの量がハンパなかったですけどね。また行きたいな。
大貫:僕たちが行く前まで雨が降っていたらしくて、着いて1日目と2日目はそれなりに湿気があったんですけど、3日目は湿度も低くすごく録りやすい環境だったんです。
村田:でもレコーディングの1ヶ月前は、曲作りでとにかく忙しかったですね。
── 昔からある曲でライブでも演奏されていますが、アレンジを変えてるんですか?
村田:ちょいちょい変えました。で、あまりにもアイディアが出て来ないので、1時間リフレッシュしようと1杯お酒を飲みに行こうと思ったら5〜6杯飲んじゃって、その日が潰れちゃったりとか(笑)。
── 1杯飲もうって言って、1杯で帰る人見たことないですから(笑)。でも気分転換も大事ですよね。
村田:普段はゆとりを持ってやってるんですけど、今回ゆとりを持ちすぎてうまくいかなかったというか。でも充実したレコーディング期間でした。
── 個人的にも大きなものが得られた、と。
村田:これまでは感性に頼ってべースを考えてましたけど、そこだけじゃなくて自分の限界値を超えようって。だから今まで弾いたことがないフレーズにも挑戦してるし、この5曲が余裕で弾けるようになったら限界値が上がったということになりますね。
── サウンドとしても今までにない引き出しを開けた感じってないですか?『新世界より』は歌謡曲のテイストもあり、今までの真空ホロウにはなかったなと思ったんですけど。
松本:新しく聞こえるかもしれないですけど、今までに比べてひとつの側面に対してより深いところまで突き詰めるようになったんです。1曲に対する思いもそうですし、歌もそうですし、その中の主人公になりきるという部分に関しても、その中の人として歌う、演奏するという思いが強くなりました。
── さっきの村田さんの話じゃないですけど、感覚だけじゃなくて1曲1曲を追究するようになったと。
松本:それもあるし、感覚はもっと大事にするようになったし、全体的に濃くなりましたね。
── 歌も気持ち良く歌ってる感じが特にあって。
松本:そういう曲調が好きなんです。
── コーラスはどなたが?
松本:全部僕です。
── ライブを見て疑問に思う方もいると思うんです。村田さんの前には毎回必ずマイクは設置されているのに、コーラスをやっている気配がないと。今回も変わらずやられてないんですね。
村田:実はCDではちょろっとやったんです。
大貫:コーラスというか…ですけど(笑)。
村田:『週末スクランブル』で。2人がマイクの近くでコーラスやって、僕の声はデカイのでマイクから1メートル半ぐらい離れてやったんですけど、2人の声に全部かぶっちゃって。
── だからコーラスやらないんですね。
大貫:良く捉えたらそういうことですね(笑)。
── その『週末スクランブル』の歌詞で、「べつに悲しくもないのに 泣いているのはデフォルトです」というとところが印象的で、現代が象徴されている感じがしたんです。また、全体的に凶器的な歌詞も多く、こういう歌詞ってどういう時に浮かぶんですか?
松本:僕も現代の人ですし、1人でいる時に思ったことを。でも、みんな心の中では思ってるんだと思うんです。口に出さないだけで。それを書いてみたというか。
── 松本さんが書く詞を他のメンバーさんはどう受け取ってます?
村田:僕は深く考えられる人じゃないので、見て思ったことを直感的に受け止めるというか、それに対してどうアレンジをしていくか。冷めてるのか悲しいのか情熱的なのか。そういうのを自分なりにやって、たまにボケッと何も考えずに見ている時に、「もしかしてこうなんじゃね?」って思ったり。その要素をどう入れようかと考えていきますね。
── ちなみにですが、村田さんは日頃どんなこと考えてますか?
村田:脳内メーカーってあるじゃないですか。あれを電車の中で勝手にやるんです。人の脳の中を勝手に予想するのが好き。
松本+大貫:(苦笑)
── なるほど。また『The Small world』は松本さんの持ってる世界…自分の世界を呼び覚ますということを言っている決意の曲ととれましたが。
松本:決意の曲は他にあるんです。
── あ、『眩暈』ですか?
松本:そうです。『眩暈』は一番初めに決意を込めて書いた曲です。今回に特化した決意が『眩暈』だとしたら、『The Small world』は自分への戒めの曲なんです。今の自分から過去の自分への思いと、過去の自分があるからこその今の自分への思いを含んでますね。