真空ホロウが10月24日にミニアルバム『小さな世界』でメジャーデビューを果たした。夏に行なわれた野外フェス出演時にこの発表をし、客席が大きく沸いていたのを覚えている。新宿ロフトが企画するブッキングイベントで何度もステージに立ち、後にワンマンを開催。ロフトと共に歩んできたバンドが、より大きく羽ばたこうとしている姿はとても嬉しく思う。
その彼らが今回リリースした『小さな世界』は、もともと持っている突き刺すようなメッセージはより鋭く、彼ら自身も楽曲に対して深く突き詰めていった作品。活動をする中で着実に多くのものを手に入れながら、一歩ずつ一歩ずつと進んでいる。きっとこれからもっと多くの人の心を動かすバンドになっていくに違いない。今作はそのスタート地点としても、素晴らしい作品となった。今回はライブ前の3人にお話を聞いた。3人それぞれが自信に満ちた顔をしていたことが印象的だった。(interview:やまだともこ)
音に対してストイックになった
── メジャーデビューおめでとうございます。やはり活動をしていく中でメジャーデビューは目標のひとつだったんですか?
松本明人(Vo./Gt.):メジャーデビューしたほうが良い時が来るのだろうという思いはずっとありました。
── 今作『小さな世界』は、歌詞がより開けて、わかりやすくなった印象を受けました。それはデビューするということも意識としてあるのかなと勝手に想像しましたが。
松本:意識していないと言ったら嘘になりますけど、『ストレンジャー』をリリースした頃からあった曲もあって、『The Small world』は5年ぐらい前に作った曲ですし、この音源のために書き下ろしたというものはないんです。
── それはこれまでの作品をリリースするたびに候補にあがりながら、今回は違うねという感じで入らなかったとか?
松本:選ばれなかったんです。入るべくして入ったものしか今回は入れてない。
── 入る時を待っていた曲ということですね。
松本:そうかもしれないですね。
── 今回作品が出来上がって手応えとしてはいかがですか?
村田 智史(Ba.):毎回毎回積み重ねなので、今出来ることを3人がそれぞれ底上げしたという感じですね。手応え的には盤を出すたびに毎回あります。今回はちょうど良い時期に出せたと思うから、そういう手応えはあると言えばある。
── インディーズの時の最後の作品『Slow and steady』は自分たちでプロデュースされたそうですが、今回はプロデューサーさんはついていたんですか?
村田:ディレクターがついてくれましたけど、ディレクターはああしたほうがいいとかではなく、ちょい足しちょい足しでやってくれて。
松本:「俺たちがやりたいことをより良くするにはというのをすごく考えて言って下さる」って、智史さんが前に言ってました。
村田:それと俺らの意見を通してくれる。制作に関して言えばディレクターとメンバーのフラストレーションもそんなになくて、むしろベースのラインが決まらなくて苦労しました(笑)。
── アイディアが出て来ない時期があったということですか?
村田:盤に閉じこめるってことはゆくゆくまで残るから、ギリギリまで一番良いのを練っていて。レコーディングの当日まで決まらなくて、メンバー2人に助けてもらったりとか。特に『眩暈』は一晩中考えてましたね。夜の11時に全体レコーディングが終わって、『眩暈』だけベースが録れなくて、明日の朝録ろうってなったんですけど、ラインが決まらないって言って手伝ってもらって、夜中の2時半ぐらいまで一緒にやって、そこから朝の7時半まで練習して、気がついたら床で寝てて、そのまま10時からレコーディング。
── 体にきますね…。
村田:他の2人は多少余裕があったみたいですけど、僕は出来る時と出来ない時の差が激しいから。今回収録している曲に関しては、全然アイディアが浮かばなかった。2週間ぐらい前から考えていたけど、全然出て来なくて、大貫くんがアイディアくれたんですけど、神の一声みたいな感じでした。3人でひとつの作品を作り上げていくから、自分ひとりで悩まなくても良いんだというのは改めて思いました。年齢は僕が一番上なので、2人は言いづらい部分もあると思うから、自分がお手上げの時は素直に言った方が良いんだなというか。普段は僕が2人にあーだこーだ言って、イライラもしてるだろうけど(苦笑)。いつもベースが一番最後ですけど、今回は断トツでビリでしたね。
── レコーディングは、集中力が必要な時間が何日も続くってことですよね?
村田:リズムの録りは3日だったんですけどね。ベースとドラムは一緒に録るんです。たいがいドラムがOK出て、そこからベース。一緒に録らないくてもいいんじゃないかって思うぐらい(笑)。でも、大貫くんは今回特にこだわってたね。俺は良いと思うのに「もう1回」って何度も録り直してた。
大貫朋也(Dr.):納得いかないものは出したくないので、そこは細かくやりました。フィルのスネア1発分のニュアンスとかまでけっこうこだわったんです。あとリズムパターンも、クリックには合っていてもニュアンスが違ったりとか。ちょっとずれてるってまわりからしたら味になるのかもしれないんですけど、自分が納得いかなかったので。
村田:前のテイクよりこっちのほうが良いって言われても、違いがよくわからなかった。でも彼のこだわりは今回特に強くて、そんなにテイク録らなくても大丈夫なのに、やたらやるなぁみたいな感じだった。それだけ覚醒していたというか。
大貫:メジャーというフィールドになって、より多くの人が聴いてくれると考えると、自分が納得いかなかったところに気付く人もいるかもしれないし、それは悔しいと思うんです。
松本:今回北海道で録ったんですけど、音も聴こえもエンジニアさんとの相性も良くて、アコギも良い音で録れたんです。だから、いつも以上によく聴こえていたのかなとも思います。そういう環境だったのでより音に対してストイックになったのかもしれません。