ベストを更新していくには別の道があるんじゃないか
── でも…核心をつきますけど、なんでこんなに素晴らしい作品が出来上がったのに解散を決めてしまったんですか?
渡辺:僕個人の気持ちですけど…、昨年の自分の内面から出てくる曲を形にしたいというところから、自分自身と向き合って曲作りを始めて、“自分”対“自分”、“自分”対“音楽”、“自分”対“メンバー”など、今までの中で一番と言っていいぐらいいろいろなものと正面から向かい合ったんです。そうして曲作りをして突き詰めた結果、すごく自信のある良いものが完成したんですが、その反面、このメンバーで出来るベストが尽くされたんじゃないかと思って。じゃあこれを越えるにはと考えたら、caroline rocksという枠からそれぞれ飛躍しないといけないのかなというところに至ったんです。自分のベストを更新していくにはもっと別の道があるんじゃないか、と。
── 解散の話は、渡辺さんからみなさんに話をしたんですか?
渡辺:そうです。まず僕自身がそういう事を感じていて、それをメンバーに話して。
── みなさんはどう受け取りました?
砂川:制作期間中に話があったので驚きはもちろんありましたけど、噛み砕いていくうちに納得していったという感じですね。渡辺もそうだし、僕たちもそうですけど、バンドに対して、音楽に対して、自分自身に対して、とりまく環境も含め、突き詰めて考えると解散する、ということが一番の前向きな方法なのかなと。caroline rocksというバンドがなくなっても、それぞれの人生は続いていくわけじゃないですか。僕個人の考えとしては、caroline rocksを辞めても制作活動をしていくのであれば、今までの自分を越えていかなければならないと思っているし、前向きに今後も取り組んでいきたいと思います。
── となると、制作期間としていた9ヶ月は、今作を作る上でも、そして今後を考える上でも非常に重要な期間であった、と。
砂川:それがなかったら今回のアルバムも作れてないわけですし、自分自身と向き合う時間になりました。
── その話をしてからのみなさんの関係性は?
砂川:音楽の方向性の違いとか、メンバーの不仲とかそういうのではないので変わらずですね。
── でも解散が決まってから作品を作るのと、これからも続けていく上での通過点として取り組むのとは全然違うと思うんですけど、その辺はどうだったんですか?
渡辺:それは解散とは別で考えていて、これが僕らの頂点だと感じるところがあったので、全力で作った作品です。今までかけてきた活動の集大成でそれを形にしたい。なんとか最高のものを盤に収めようという気持ちでした。
── みなさんが同じ方向を見ることが出来ていた。
砂川:そうですね。今までと比べても一番、メンバー全員でひとつの作品を作り上げようという気持ちで挑んだ作品だと思います。解散するということに対してネガティブな気持ちはなく、全力で作品を作り上げようというひとつの気持ちでいました。とても前向きでしたし、レコーディングは楽しくやれました。
── 出来上がった時の満足度はどれぐらい?
渡辺:エンジニアの人と徹夜でミックスダウンの作業をしていたんですけど、明け方エンジニアの人に「ミックス史上最高のものが出来た」って言ってもらいましたし、これはやってやったなっていう気持ちです。
── 後悔はまったくなく。
渡辺:それはないです。
── 出来たらフルアルバムにしたかったなぐらい?
渡辺:それはそうですね。曲はまだありますから(笑)。
プレイヤーとしても自信に繋がる作品
── その最後のリリースツアーを初日の地元・新所沢PEGGYDAYから4ヶ所回るんですよね。
和田:対バン形式なんですけど、解散するバンドとツアーするって他のバンドにメリットはないと思うんです。でも、一緒にやろうと言ってくれるバンドがほとんどで、それがすごく嬉しかったです。解散云々ではなく、ちゃんと音で勝負したいというアルバムが出来たので最後までガッツリやります。
砂川:PEGGYDAYで入れたのは大きいよね。僕たちの出会いの場所なんです。僕と渡辺が昔働いていたライブハウスでもあって、そこで4人が出会って一緒に組もうって。埼玉に住んでいた時はいつもここでライブをやっていて、一番縁のある場所で、今回3年以上ぶりにPEGGYDAYやるんですけど、それがレコ発というのもすごく意味のあることですね。
── 今回ツアーで回るところは縁のある場所が多いんですか?
渡辺:そうです。LIVE SQUARE 2nd LINEは大阪では一番お世話になったライブハウスですし、名古屋CLUB UPSETは初めて行った名古屋のライブハウス。そのときはa flood of circleとcinema staffとTHE NOVEMBERSと対バンで。渋谷屋根裏は1st.出す前はずっと出ていたところですし。
── そのツアーが終わると新宿LOFTで最後のワンマンがあります。
平沼:ぜひたくさんの人に来て欲しいですね。
砂川:最初で最後のフリーライブになります。
渡辺:今まで8年以上やってきた活動の集大成をそこに出すので立ち会ってもらいたいです。
── このワンマン以降、みなさんどうするんですか?
平沼:ドラム自体はやめることがないと思います。音楽活動は続けていきたいと思ってます。
和田:僕もベースは弾いていくと思います。今回のアルバムを作ってる段階で、前までの自分をかなり壊せたかなと思っていて、まだまだプレイヤーとして可能性があるかもしれないと気付いたんです。だから、これからもっと新しいことにチャレンジ出来るんじゃないかなという感じですね。
渡辺:僕は音楽にとらわれずに創作活動をしていこうと思っています。
砂川:僕はギターと音楽を続けていきます。僕にはそれしかないですから。今回のアルバム、そして何よりcaroline rocksで活動してきた事は、自分の今後に繋がると信じています。解散に対しショックを受ける人も当然いるかと思います。これは本当に身勝手な発言かも知れませんが、メンバーはそれぞれ前向きに活動を続けて行くので、今後どこかで見掛けたら応援して頂けたら嬉しいです。お客さんの支えがあって、ここまでやってこれたと思っています。感謝の分、納得してもらえるような活動を各々していきたいです。
── 今回のアルバムはプレイヤーとしても大きなきっかけのひとつとなったのかもしれませんね。
砂川:前に渡辺が言っていて良い言葉だなと思ったんですけど、たとえバンドが無くなっても作品は一生残るし、この作品を作ったことは非常に意味があったことだと思います。良い作品が出来たと胸を張って言えますので、ぜひとも聴いてもらいたいです。良い作品が出来たと胸を張って言えますので、ぜひとも聴いてもらいたいです。
── その自信は音から滲み出ていますよ。
渡辺:解散するからCDを出すんじゃなくて、良い作品が出来たから出すんであって。それと解散が重なっただけで。だから、まず音を聴いてほしいです。