リスナーと成長するアルバムでありたい
── 今回のタイトルが『WORLD ENTRANCE e.p.』ですけど、直訳すると“世界の入り口”となりますが。
山本:事務所に所属していた最後にリリースした作品が『EXIT』で“出口”なので、“ENTRANCE”(入り口)が良いかなって。
須江:“世界”という言葉を入れたいって俊が言っていて、和奏さんを交えていろいろとアイディアを出し合って、最終的にこのタイトルになりました。
── なんで“世界”を使いたかったんですか?
松本:世界をひっくり返すという意味とかはなくて、歌詞に“世界”という言葉が出てくるし、自分が持ってる世界の入り口を開けられたらという意味を込めて付けたんです。
── ここから始めましょうみたいな?
松本:バンドも新しいスタートを切ったし、だから“ENTRANCE”なんです。
── “世界”という言葉が入っている歌詞と言えば、『汚れた世界』では“人の心はとても酷いものですか? この世界は腐りきっていますか?”という強い言葉で始まりますが、5曲目の『メビウスの輪』も印象的な言葉が多いですよね。「命より重いのが札束です」とか、毒づいてますよね。
松本:負のものを全部出そうって思ったんです。良い部分を知るためには悪い部分も知っておかないと、何が良くて何が悪いかわからないから。普段思ってることを言葉にしていきました。
── 毒づいている裏に『汚れた世界』の歌詞ではないですけど、“いつかは素晴らしい世界へ”という明るいものが隠れてるんじゃないかなと思ったんですが、どう探してみても見あたりませんでした。
松本:その曲にはないです。アルバム全体で光と影を見てくれれば良いかなと思っています。
── また『メビウスの輪』やその前の『side by side』辺りは、サウンドが激しめでライブのような流れですよね。
須江:『side by side』はもともと「せーの」で入るはずだったんですけど、それをギターのリフからだけにしてライブの画が見えるように狙ってやってます。会場限定盤なので、ライブを見て買ってくれる人も多いと思うんです。家に帰って聴いてもらった時にライブを思い出せるものであってほしいし、またライブに遊びに来てほしいし、そうなってくれたら嬉しい。
── 最後の『サボテンの独り言』で静かに終わるという流れも良いですが、病室に置かれたサボテンの視点で歌詞が書かれていて、すごく不思議な曲ですよね。
松本:それが出来るきっかけは、「年間の自殺者が3万人を越えた」というニュースを見て、悲しいというよりはやるせない気持ちになったんです。それでサボテンを主人公にして歌詞を書いてみようかなと。聴いた人それぞれに想像してもらいたくて、答えを出さないという方法で歌詞を書いてみました。
── 物語みたいですよね。そのほうが得意なんですか?
松本:全然(笑)。現実的ではないのも書きたいなと思って、この曲でそれが書けたかなと思います。
── 先ほどちらっとお話に出ましたけど、今作は会場限定盤で手から手へと届けられる作品ですが、手売りでCDを届けるなんてひさしぶりですよね? きっと。
須江:一番最初に作ったミニアルバム以来です。もう7年ぐらい前になります。
── 全員で物販に出て売るんですか?
須江:そうです。お客さんと直接話すのはどういう感想を持ってるのか率直に聞けるし、コミニュケーションを取るのは楽しいですよね。今はTwitterとかがあるから感想は知れるんですけど、直接顔を見て聞けるのが一番嬉しい。ライブで演奏している曲もすでに何曲かあるんですけど、ライブとは曲の印象が違うだろうし、ネットで視聴も始めましたけど、CDを聴いてどう思ったのかを聞けるから楽しみです。
── 歌詞を読む前に思った感想と、歌詞を読んでからの曲の表情が全然違うし、ライブで聴くのとCDとはまた全然違うと思います。で、8月10日からは京都MUSEを皮切りにツアーが始まります。ネイキッドロフトではアコースティックワンマンも行なって頂きます。
須江:アコースティックは、これから練習しないといけないですね。
山本:『pocket LIFE』からジャンベを叩き始めたので、まだ全然出来ないんです(笑)。これから練習します。
── あとは松本さんと山本さんの地元である大分でもワンマンがあって、10月28日は渋谷クアトロでツアーファイナル。
山本:2回目のクアトロワンマンです。
須江:『pocket LIFE』のツアー初日が1回目でした。本当はファイナルの予定だったんだけど初日になっちゃって、初めてライブで弾く曲がクアトロワンマンのステージだったので、相当焦りました。そういう意味で、今回は安心のクアトロです(笑)。
── 札幌でのライブもあって。
須江:mocchiの地元です。イベントでは昨年行きましたけど、自分たちで行くのは3年ぶりぐらいです。
山本:俺、飛行機無理なんで心配です。俺だけ寝台列車で行こうかな。
── 10月にクアトロファイナルが迎えられるように無事帰ってきて下さい。
須江:デカ箱でやるのが、前回のクアトロ以来なんですが、出来ればソールドアウトにしたいですね。
── お客さんもいっぱい待ってると思います。では、最後に読者の皆さんやファンの方に向けてひとことずつお願いします。
山本:今回は僕らだけのバンドサウンドで作っているもので、今出来る精一杯のものは全部入っています。聴いてもらえばわかるので聴いて下さい。
mocchi:僕らがまるまる入った果汁100%の良いアルバムになりました。よろしくお願いします。
須江:ライブで曲は成長していくものだと思うので、その成長を一緒に見つつ、最後のツアーファイナルでひとつの完結を迎えられたらいいなと思っています。よろしくお願いします。
松本:環境が変わって最初に出す作品ということで、新しく結成じゃないですけど、そのぐらいの気持ちで作ったものなので、聴いてくれるみなさんと成長していけるバンドでありたいし、アルバムだと思います。ぜひ成長過程を見守りに来ていただければ嬉しいです。よろしくお願いします。
── 和奏さんからもひと言お願いします。
和奏:制作を一緒にやろうという時にライブが見える内容の曲が多かったので、どうやったらさらに磨きが増すのかなと思いながらお手伝いをさせてもらって、ライブでとても映えそうなものが出来たし、メンバー自体が次に自分が必要なものはなんだろうって一歩先に進めた作品だと思うので、自信を持ってツアーを回れるんじゃないかと思っています。今回の曲を含めてライブをやると幅が広がると思いますし、対バンにも負けないバンドになったかなと思います。ぜひ聴いてやって下さい。