またスタート出来る
── また『キミウタ』は、アレンジが他の4曲とは違ったり新しいアプローチをした曲でしたが…。
佐藤：この曲だけ俺がレコーディングしていないんです。言い方が悪いですけどドラマのタイアップを狙っていこうって作った曲でなので、別のプロデューサーさんに入ってもらって、ずっと温めていたんですけど、しばらくリリースが出来なかった曲。でも、みんな好きな曲だし、今回のアルバムに並べても遜色ないし、全部聴くとバランスも取れていたし。
大平：いろんなトライをした数ある曲の中でも好きな曲で、今作に入れたいって素直に思えた曲ですね。今入れなかったら、もしかしたらリリースないかも思っていたし（笑）。
── その『キミウタ』以外の4曲は、佐藤さんがエンジニアをやったんですよね？
佐藤：エンジニアは俺で、プロデュースは3人で。アマチュアの時にリリースした自主音源は俺がエンジニアをやってますが、本チャンのレコーディングをやるのは初めてだったので、出来るのかっていう不安はすごくありましたよ。でも、バンドをやっている友達に「バンドの音がわかっているのはメンバーなんだから、PAもエンジニアもアレンジも出来るのは売りじゃないですか」って言われて、「やるしかねえ！」って吹っ切れて。プレッシャーはありましたけど、2人はリラックスしていたので、これだけリラックスして出来るなら大丈夫って。
── メンバーがエンジニアだと、どう違うんですか？
佐藤：具体的には言えないですけど、レコーディングの流れややり方を知ってるし、2人ともすごく気を遣う人なんですが、俺に対しては気を使わなくて良い部分もあるし、言わなくてもわかる部分もいっぱいあるし、「そこ気にしなくて良いよ」って俺が言うのと、別の人が言うのでは全然違うと思うんです。言葉に出来ないつながりがちゃんとあるので、気が楽なんです。
大平：しんちゃん（佐藤）は大変だったと思いますけど、僕は今までのレコーディングの中で一番楽しかったです。シンプルに良いテイクを録ればいいって。全部がシンプルに立ち返っていたので、それだけでしたね。歌も心を込めて良いテイクを録るだけ。
── 中村さんはどうですか？
中村：しんちゃんがエンジニアなのでやりやすかった部分もあるし、昨年のツアーも大きいです。曲に対するきもちとか、音源をやっと出せるというきもちをどうやって音で表現するかという話もたくさんして、とにかく良い音源を作るということに全員が向けていたから、良いレコーディングの空気だったり音になったんだと思います。
── 中村さんは5曲目『きもちはつたわる』では、今レコーディングで録った音を聴いても何をやってるかわからない部分があるぐらい好き勝手に叩いたそうですが。
中村：これまでは、おおちゃん（大平）との兼ね合いもあって、やりすぎないことを考えてましたが、今回は恐れずに出来た。曲の方向性が定まってからは、ほとんど自由に叩いて良いという感じでした。
大平：バンドってコントロールしあう物じゃなくて、高め合うものだと改めて気付いたんです。お互いがお互いを鑑みてやってるようではミラクルは生まれない。俺はこれだけ行くぜ！ じゃあ俺はこれだけ上行くわっていう高め合いによってミラクルが起きるということが昨年体感出来たんです。この9年があるからこそ言えることだと思いますけど。怒髪天みたいに脂が乗ってどんどんキラキラしていくバンドを見ていると、楽しむことと探求心さえ持っていればバンドが悪くなることは絶対にないと思うんです。ghostnoteも中堅と言われがちですけど、ずっと新人のつもりだし、これからもっと良くなると思う。それは自分でもすごく楽しみで、どんどん行ったろかい！ って思ってます。
たくさんやって無駄なことはない
── これまでの話を聞いていると、昨年の怒髪天との対バンで多大な影響を受けたと感じましたが、具体的にどんなことを教えてもらいました？
大平：すごい覚えているのは、増子さんが「バンドを一生続けたいんだったら結婚出来ると思うなよ！」って言ってたのが…（笑）。
佐藤：そこ（笑）？
大平：「ghostnoteはまだまだこれからだし、すごい良いバンドなんだから、意地でも今を貫いて続けろ」とは言ってもらいました。今の怒髪天って、人生がステージに乗っている気がして、もっともっと僕らも自分自身と向き合って、心を込めて歌わなくちゃって思いました。
佐藤：あと、怒髪天のライブが終わって増子さんが楽屋に戻ってきた時に、「俺はやりきったから、お前ら好きにやれ」って。本気でやってくれたって姿を見たら、俺らはもっとやらなきゃってきもちになりましたよ。打ち上げも本気でしたけど（笑）。
── 何事にも全力で楽しむことも教わっちゃいましたね（笑）。
大平：怒髪天を見てても思うし、今ghostnoteをやってても思うのは、結成して今が一番楽しんです。それは心から言える。僕らの音楽を聴いてくれる人と、きもちを共有したいんです。今回はそこも含めてのアルバムだから、バンドの決意表明でもあるし、聴いてくれる人たちとこれからの人生を一緒に歩いていける関係を作っていけたら嬉しいです。
── 辛い時や悲しい時にも背中を押してくれるような作品ですからね。昔はCMの効果もあって、ghostnoteの曲を聴いてくれる人が一気に増えたと思うんです。その後、あまりライブをやらない時期があったり、バンドとしていろいろな時期を経て、今は芯で繋がっているというか、ghostnoteの曲と人生を一緒に歩んでいきたいという人たちが皆さんの音楽を聴いているような気がします。
大平：『初対面』（2006年2月）をリリースした時に、東京なんて何回かしかライブをやったことがなかったのに、ライブに来てくれるお客さんが突然増えたりとか、思っていた以上にCDが売れてたとか、その時って何もわからないままそうなっていて、いろんなことが考えられなかったはずなんです。だからたぶんみんな離れちゃったと思う。でも言ってもらったように、今ライブに来てくれる人は本当に僕らを好きでいてくれているし、そういう人たちに対してどれだけ心を込めて演奏出来るかというところで関係が成り立っていると思う。これからもっともっとそういう人を増やしていきたい。
佐藤：ライブをやるスタンスも、当時はghostnoteを知ってもらおうというきもちでやってたけど、今は好きになってもらおうと思ってやってる。スタンスも違ってきているのかもしれません。
大平：ghostnoteの名前を聞いたことがあるから、ある種知った気になっているとは思っていて、だから僕らのことを知った気になってる人を射抜かなければいけない瞬間もあると思うし、それが今回のアルバムなのかもしれない。
佐藤：今のライブかもしれないし。自信があるから。
大平：ちゃんと地に足付けたghostnoteを感じてもらいたいです。
── 今のghostnoteのライブは、伝えたいきもちがハンパなく出てますしね。
大平：それしか出来ないって自覚してますから。「これがダメならもっと行きます」というきもちで良いんだということに昨年気付けたし、これで良いんだって思えているし。ghostnoteというバンドは、時代に逆行しているのかもしれないけれど、かと言って時代に合わせるバンドはかっこ悪いと思う。だったら時代を貫いちゃえばいいじゃんって思っています。とにかくghostnoteらしく、今のスタンスでもっともっと楽しめるように。10年・20年、精一杯やりながら楽しまなくちゃって思います。だから、今回のアルバムはghostnoteにとって非常に重要な1枚です。
── 今回はひさびさのレコ発ツアーもありますし。
佐藤：レコ発ツアーとしては3年ぶりですね。
大平：4月19日に岡山があって、4月30日からO-Crestで3デイズの自主企画があって。
佐藤：ファイナルが12月ぐらい。
── ファイナルが12月？
佐藤：はい。しかも11月から12月にかけて全国12ヶ所でワンマンやるんです。各地のライブハウスのスタッフの方々が、やろうって言ってくれた場所ばかりで。
大平：現状で全国12ヶ所ワンマンをトライする価値はあると思ってますから。ghostnoteに関してはたくさんやって無駄なことはないなと思っています。毎回ライブで課題があって、クリアしたらまた次が課題もある。器用には出来ないですけど、ちょっとずつ前進しているはずなんですよね。
── 器用ではなさそうですもんね（笑）。
大平：よく言われます（笑）。でも、今こうやってghostnoteが健全なきもちでやれているのもまわりのスタッフから意見がもらえているからだし、俯瞰もしつつステージに立ったら心を込めて伝えたいと思うし、そのバランスが取れるようになってきたのも良い要因のひとつだと思っています。だから楽しいですね。でも、もっと良くなると思います。バカ売れするかはわからないですけど、次に繋がる1枚になったと思うし、これを続ければ更新し続けられると思うし。だからこそ、怒髪天の増子さんも継続は力なりと言ってましたが、諦めないことが一番大事だなと思います。
── 長く続けてることに勝てるものはないですから。
大平：でも、惰性で続けても意味がないですし、深さですよね。まだ行けるって思ってます。
