おもしろいと思っていることを通用させたい
── ところで、今回の11曲はユーモアがあるもの以外の選曲基準は何だったんですか?
「選んでいる言葉とか歌詞のテーマも、即効性とかダイナミクスが出やすいものということで選びました。Twitterをおもしろがっている感覚に近いんです。今回の曲が短いことにリンクするんですけど、140字以内で何かを言うということに対して、短いからこそ言える大事なこともあるし、くだらないこともあるじゃないですか。短い中でおもしろくなる歌っていうのが基準ではありましたね」
── だから11曲で36分という、堂島さんのフルアルバムにしてはすごく短い作品なんですね。
「一番短いです。不安でしょうがない、ライブですぐに終わっちゃうから(笑)」
── 曲順はどうでしたか?
「細かいところは最後までいろいろ試してましたね。短いのでひとつだけ気を配ったのが、あっという間に終わる曲がいっぱいあるので並べ方を間違えると何も残らないまま終わっちゃう。あとはテンポが早い曲が今回多いので、並べ方ひとつで疲れるとか」
── となると、本当に良いバランスの曲順ですね。
「なんとか出来ました」
── このアルバムを聴いて、ポップスってすごい良いって改めて思ったところもあったんです。
「僕は遅かれ早かれ、日本において音楽の概念というか種類みたいなものが変わってくると思っています。ポップミュージックというものに対して、差別化したがるのって日本ぐらいなんですよ。基本的に若い人たちに聴かれてるものはポップだしロックなんだけど、音楽評論家の人たちにもっとわかりやすく説明してもらいたいと思っているのは、人に作ってもらった曲はポップミュージックではなくポップスだと思うんです。僕はポップの土俵で見られるけれど、自分で作っている以上、カテゴリ的、精神的にはロック。自分で作っている以上自分の主張があるわけだから、そこの線引きをみんなが変えてくれると良いですよね。バンドだけがロックというのがよくわからないんですよ。僕も自分で作るからには、これだけすごいものを作れるんだぜと提示していかなければいけないと思ってます。それにポップミュージックとして見た時には相当な驚きがあるし、逆に言うと自分のことがロックだと思ってる人ほどこのアルバムを聴いてもらいたい。ロック幻想とか、ロックバンドのあり方にとらわれてるのはくだらないとすごく思います。新しい音楽はドキドキするし夢があるし、世の中に対してというよりは、自分にとってそういう音楽を作るということが僕は最高に気持ち良いことだし、大事だと思ってます」
── これだけ新しいことに挑戦し、発明をし続ける理由ってどんなことがあげられますか?
「一番は自分が楽しみたいんだと思います。手を変え品を変えというわけでもなくて、次こういうことやったらすごいおもろいなということをたきつける努力をしているだけですかね。インプットというほど大袈裟ではないですけど、人、物、映画、音楽とか何にしても、自分がおもしろがっている人間である以上、きっとおもしろいアイディアが思い浮かぶと思っています。あとは、当たり前だけど良いものを作れば今よりでっかいところでライブが出来ると思っているし、ひょっとしたら家が買えるかもしれないと思ってるし、女優が僕のこと好きだとか言うかもしれないと思ってるし、誰かの断髪式に呼ばれるかもしれない。上に行きたいし、自分がおもしろいと思っていることを通用させたいんです」
出会いが作った音楽
── ディレクターが旧知の仲である増澤(弘行)さんだったから、こういう作品になれたところもありそうですね。
「そうでしょうね。マス(増澤)がテイチクに入社したタイミングで“一緒にやりましょう”って声をかけてくれて、やるんだったらこういうことをやりたいって言ってくれたことが入り口で、僕もまだやってなかったことだし、さらに挑戦出来ることかもしれないなと思ったスタート地点だったので、出会いが作った音楽ではあるなと思います。僕のどこを評価するかっていうところがあるじゃないですか。例えば16ビートでアーバンなものをやってくれと言う人から話が来てれば、やるかやらないかは別としてそれはそれで考えたかもしれないし、でもマスが声をかけてくれた時に自分がやってみたかったこととリンクしたということでしょうね」
── となると、ストレスなく出来たという感じはありますか?
「そうですね。こうしろああしろと言われたストレスは全くなかったです。もちろん良いものを作らなければいけないというプレッシャーとかストレスはあったけれど。今作を作るにあたり、重いテーマとか人生を歌うんじゃなくて、例えば洗濯機とか、風呂に入ってる女性とか、とにかく焦点を絞って描くということを考えていたんです。マスが“何も考えなくても、おもしろい言葉が出てくるのが堂島孝平だから”って言ってて、“何の自信があってそれを言うんだよ”って、心の中でいつも思ってましたけど(笑)」
── 増澤さんとしては、自信があったんでしょうね。
「今回のアルバムを作るにあたり、全曲出揃ってないのにマスはリリース日を決めていて、“本当に3月21日で発売日決めちゃうの?”って言ったら、“堂島孝平は出来るんです!”って(笑)。ありがたいことですけどね。途中ぐらいから気付きましたよ、こいつ丸投げだなって(笑)」
── 今の話を聞きながら、私もなんとなくそんな気はしていました(笑)。でも、このアルバムがすごく良かったので、もう次の作品が楽しみになってしまっています。
「このまま作り続けようかと思っています。スピードが落ちたら全部鈍るというようなテンポ感だし、ダイナミクスがとにかく求められるので、気持ちが熱いうちに作れるものは作っておきたいなって。ただ、プロモーションも含めて12月から地獄のスケジュールになっているので、ちょっと休みたい。どこまで行っても仕事があるから、最近はマネージャーに聞かないとスケジュールを教えてもらえないんですよ」
── お忙しい中申し訳ないんですが、プラスワンでのトークイベントもそろそろ開催されるんですか?
「この間プラスワンの天野さんに会って、“そろそろやりたいね”って話をしていて、4月ぐらいになるかなと思ってます」
── また、2月22日の堂島さんの誕生日にはタワーレコード限定ワンコインシングル『あのコ猫かいな/どぶそうじ』もリリースされましたが。
「『あの子猫かいな』って曲を作っていたら、マスが“猫の日の2/22にシングルで出そう”って。べつに自分が生まれた誕生日が猫の日だからって、猫が好きなわけじゃないからねって言ったんです。猫みたいな女性は好きですけど(笑)」
── なるほど(笑)。その誕生日で36歳を迎えられましたが、そういう年齢の人がおもしろがって何かをやってるのが素敵ですよね。筋も通ってるし、それを今作では気付かされました。
「このぐらいの年齢でやれるようになってきたということもあると思うんです。20代の頃は、なるべくシュッとした自分を見せる方法を選んできたけど、そういうことをやってきたからこそ音楽でも遊べるようになって来たというか。僕もずっとこういう音楽やりたかったけど、ついに来たなという感じです」
── だから説得力があるんですよ。
「そうかもしれませんね。新しい音楽を探している人は、ちょっと驚くと思うので聴いてもらいたいです」


















