cali≠gariがニュウアルヴァム『11』を2012年1月11日にリリースする。cali≠gariとは、1993年に結成され、幾度ものメンバーチェンジを繰り返し、2000年6月に現メンバーとなる。ヴィジュアル系にカテゴライズされるが、オルタナ、プログレ、アンビエント、ポスト、エモ、エレクトロニカ、フォーク、ニューウェーブなどなど、様々な表情を持つ。今作も、1曲目の『吐イテ棄テロ』から最後の『東京、40時29分59秒』まで全11曲、80's・90's感たっぷりの彩り豊かな楽曲が並んでいた。
本誌でのインタビューは初登場となるが、新宿ロフトとしては西新宿にあった当時から出演している。最近では、ロフトでのライヴというとこちらの想像を越える企画を提示し、多くの人の度肝を抜いてきたバンドでもある。今回は、ロフトでの企画の話、『11』の話、そして読者の皆さんから事前に募集したcali≠gariへの質問を交えながら、桜井 青(G.&cho.)に訊いた。(取材:大塚智昭/新宿ロフト店長 構成:やまだともこ)
昔の勘を取り戻した
── 2010年3月に『≠(ジュウイチジャナイ)』を発表し、ようやく『11』がリリースされますが、出来上がってどんな思いですか?
「月並みな答え方だと、非常に過酷なスケジュールの中でよくこれだけのものが出来上がったなと感心しています。メンバー間でリハーサルをするということが一度もない状況でしたから。だいたい今まで、作曲リハーサルは1〜2度──それでも少ないですけど──やってきましたが、今回は初めての0回」
── 個人個人練習して当日を迎える、と。
「(練習を)している人もいるんじゃないでしょうか」
── している人も?
「僕は全くやってない。僕はその日に聴いてドンってレコーディングするタイプなので」
── その時の雰囲気とか空気を大事にしたいということですか?
「よく言うとジャズのインプロみたいな感じ、悪く言うとめんどくさがり(笑)。でも、それには理由があって、テンションを保っておきたいんです。自分が弾くものがどんなものかわからないって楽しいんですよ。現状のスキルで出来ることをやりたい。練習しなくてもスッと出来るものを作りたいんです」
── 背伸びをしないということですか?
「背伸びをしないとギターって絶対にうまくならないんですけど、うまくなるためにギターを弾いてるわけではないですから」
── となると、何のために弾いているんですか?
「自分の音楽をやるために弾いているんです。僕はギタリストとしての成長は世界一遅いほうだと思うんですけど、それでも1年にちょっとずつはスキルアップしているんですよ。そのちょっとずつアップしたスキルで弾いていく。でも、今20歳ぐらいの子のアルバムとか聴くとすごい上手いですよね。この子たちは僕の年まで行ったら何になるんだろうって思いますけど」
── 青さんは、“弾けない”ことで有名なギタリストではあるんですけど、みんなが言ってるよりは弾けるんですよね?
「まるっきり弾けないかと言ったらそんなことはなく、レコーディングであればちゃんとやりますよ。でも、ライヴはギターを弾くよりも大切なことがあるんです(笑)」
── ところで、今回の曲作りはいつから始まったんですか?
「8月に出したシングル(『#』)の曲を集めようと言ったのが5月に入ったぐらい。そこから同時進行でアルバムの曲を作り始めて、8月に5曲ぐらい揃ったんです。でもアルバムの本当のリリースは11/11で、あと1ヶ月で6曲作るのは不可能ということで発売延期。だけど契約上何か出さなきゃいけないので、シングルをもう1枚(『#_2』)11月に出したんです。この時は、2枚買いさせるために無理矢理作った3曲目を入れたくなかったので、『#_2 今、CDは何故売れないのか? 編』『#_2 今、再結成ブームを考える編』として、新宿ロフトの店長に出演してもらい、ラジオドラマ(討論会)を収録したんです。ただこの時点でアルバムに入れる11曲のうち5曲をシングルで出してしまったわけです。買う側としては、6曲のために高いお金を出すというのは財布の紐も固くなると思うんですよね。結果、石井さんはシングルを全曲歌い直すと言い、僕も曲によってはトラックとギターを録り直したり、ミックスを変えたりと、作り込んでいます」
── 全曲録り直しですか。
「前作の『10』は、今聴いても良いなと思うんだけど、どうしても曲によっては作った本人でも気分で飛ばしちゃう。だから、今回は1曲目を聴いたら最後まで聴きたくなるアルバムを意識しました。ジグソーパズルのピースをひとつひとつ埋めていくように、現時点で出来ている曲を並べてこういう曲が足りないということを考えて、いつもより念入りに。今までもそういった作り方をしていたはずなんですけど、石井さんが入ったことでバンドがスキルアップした分、居心地の良さによりかかりすぎてしまって、自分の中で怠けさせていた部分があったな、と。cali≠gariってこういう感じでアルバム作ってたなと勘を取り戻した気分です。昔と違うのは、週に3回オールナイトでスタジオ入る事とかはもう無いってことくらいかな? 今回、1回も入らず作れたから、いろんなことが変わって来てますよね。もっとも、聴く人によっては、(前作から)全然変わらないと思うかもしれないし、そこは作り手側の意識的な問題なんですけどね」
── どんなピースが足りないと感じていたんですか?
「耳馴染みの良いものが揃っていたので、cali≠gariらしいどろっとしたものとか。最後に残った曲というのは、『JAP ザ リパー』と『その斜陽、あるいはエロチカ』、『最後の宿題』」
── 全部曲調が違いますね。
「2曲目・まん中・最後のピースが決まっていなかったんです。2曲目の意味合いは『10』でいう『マッキーナ』の位置。レコード屋で試聴する時って1曲目〜3曲目ぐらいを聴きますよね? だから、1曲目でバンドの現在の特性や新しさを出して、2曲目は勢いが良い感じのものを。3曲目は耳馴染みが良いシングルだったりを持ってくるというのがcali≠gariの基本パターン。それを考えた時に、2曲目に置く勢いのあるライヴのキラーチューンとなるものと、cali≠gariって退廃的というかデカダンな曲が毎回1曲入ってるんですけど、そういう曲が最近影を薄めてしまっていて、昔で言うなら『禁色』とか『誘蛾灯』のような薄暗い体温を感じる曲。あとはお約束の『最後の宿題』みたいなキュンと来る曲を作ろうと思ったんです」