Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー佐々木亮介(a flood of circle)×杉山オサム(スタジオ・インパクト)対談

愛情スタジオで生まれる音の魅力

2011.10.13

 先月21日に2枚同時リリースされたa flood of circleのシングル『I LOVE YOU』、『Blood Red Shoes』。前回の記事で(http://rooftop1976.com/interview/003616.php)ボーカル&ギター・佐々木亮介へインタビューを敢行しているが、今回はデビュー時からa flood of circleの作品を手掛けているエンジニア・杉山オサム氏(スタジオ・インパクト)を迎えて対談を行なった。信頼関係で繋がったアーティストとエンジニアという関係による、違った角度から捉えた興味深い内容となった。(Rooftop編集部)

完全にネクスト・ステージへ、ってところだよね。(杉山オサム)

── 今回オサムさんが手掛けた、a flood of circleの最新シングル『Blood Red Shoes』ともう1枚のシングル『I LOVE YOU』収録のカップリング曲『ミッドナイト・サンシャイン』の聴き所を教えて下さい。
杉山オサム:今作はレコーディング前の段階からお互いに「攻めるぞ」っていうモードだったよね。俺も今までフラッドで試していなかった事をやってみたり。
佐々木:そうですね。サウンド的にもいっぱい実験しようと思っていたから。今までのものから更に進化した音にしようというのがあったので、そこは面白いと思いますね。
オサム:今までも色々やってきたけど、俺としては新たな気持ちで、こっから仕切り直しというような気持ちもありましたね。
佐々木亮介:メンバーが替わってからレコーディングする最初のリード曲だったから、バンドにとってはデリケートな時期でもあって。ただ、インパクトはやり慣れている場所だしオサムさんはインディーズのファーストからずっと録ってくれていて気心が知れまくっているので、安心感はすごくありましたけど。オサムさん の言うように新たな気持ちで、次なる所へ行きたかったですね。今までもずっとロックとかブルースをやってきたと思っているんですけど、更に生々しさとか、今の時代の新しいロックとしてカッコイイのは何なのかなってすごく考えて。
オサム:完全にネクスト・ステージへ、ってところだよね。
佐々木:はい。オサムさんは身を委ねられる存在なので、そこら辺はしっかりと受け止めてもらえたなと思います。
── そういった“攻める”といったテーマが、音にもしっかりと表れていていると思います。
佐々木:ありがとうございます。過去のどれよりも自信があります。『Blood Red Shoes』の尖がり具合とか、ロックな空気感はなかなか他の人とでは出せないんじゃないかな。オサムさんとはもう5年間ぐらいになりますから、そういう関係性だからこそというの部分もあると思います。

お互いに音を出しながら自然と理解出来ているから、なんかセッションのような関係だなって思いますね。(佐々木亮介)

taidan_osamu.jpg── かなり長い付き合いではありますけど、お互いに最初の頃の印象は覚えてますか?
オサム:覚えてる?
佐々木:もちろんです。出会った頃はド素人の大学生でしたね。オサムさんの第一印象は、本当にロックが好きな人だなって。そういうエンジニアさんに出会えて良かったって思いましたね。
オサム:たしか、亮くんは19歳とかだったよね。ティーンエイジャーなのにストーンズとかディランの話をするから、結構衝撃だった。そういう世代が回り回って出て来たんだなっていう。それが凄く嬉しかったし。ヴィンテージな音楽もちゃんと聴くんだなって思って。でも、それが今も亮くん達の中にちゃんと根付いていて、確実にフラッドのサウンドなり楽曲なりの幹になっているなと。
佐々木:それこそ、高3ぐらいの時からサンボマスターとかを聴いていて、それをやっていた人と出来る事が嬉しかったですね。それを取っ払っても、いちロック好きの人としての印象がかなり強かったですけど(笑)。
── 音楽的な部分でも通じ合えると、レコーディング中などで特定のアーティストや作品を例に挙げて作業もし易いですよね。
オサム:もちろん、ディスカッションの中で例として挙げる事はあるけど、結局のところはオリジナリティが大事だからね。録り始めちゃうと、ナベちゃんのドラム、姉さんのベース、亮くんのギターの音がガン! と鳴った瞬間、全く違うイメージにグンと持っていかれちゃいますから。
佐々木:僕も好きなアーティストとかにはアンテナは張っていてるし、オサムさんも参考にCDを聴かせてくれたりするし。それはそれで大事にはしているんですけど、フラッドとしてのインスピレーションを大事にしたいので。
オサム:結局のところ、聴いてきた音楽って血となり肉となっているから。それは演奏者もエンジニアも一緒で。その骨身に染みているもの以外は出しづらいんですよね。
佐々木:そうですね。持ち物じゃないから。
オサム:そういう血となり肉となって出来た大きな幹があるなら、振れ幅はものすごい振れた方をさせても良いと思っていて。この曲の大事なところはどこだろう、ってと事をいつも考えるようにしている。
佐々木:それって、すごくバンドが試されるところでもあって。逆に言うと、核が無いバンドだとブレてしまうから振り切れようがなくて。僕たちで言えば、ロックンロール・バンド、ブルースやっているってのをしっかり持っていないと、引き出そうとしてくれている人に応えることは出来ないし、お客さんも見ててもつまらないと思うから。ま、レコーディングに限らず、ライブでも何でも「バンドはこうです」ってのが明確じゃないと今はキツイ時代だから。そこを見せた上で、フラッドとしてどこまで振り切れるのかって事ですよね。
オサム:フラッドで言えば、ロックンロールという大きな幹があれば、何やってもOKだと思う。極端に言えば、ずっとノイズに歌があっても良いし(笑)。これがロックンロールだ、っていうものをちゃんと持って表現さえ出来ていればね。
佐々木:サンボマスターもストリングスとかホーンとかが入ってる曲がありますけど、それでもロックンロールだって分かるのは、ちゃんと幹があるからだと思うんですよ。バンド側としてはそこに自信があれば、エンジニアの方に新しい部分をどんどん引き出して下さいって、お互いにやりあえると思うんですよね。そういう所で渡り合えたら最高だなって。
── そういう、幹を持ったバンドとの作業では常に新しい事へ挑戦はしたいと考えていますか?
オサム:うん、そこは確実に。インパクトは基本的にこれまでに何枚か一緒にやっている人が多いので、新しい話が来る度に次のステージの事を考えますね。俺からも開いて行こうって感じ。
佐々木:でも、最初の頃は初めてで何も分からなかったから、すごく手が加えられるのも嫌だし、逆に冷静に無頓着にやられるのも嫌だしって思っていて。でも、その辺の理解力はオサムさんにはすごくありますしたね。直ぐにバンドのスタンスを理解してくれて、それを音にしようって、そこがあった上で開いてくれるので信頼しています。
オサム:俺ね、気付いたら入っていっちゃうんだよね。
佐々木:僕は良いと思いますけどね。
オサム:入ってくるな、って人もいるじゃない。
佐々木:いや、その入り方が嫌じゃないんですよね。それはロックの味方の人だって分かってるし、オサムさんは自分でも音を出している人なので。エンジニアなんだけどギターとして入ってくるぐらいの勢い(笑)。お互いに音を出しながら自然と理解出来ているから、なんかセッションのような関係だなって思いますね。
オサム:そこがフィットした人たちとは長くお付き合い出来てますね。
佐々木:あと、インパクトってブース同士が見えない作りになっていて特徴的なんですけど、それでもセッション感がしっかりあるっていう。すごく集中も出来ますし。
オサム:逆に顔が見えない方が良い事もあるんあだよね。顔が見えないと、向こうで亮くんは何を考えているんだろうとか想像し合えるというか。特に歌録りとかって心の動きとかメンタルが1番重要だから。伝わってくる空気で、今もう一回やりたいと思っているだろうなとか。
佐々木:探り合いですよね。それが面白かったりするし。
── そこは信頼関係が無いと生まれない部分でもありますよね。
佐々木:それは絶対にありますね。今のはもう1テイクって思った時とか、逆に今のは良かったって時も直ぐに感じ取ってくれるし。ボーカルは特に今歌ったのが良かったのかどうか分からない事が多くて。その辺はオサムさんが「OKじゃない?」って言ってくれれば安心出来るぐらいの信頼関係はありますね。
オサム:俺が好きなテイクへのOKの判断は早い。「これ好き!」みたいな(笑)。それがテイク0ぐらいでも。
佐々木:この間録った新曲もテイク1じゃなくて、とりあえず音出しぐらいの感覚で歌ったものが良いんじゃないって言われて、全然OKだったみたいな。
オサム:テイク1とか0ですごいのが飛び出した時は本当に幸せ(笑)。そういう時って、だいたい録っている事を忘れて、リスナー的な感覚で聴いちゃってるんだよね。自分が録っている作業をも忘れてしまうぐらいなんだから、最高のテイクなんじゃないかなって。いかにリラックスした感じで出来るかどうかも大事だと思っていて。

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4thオリジナルアルバム
『LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL』

初回盤:VIZL-445 (CD+DVD) / 3,150 (tax in)
通常盤:VICL-63807 / 2,800 (tax in)
2011.11.23 IN STORES
9月21日(水)発売シングル『I LOVE YOU』とのW購入者封入特典
【抽選で6周年突入メモリアルライブにご招待】
2012年2月12日(日) 会場:下北沢SHELTER

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<CD収録内容>
01. I LOVE YOU
02. Blood Red Shoes
03. Whisky Bon-Bon
04. Sweet Home Battle Field
05. 賭け (Bet! Bet! Bet!)
06. Hide & Seek Blues
07. YU-REI Song
08. Boy
09. The Beautiful Monkeys
10. King Cobra Twist 〜-session #6-
11. 感光

All tracks written by 佐々木亮介
All tracks produced by a flood of circle
except “I LOVE YOU” produced by 弥吉淳二 

<DVD収録内容>
01. I LOVE YOU (Video Clip)
02. Blood Red Shoes (Video Clip)
03. Miss X DAY (Live Video Clip)
04. Sweet Home Battle Field (Live Video Clip)

TSUTAYAレンタル限定ミニアルバム『RENTAL LOVE WAS LIKE A ROCK'N'ROLL』

2011.11.2 SPOUT OUT!

<CD収録内容>
01. Blood Red Shoes
02. I LOVE YOU
03. Sweet Home Battle Field
04. Hide & Seek Blues
05. Miss X DAY
06. 賭け(Bet! Bet! Bet!)

LIVE INFOライブ情報

Tour “Blood Red Shoes -ビールに幻惑されて編-”
全国の酒場(Pub)でのライブツアー。希少な少人数制ライブ。
11月1日(火) 新宿LOFT / BAR SPACE
11月4日(金) 広島Cafe JIVE
11月5日(土) 福岡DREAM BOAT
11月10日(木) 静岡UHU
11月11日(金) 仙台HEAVEN
11月16日(水) 大阪HARD RAIN
11月22日(火) 南青山RED SHOES

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