しりあがり寿事務所「有限会社さるやまハゲの助」が主催する社内ロックフェス「さるハゲロックフェスティバル」（通称：さるフェス）が今年も新宿ロフトに帰ってくる！ 一般公開されて３回目、いまや新春の風物詩にもなりつつある「さるフェス」。これまでも破壊と再生を繰り返しながら進化を続け、世界にも類を見ないロックフェスとなっているが、今回は劇団「少年王者舘」の劇作家・天野天街氏を演出家に迎え、あらゆる表現形態が混在・融合した摩訶不思議な世界が創出されるはずだ。11時間以上ぶっ続けで繰り広げられる一夜限りの饗宴を是非あなたも体験して欲しい。これを見逃したらきっと後悔する!? （TEXT：加藤梅造）
世界一楽しい飲み会をつくりましょう！
──今年のさるフェスは一般公開してから3回目ですが、まずは今回の見所をお聞かせ下さい。
しりあがり寿（以下、寿） 見所がどこなのか未だによく分からないんだけど、普通のロックフェスじゃつまらないよね。
河井克夫（以下、河井） というか、しりあがりさんロックフェス行った事ないでしょ？
寿 いや、行った事あるよ。２回も。
河井 それがつまらなかった？
寿 おもしろかったんだけど、もっとおもしろくできるなーと。まあそんな感じで進歩を続けている「さるフェス」ですが、今回はなんと！、劇作家・天野天街さんの演出を入れたというのが大きな試みだよね。これ実は１年以上前から考えていた事なんです。
──そんなにはやくから!?
河井 「すごいアイデアを考えたんだよ！」って興奮してましたよね。それで聞いたら「さるフェスに演出家をいれる」と。僕ら制作サイドのスタッフは誰も意味が分からなかった（笑）。だって演劇じゃないし、演出しようがないんじゃないかと。
寿 混沌というかいろんなものが脈略なくあるというのが「現代」じゃないですか（笑）。ただそれだけだと散漫になるんで、その良さを失わないで魅せるにはやっぱり演出家の力が必要だなと。
河井 まあ早く言えば無茶振りですよ（笑）。
──天野さんの反応はどうでした？
河井 困ってました。稽古もできないし「僕は一体何をどうすればいいんですか？」って。
──ぶっつけ本番ですからねえ。
寿 そうなんですよ。だから前回のさるフェスを観てもらおうと思って早めに依頼に行ったんです。でも結局ご多忙で天野さんは観に来れなかった。
──まだ天野さんは「さるフェス」が何なのかよく分かってないという…。
寿 チラシに大きく【演出：天野天街】って書かれてしまい困ったなって言ってました。まあ困るよね〜。
河井 天野さんは世界観を緻密に作り上げるタイプの演出家だと思いますが、そういう人がさるフェスのような乱暴なものを演出するのが新しいのではないかと（笑）
──フライヤーのデザインからして世界観がぐっと変わりましたよね。
河井 前回までのさるフェスはしりあがりさんのロックフェスに対するパロディーみたいな形になっていたと思うんです。ロックフェスというものを茶化している感じ。それからは進んだ形になっていると思うんですよ。
寿 今までも茶化していた訳じゃないけど、今回は攻めに出たね（笑）。でも天野さんには演出をどうのこうのとは言ってなくて、世界一楽しい飲み会をつくりましょうと言ってあります。
ヴィン☆セント秋山（以下、秋山） しりあがりさんは新年会のつもりですから。
寿 忘年会とか新年会とか楽しいじゃない。というか俺、お酒が入らなきゃダメなんですよ、気が小さいから。普通のお芝居とか見に行ってもお酒飲めないし。
河井 ちなみに15年前、ボクデスさんと秋山さんと僕は、しりあがりさんがお芝居をやりたいと言って「NAS」という劇団をつくった時に集められたという過去があります。
ボクデス その時も「打ち上げをやるための劇団ですから」って言ってた（笑）。
秋山 全然変わってないね。
寿 軽い気持ちで迷惑かけたね（笑）。軽い気持ちも程々にしないとな。
──さるフェスの終了予定が午前3:00なのはその後の打上げの時間を取っているからなんですよね。お客さんも帰れないから打上げに参加するしかない。
寿 あの午前4時ぐらいから飲み出す瞬間のためにすべてがあるよね。
見る人にも出る人にも喜んでもらうのが一番いい
河井 要するに出演者も制作サイドも観ているお客さんもみんなちょっとずつ大変なイベントなんです。
寿 １人だけが大変だとバランスが崩れちゃうからね。
秋山 大人になってからこの学祭ノリはなかなかないですよ。文句言いながらもやっぱり楽しいですから。大人になるにつれてこういう場ってどんどんなくなっていくじゃないですか。
河井 結果はさておき、いろんな人を呼んでジャンルの垣根を取ったということには少し自信があります。
──音楽のジャンルだけでもパンク、メタル、弾き語り、テクノといろいろありますもんね。
寿 全ジャンルをそれぞれが代表してます（笑）。
──去年はラテンで今回はハワイアンも。
秋山 ハワイアン張り切ってるみたいですよ、フラダンスを。
寿 張り切ったハワイアンて（笑）。あと今回はプロレスがおもしろいんじゃないかな。
河井 これも無茶振りですよ。それをお願いしに行く係が僕なので、もう胃が痛くて（笑）。
ボクデス 今回のプロレスもそうですけど、誘ってみたら意外とやってくれるんですね（笑）。逆にアイデア出してもらったりして。
寿 そう意外と（笑）。でも出てもらう以上せめて喜んでもらわないとね。それってすごく大切で、見る人にも出る人にも喜んでもらうのが一番いい。俺のおいしいお酒はみんなの笑顔が最高のつまみなのよ（笑）。
ボクデス あ、いいこと言った。
寿 だって俺、気が弱いんだからさ。後で恨まれたりでもしたら嫌だし。
──「パンチの効いたブルース」は毎年出るのを楽しみにしているそうです。
寿 ありがたい話だなぁ。
──毎年恒例のバンドも多い中、今回初めて出るグループも興味深いですね。個人的にはヒカミンツフルーツ. が気になります。
河井 ヒカミンツフルーツ. はヒカシュー（三田フリーマン、坂出雅海）、有頂天（Hackai）、ジューシーフルーツ（高木利夫）、遊星ミンツ（珠水）からなる混合バンドで、それぞれのバンドの曲をやるらしいですよ。ニューウェーブ世代は大喜びじゃないですか。
寿 今年は80年代色がちょっと強いよね。香山リカさんのユニット「80年代時代」とか。
──もしかして香山リカさんがロフトに出るのってTACO以来じゃないですか？
寿 今回は突然段ボールも出ます。実は去年お客さんで来てくれてたみたいなんですけど、酔っぱらっててちゃんとご挨拶できてない（笑）
河井 あがた森魚さんも出ます。そういう意味では、すごくいい食材を集めて台無しにしている感じがあるよね。最高級の食材でヤミ鍋みたいな（笑）。食といえば、大人計画の人気女優・猫背椿さんがおにぎり屋さんで参戦します。
──毎年フードコーナーも見逃せないですね。この「おらが畑の武蔵野カレー」とは？
秋山 それは僕です（笑）。うちの畑で採れた野菜で。
河井 さるはげカレー大会で優勝したんですよね。
秋山 そう。よく知らなかったんだけど、優勝するとさるハゲロックフェスに出店できるという仕組みで（笑）。
寿 あれおいしかったよ〜。
秋山 でも前日から大量の仕込みをしなきゃいけないわ、当日はずっとカレー売らないといけないわで、これって優勝じゃなくて罰ゲームじゃないのか？（笑）。
寿 儲かるわけでもないしね。
秋山 でもやるからには本気でやりますよー!!
