このアルバムは球体のように弾んでいく
── 今回の『Ground Disco』は、12曲入って1時間ちょっとの作品ですが、レコードのようにSide AとSide Bに分かれていたり、すごく作り込まれたアルバムですよね。
ナカノ:それは、プロデューサーのアイディアでしたけど、B面の最初のジャーンって音が出た瞬間は高揚感がありますよね。
── Side Aで一度朝から夜が来て、Side Bの『明け星』からまた朝を迎えるという感じも良い流れですよね。
ナカノ:このバンドを通してお客さんとやってみたいことは、みんないろんな生活をしていて、疲れていたり、テンション高かったりいろいろあると思いますけど、一度ブワーって全部感情を音楽の中で出して、何回も朝と夜を迎え、出ていく頃にはちょっと違う自分になっていたり、リセットできているといいなという気持ちが最近特にあるんです。だから、このアルバムもSide AとSide Bで2日を過ごしてるという感じ。すごく嫌な事があっても、2日も経つと凹んだけどまあいいかなみたいな感じになるじゃないですか。その感じを表現したかったし、そういう効果があるCDに仕上がっているなと思います。
── ナカノさんの高音がかった独特の声のせいか、すごくリラックス効果もあるような気がします。
ナカノ:好きな人にとってはすごく好きだと思います。それに、うちはベースも相当気持ち良いメロディーを奏でるので、全員が偉大な武器を持っているんです。リズム感にしてもキーボードの音色にしても。中毒性とよく表現されますけど、中毒になるだけじゃなくて、この先に繋がる作品になったと思っています。
── でもいろんな思いが溢れた80曲近くの中から12曲を選ぶというのも大変な作業ですよね。
ナカノ:最初は大変でした。
恒松:1枚のアルバムにしようと考えたら気が狂いそうになりましたよ。今までの5年間を収めた『Lost & Found 〜2006 − 2010〜』と今のモード『Ground Disco』でキレイに2枚に分かれたので、2枚出そうと決まってからはすごく早かったですが。
── 5年の間には考えていることも変わっていくでしょうから、同じ作品に入れるというのも考えてしまうところがありますからね。
ナカノ:ただ、変わっていく事を恐れなくなって、変わっていくからこそ変わらないものが見えてくる。結局自分は変わらないものがあることを表現するために変わっていけるんですよ。信じたいわけじゃないですか。変わらないものを探していろんなことやって、その中に一本筋が通っていて、これだったんだとかこんな道を歩いてきたんだとかそういうことを感じられればいいなということなんです。
── 変わらないものの答えは出ましたか?
ナカノ:常に昔からあったと思いますけど、明確にはなってきました。この4人で何かをすると、起き得ない何かが起きる。心の奥の奥まで届くような独特な風合いが必ずあるということだったりとか。
恒松:仮に8ビートでも4つ打ちでも根底にあるものは変わらないんだということもわかりましたし。
ナカノ:5年間動けない時間があったにも関わらずレーベルは待ってくれていたし、そうやって奇跡が中で起きてるから、あとは伝えるだけだって。こんな時代だからとか言うけど、僕たちの周りではこんなすごいことが起きてるんだから信じさせるよって。
── レーベルも本当によく待ってくれましたよね。
ナカノ:迷走していたけど、音楽と一緒で純粋に迷走していたから。でも肯定するわけではなくて、反省があるから今頑張ってますけど、5年間を取り返したいし、もらったものは返したい。だから、ここからは作品を出し続けたいし、期待を上回り続けたいし、常にやるぞっていうふうになってます。例えば歌を歌いたいと言って、その歌で誰かを守ったり幸せにしたいと思っていますし、使命を持ってやりたいんです。
伊藤:アルバムができた時点で、一音一音を出しながら、いろんな人の顔が浮かんでくるんです。だからこそ、これで絶対に上がって行ってやる! という感じがある。
── 自分だけじゃない感じ?
伊藤:巻き込んでいるし、巻き込まれてくれている人がどんどん増えて行っているし。そういう人たちのためにもやってる。その意識は強くなっていく一方です。デビュー当時はそのことすらもあまりよくわかっていなくて、みんなの期待が肩に乗っているのに逃げてたみたいな感じでしたけど、今はちゃんと地に足も付いているし、たくさんの人に支えられていると意識してやっている気がします。これでうちらがダメだったら大変なことになるぞという勢いです。
恒松:レーベルの人とかいろんな人が期待してくれていて、どうやったら返せるかという方法がわかったのはあるかもしれませんね。
── となると、自分を鍛えられたという意味でも、5年という時間は必要だったのではないですか?
ナカノ:まぁ、長すぎだけどね(笑)。
恒松:肯定はできない時間ですけど、必要な5年だったと思うのも事実です。
ナカノ:俺はまだなんとも言えません。まずはこの作品をなんとかたくさんの人に届けて行きたいです。自信のある作品に仕上がりましたし、何回でも聴けるものになったと思います。
恒松:いろんな人に聴いて欲しいね。
ナカノ:このアルバムは球体だから弾んでいくと思いますよ。
── そして、年明けには怒濤のリリースツアーも決まってますし。
ナカノ:俺の目標は歌いまくって喉を強靱にすることです。こんなに長いツアーはやったことがないので、不安ですができる気がします。楽しみですよ。
伊藤:『Lost & Found』のリリースツアーをやり終えた時に、全然満足感がなかったんですよ。まだ足らないと思っていて、ファイナル終わっても全く満たされてなくて。体力的な疲労はあるんだけど、何か満たされないというか、まだもっとやりたいのにっていうのを思ったぐらい貪欲になっているんだと思います。
ナカノ:ライブ見て欲しいね。ファイナルは新宿MARZなんですけど、まずはここをいっぱいにして恩返したい。そのためのツアーでもありますから。
── ようやくPBLがアクセルを全開にして走り出した感じがしますね。
ナカノ:はい。ここからですよ。見ていて下さい。