芸能界も今も同じ
──今の時点で“俳優・黒田勇樹”を振り返ってみると、どんな風に見えますか?
すごく頑張っていたと思うし、とっても周りに助けられていたし……。でも、なんだろう……それがあるから今がある訳で、まだ答えが出せないですね。昔の自分を評価もできないし、今になって思えばもっと頑張れたこともあったと思うけど、でも当時の自分ができる範囲では精一杯頑張っていたと思うし。
──出演作を見返したりしますか?
ないですね。でも、こないだニコニコ動画に自分が出演してるミュージカルがアップされていて、それは爆笑しながら見ました。だって、できもしないのに歌ったり踊ったりしていて、しっかり歌が下手なんですよ(笑)。まあ、あの当時の自分を否定するつもりもないし、もちろんベストを尽くしてなかったこともあるけど、それは一個ずつ反省しなくちゃいけないし、次に活かせれば良いかなって。ほんと「ありがとう」ですよね。その時の時間を過ごしてくれていた自分がいて。
──では、芸能界とはどんな場所だったと思います?
今と同じですよ。同じくらい良い奴もいるし悪い奴もいる。その比率は変わらないですね。
──どうしても“芸能界”というと、よく分からないものが渦巻く世界を想像してしまうのですが。
でもね、やっぱり良い人が売れる。そういう当たり前の世界ですよ。例えば松たか子さんって、『ひとつ屋根の下2』で共演する前、彼女が15歳で僕が12歳の頃くらいから少しずつ交流があったんですね。で、僕が高校受験で1年くらい仕事を休んでいた時があったんですけど、そのとき友達のカメラマンに、「松さんの撮影があるんだけどアシスタントがいないから、黒田くん来ない?」って言われて、それは面白いから行ってみようってことになったんです。で、スタジオに行って、ずっと“アシスタントの金子”として、レフ板とか持ってセッティングして、向こうの事務所の人も何となく怪訝な顔でコッチを見ている訳ですよ。でも、松さんが現場に入ってきた途端に、「お前なにしてんだよ〜!」ってお尻を蹴っ飛ばされて(笑)。その日、高校に期末試験か何かを受けに行かなくちゃいけなかったんだけど、「ちょっと待ってて」って言われて撮影が終わるまで待たされて、ちょうど松さんの誕生日が近かったから、プレゼントを渡して「ありがとう!」って言われて……。結局、どこでもそんな感じなんですよ。偉くなる人とかみんなに慕われる人はそういう人だし、ヤな奴は本当にヤな奴だし。それは引っ越し屋にも会社にもいますから。
ただ、(芸能人は)若干責任が大きくのしかかる仕事ではありますね。発言とか行動の内容に気をつけないと、大問題になることがある。でも、それだってある面では他の仕事をやっていても同じですから。芸能界にいる人は目立ち易いっていうだけで。
──責任っていう話になってくると、今の立場って微妙なところではありますよね。
うん、でも僕は28年分の人生で関わった人に対して責任を持っている訳だし、それってどこの28歳でも同じ責任を持っていると思う。よく「黒田くん考え方が大人だね」って言われることがあるんですけど、でも社会に出るのが早かったからこそ知らない10年間とかがあるんですよ。多分、学生時代に部活で頑張ってた奴とかは、引っ越し屋へのイヤミなんて屁とも思わないんですよ。僕は毎回キレてますけど(笑)。それはどっちにアドバンテージが向いてるかっていうだけで、僕の場合は“芸能界”っていう珍しい所だったっていうだけなんですよ。
──今も「なんでアルバイトやってるの?」とか言われること多くないですか?
ありますよ。「今お金ないから」って答えてますけど。
──「もう俳優やらないの?」とか。
言われますね。こないだ葬式に行ったときはキツかったですね。遠い親戚のおばちゃんとかに「またやりなさい、もったいないじゃないの!」とか説得されて、でも葬式の場だからあまり話し合う雰囲気でもないし、とりあえず「ありがとうございます。考えておきます」って応えるくらいしかできなくて(笑)。でもまあ、そういう時もちゃんと嘘付かないで、自分が今思っていることをしっかり話していれば良いんです。それでケンカになったらケンカをすれば良い。そう思ってます。
渡されたサイコロは振る!
──今の生活には馴染んできましたか?
はい。よく1年なんてあっという間に過ぎちゃうとか言うけど、意外と何ヶ月かに一回は何かしらが起こるので、まだまだ面白いなって思えてますね。今回のトークライブだって、誘ってもらって二つ返事で「やる!」って言っちゃいましたから。
──その割にはツイッターを見ていると「何やろう……」って悩んでいて、それが面白くて仕方無いんですが。
だって、トークライブってものを見たこともないですからね。一体何をやれば良いのか分からないけど、やるって言っちゃったからには良いだろうと。渡されたサイコロは振るって決めているので。
──じゃあ今、モヤ〜っと“トークライブ”の全体像が見えてきたところ?
なんとなくですけどね。お芝居を見に行った後に、演出家の人と役者の人が喋ったりする、ああいう感じなのかなって。友達がUstreamで配信しているのを見ていて、ああいうことをすれば良いのかなとか。
どちらにしても楽しくなれば良いなとは思ってますね。もうまるで知らない世界なんで、引っ越し屋でバイトを始めようと思ったときと同じ感覚です。肉体労働したことないからしてみよう! っていうのと、トークライブしたことないからしてみよう! っていうのは、僕の中では全く同じです。
──とりあえずやってみよう! っていう。
そうそう。ただ、お客さんが何を求めて来られるかは分からないじゃないですか。だから、とりあえず“僕が楽しいこと”をします、っていうことだけは言っておきたいですね。“ドロップアウトした人の暴露話”だけを求めて来た人は楽しくないかもしれないし、もしかしたら楽しめるかもしれない。それはどうなるか、今は僕にも分からないです。
ただ、『ウルフくんとうさぎさん』の追加映像は絶対に作ろうと思っているので、いま友達にテーマ曲のコード進行を調べてもらっているんです。
──え? だってあれ、オリジナルですよね?
だって僕、音楽ぜんぜんできないですから。打ち込みのソフトを使って勘だけで作った曲なんで。
──ということは、トークライブでフルコーラスが聴けるかもしれないんですね!
え、あれでフルですよ(笑)。サビだけのようですけど、あれが全てです。
──あ、それは失礼しました(笑)。でも生で聴けるかもしれないんですね。
そう、それだけはやりたいと思っていて、今ギターを練習しているところです。
──黒田さん、宴会とか仕切るの好きだったりします?
そうですね。昔から凧揚げパーティーとか主催してますから。
──凧揚げ……?
自作の凧を作って揚げる、っていう大会を20歳くらいの頃から3年続けて3年目でやっと揚がったんですよ。「駅前に2メートルくらいの凧を持った男がいるので、そこに集合」とか言って、一番多いときで20人くらい集まりました。子どもに「あの凧揚がらねえよ」とか言われながら、無風の中を駆け回ったり。
──本当に好きなんですね。
みんなでワイワイするのがね。
──じゃあ、もしかしたらトークライブは天職かもしれないですよ。
まあ、引っ越し屋のバイトよりは楽しいかもしれないですね(笑)。
何か1つ、これだと思えるものを
──動画も作るしイラストも描くし、黒田さんって多才ですよね。
何においてもそうなんですけど、他人より早く60点は取れて期待されるけど70点まで時間がかかるタイプなんです。
──器用貧乏というか。
それでも良いから頑張ろうと思えるものを見つけて、100点取っていかなくちゃいけないとは思っているんですけどね。
──それこそ監督にも興味があったり。
映画監督は小さい頃からの夢ですしね。それを否定するつもりもないし、かと言ってそれを商売にする覚悟ができるかと言われたら、ないし。
──つまり、今は“これから”を探している最中だと。
すごく能動的に、受動的な人生を歩んでいるんです。来たモノは拒まず。そうすれば「これだ!」っていうモノに出会えるんじゃないかと。女の子とすごく遊んでいるのも、同じ理由です。いつか「この子だ!」って思える日が来るんじゃないかなって。
──なるほど(笑)。でも今のところは見つかっていない。
仕事も女の子も、まだですね。唯一見つかったのは、金麦だけです。
──ツイッターでも推してますよね(笑)。
いろんなもの飲んだけど、コレが最高なんですよ! コストパフォーマンスも最高だし、味も良いし、とにかく総合的に素晴らしいんです!
──これからやってみたいことは?
いろいろあるんですが、実は営業職だけはすごく敬遠しているんですよ。口も立つ方だし、人を説得したりモノを説明したりするのは上手いって言われるんですね。それはもちろん表現の仕事をしていたから、気持ちを伝えたり正確に表したりすることは得意ではあるんです。でも、それで営業の仕事に就いたとしたら、「あの映画のあのセリフ言ってみてよ」とか「◯◯紹介してよ」とか言われたりすることがあるかもしれない。でも俺はそうやって、過去の自分をお金に換える作業が絶対できないだろうなと思って。もしやっても良いなと思える日が来たらやってみたいんですけどね。
あとは、なんだろう……。バーテンもやってみたいし、それと昔絵本を書いたことがあって、あれはもう一度やってみても良いかなと。あ、遠くの知らない街に行って、旅館に住み込みで2年とか働いてみたいです。夜遅くなるとスナックが一軒しかやってないような街で仲居さんと恋に落ちたりとか、そんな生活を送ってみたいなあ……。
──海外とかも良いのでは?
う〜ん、どうでしょうね。まあ、でも結局「これがしたい!」みたいな理想が特にないんですよ。来たモノに関しては「やってみたい」って思えるんですけどね。突き詰めると「死んじゃいたい」とか思っちゃうんで、あんまり突き詰めないようにしてます。何か1つ、“これだ!”と思えるものがあれば良いのかもしれないですけどね。だからこそ感覚を、できるだけ自分に素直に研ぎすましているところです。いつか金麦みたいな仕事と、金麦みたいな女の子に出会える日まで。
──「金麦みたいな」って、安っぽいですね(笑)。
誤解されるからそういうこと言うの止めてください!
トークライブのチケット発売記念!