今の黒田勇樹は黒田勇樹という職業だと思ってる。
そんな職業【黒田勇樹】と【室外機】は僕の脳内で同じ引き出しに収納されている。理由は判らない。ただ、本当に同じ引き出しに入っている。
だからここ数か月、室外機を見ると勇樹さんの顔が浮かぶ。
逆に勇樹さんを見ると室外機が浮かぶ。
そうなるともう室外機と黒田勇樹の2ショットを見たくなる。ま、室外機マニアとはそういうものである。
「もし、これが乾燥機マニアだったらコラムに出なかった」
開口一番、勇樹さんはそう言った(そしてビールを飲んだ)。
黒田勇樹の中には、溜まりに溜まった室外機に対する憎悪があった。ただ、それをぶちまける場所がなかった。
この室外機マニアは、彼の室外機に対する憎しみと怒りを訴える場所として最も適していた。
さっそく、その訴えを聞いてみよう。
勇樹さんは週末引っ越しのバイトをやっていた。
引っ越し作業の仕事はハードである。
部屋からトラックへ、そしてトラックから部屋へと荷物を運び続けるその仕事は過酷を極める。
新人であろうと容赦ない。
そんな勇樹さんを悩ませる最大の難敵が室外機だったのだ。
「本当に許せない…」
そう呟きながら勇樹さんは下唇を噛む(そしてビールを飲んだ)。
「室外機は新人でもひとりで運ぶ時が多いんです(そしてビールを飲んだ)」
確かに室外機はきつい。家庭用で30キロ〜40キロはある。
「そして裏側とか、何かむき出しのパーツあるじゃないですか!あれが服にザクッと引っかかるんです! ザクッと!(そしてビールを飲んだ)」
熱交換を効率よくするためのアルミフィンがむき出しになっていたりするから持ち運びの際は注意が必要だ。
「なによりも室外機は足が弱いんですよ!!!(そしてビールを飲んだ)」
直接地面に置く事を避けるために、多くの室外機は据付台の上に置かれる。
「荷物は下から持て! って教わってるんですよ、だからあの足を持つじゃないですか。するとグニャってなるじゃないですか!!!! グニャって!!!!(そしてビールを飲んだ)」
据付台の多くは樹脂製で取っ手の役割はしていないので、確かにあそこを持つとグニャってなる。
「あの室外機の足腰の弱さを何とかして下さいよ!!!!!! それに重いし汚いし!!!!!!(そしてビールを頼んだ)」
まさに現場のリアルな声である。
それから勇樹さんはドラム式洗濯機について語り出した。
「ドラム式洗濯機はまだいいんです、あれは取っ手がたくさんついているんです」
ドラム式洗濯機を語る勇樹さんは妙に優しい。まるでドラム式洗濯機からワイロをもらっているんじゃないかと疑いたくなるほど優しい眼をして話す。
勇樹さんは3杯目のビールを飲みながらドラム式洗濯機がどれだけ持ち運びに配慮していて、引っ越し業者にとって扱いやすい構造になっているか喋り続け、その後ヤマダ電機の6階洗濯機売り場で、実際のドラム式洗濯機を前に取っ手の多さを僕に熱心に教えてくれた。
その時、ドラム式洗濯機をグルングルン回転させて取っ手の場所を「ここにもあるでしょ! ほら、ここにもあっった!」ってチェックするから不審に思った店員が飛んできた。
昼からビール飲んでる大人2人がドラム式洗濯機をグルングルンして取っ手を見つける度に喜んでたら、そりゃ店員だって飛んでくる。
黒田勇樹 profile
職業:ハイパーメディアフリーター
1988年、NHK大河ドラマで子役としてデビュー。その後TV、映画、舞台で活躍するも、2010年に芸能界を引退。アルバイトなどで生計をたてていたが紆余曲折を経て、現在は公式サイト「黒田運送(株)」や、毎週木曜夜にUSTREAM中継と連動して営業する「黒田運送(カフェ)」の運営を行っている。好きなビールは金麦。
Twitter
http://twitter.com/yuukikuroda
黒田運送(株)
http://yuukikuroda.com/
黒田運送(カフェ)
http://cafe.yuukikuroda.com/
エンドケイプ profile
職業:モノカキ
日本を代表する室外機フェチで37歳独身。
電子書籍・イラストから作詞まで浅くユルく網羅し、特技は雨に濡れない体質である事。
作詞した初音ミク公式楽曲「LOL -lots of laugh-」が大ヒット中。
Twitter
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blog「エンドケイプほぼオンライン」
http://ameblo.jp/endcape01/
「室外機マニア」
http://www.sonzai.net/