Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

今、すごく能動的に、受動的な人生を歩んでいます。

2010.12.10

'88年に子役としてデビューし、その後TV、映画、舞台などで活躍していた俳優・黒田勇樹。今年4月をもって俳優業を引退していたことが報じられたことも記憶に新しい彼が、2011年1月、トークライブに出演する。現在も独特な間合いで頻繁に更新されるツイッターや、ニコニコ動画に転載されて話題を呼んだ怒濤の自作短編アニメ『ウルフくんとうさぎさん』、そしてPixivへのイラスト投稿など、これまでの"俳優・黒田勇樹"からは想像できないような活動を展開しつつ、平日はとある会社で、週末は引っ越し屋でアルバイトをする28歳。彼は一体、いま何を考え、何をしようとしているのか──。我々はトークライブに先駆け、インタビューを敢行した(金麦を片手に)。(インタビュー・構成:前川誠&やまだともこ)

 

自分を一回ゼロにしたかった

──まずは、黒田さんの俳優引退をスッパ抜いた『週刊女性』の記事のお話からしたいのですが。

あ、あそこに「音楽仲間と路上ライブをやっていた」って書いてあったけど、僕ライブなんてしたことないんですよ。そもそも楽器も弾けないし。

──そうだったんですね。ちなみに記事によると、2007年に体調不良を理由に舞台を急きょ降板して、その後1年間の謹慎期間があったと……。

という風に書いてありますけど、実はそんなに時間をおかずに体調が良くなって、仕事に復帰してるんです。まあ、僕はいま一般人だし、いちいち細かく記事の真偽を指摘する必要はないのかなと思ってるんですが、ただひとつ声を大にして言いたいのは、路上ライブはやってません!

──それは主張したいと(笑)。

そこは自分のアイデンティティに関わる話なんで。でもそれ以外はどうでも良いんですよ。ちゃんと調べてもらえれば分かると思うんですけど、舞台降板後3ヶ月くらいで美輪明宏さんと一緒にCMに出演してるし、その後もちょいちょい仕事をさせてもらっていたんです。でももう30歳も目前だし、所属していた事務所といろんな話をしていくなかで、一旦俳優で生計を立てるのを辞めようと。

──それはまたどうして?

すごく簡単に言うと、子どもの頃から俳優をやっていて、自分が俳優なのが当たり前になっていたんですね。だから、本当にそれがしたいのか、したくないのかが自分の中で判らなくなっちゃって。だったら一回離れてみて、それでも凄くしたいのか、それとも「じゃあいいや」ってなるのか、自分を一回ゼロにしなきゃいけないなと。このままなあなあで続けていても、いざそれでメシを食っていかなきゃいけないとなったときの強さが違ってくると思ったんですよ。だから30歳になる前に、自分を放り投げてみようと。

──今働いている職場の上司に怒られたりとか、そういう日常が大事で仕方無いというようなことを、ツイッターでも書かれていましたよね。まさに今、そういう毎日を噛み締めているところなんでしょうか。

そうですね。でもこれが“噛み締めている”とかじゃなくて、本当の意味で日常になったときに、初めて本当に自分のやりたいことが分かるんだと思って。

──お試し期間ということですか。

シャケで言えば稚魚を放流した感じです。

──どこの川に戻るかは分からないと。

まだ、もうすぐ海くらいの所です。

「おっぱいおっぱい言うな!」

──次に、アニメ『ウルフくんとうさぎさん』について伺いたいのですが。

yukikuroda_b.jpgあれは確か、本当に作ったのは2007年よりもっと前だと思います。ヒマだったときに酔っぱらってテレビを見ていたら、とある漁村でホタテがヒトデに食べられて大変だっていうニュースをやっていたんですね。で、これは大変だと。僕がヒトデの恐ろしさとか漁村の大変さを世の中に伝えなきゃいけないと思ったんです。それからホタテの生態を調べたりシナリオを書いたりしたんですけど、適正な時間とかエンターテインメント性を密にしていく作業をしていくうえで、いらない部分を削ったら、「漁村」と「ホタテ」っていう設定がなくなったんです。

──当初の予定はどこへ(笑)?

だって、面白くなかったら仕方無いですから(笑)。

──ということはあのアニメに関しては、俳優引退などとは全く関係ない時間軸で作られたものだったんですね。

そうですね。でも(俳優を)辞めている訳で、そんな中でみんなに(アニメを)面白がってもらえて、「やっぱりこういうの好きだな」って思えたんです。そういう意味では、作っておいて良かったなと思いましたね。だから、ニコニコ動画に上げたヤツ、よくやった! と。

──同じくニコニコ動画にあがっている「俺ラジオ」については?

あれは『ウルフ〜』に対する反響への、僕からの返事です。

──どうしてもああいった動画を見ていると、やっぱり黒田さんは「もの作り」の場に身を置いてしまうんだなあという、“業”と行ったら大袈裟かもしれませんが、そんなことを感じてしまうのですが。

自分でもそこは否定しないです。大好きです。「こういうことを映画にしたら面白いのに」とかいっつも思うし。例えば引っ越し屋のバイトでエレベーターの中に棒と台車と一緒に蹴り込まれたときとか、「もしこの棒がお客さんの大切な宝物で、主人公が“ああ! お客様の棒が!!”って泣き崩れたら面白いだろうなあ」とか(笑)。そんなことを思いながらバイトしてるんですけど、でもそれを世の中に投げかけるとなったら、それはつまり仕事にするってことじゃないですか。いま一番僕が悩んでいるのが、“何でお金を稼ぐか”と“何で毎日を楽しむか”なんですけど、そこをイコールで結ばれちゃうと、それはちょっと難しい話なんです。誰かに言われてツイッターにも書いたんですけど、釣りが趣味の人に「どうしてマグロ漁船乗らないの?」って訊くのと同じ話をしているような気がするんですよね、それって。

──なるほど。確かに『俺ラジオ』だって仕事ではないですしね。

そう。でもキッチリ台本を書いてやってはいるんですけどね。

──そういったネット上での活動というか……。

「交流」ですね。

──そう、「交流」は今後も続けていきたい?

たまに酔っぱらったときとかね、こういうことしてるのってまだ俳優だった頃の黒田勇樹に甘えてるんじゃないかと思って、全部やめてやる! ってなることもあるんですけど、でも、結局のところ、みんなでワイワイ楽しくやりたいっていうのは自分の根底にあるものだし、その方法は何かとか、それでお金を稼ぐ・稼がないっていうのはまた別の話だから、楽しんでくれる人がいる限りは続けても良いのかなって。まだそういう気持ちの方が勝ってます。

──俳優・黒田勇樹の頃のイメージとはだいぶ違うから、それで好きになった人も多いかもしれないですよね。

ガッカリした人もいるかもしれないですけどね。ツイッターで怒られたもんなあ、「おっぱいおっぱい言うな!」って……。

──あはは。でも、いくら黒田さんが「僕は一般人です」と言っても、やはりまだ“俳優・黒田勇樹”という目で見る方もいらっしゃる訳で。そこは難しいところですよね。

難しいところでもあるし、楽しんでいるところでもありますね。

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LIVE INFOライブ情報

 

2011年1月14日(金)
『僕と黒田と勇樹と俺と、』

1994年の「人間・失格〜たとえばぼくが死んだら」(TBS系)や1997年の「ひとつ屋根の下2」(フジテレビ系)など、数々の人気ドラマに出演し、 中性的な容姿を持つ個性派俳優として活躍した黒田勇樹が2011年1月14日、初のトークライブを行う。多くの人が知ることのなかった一面が引き出され、新たな『何か』を生み出すきっかけとなるのか……!?

会場:Naked Loft(新大久保)
【出演】黒田勇樹
OPEN18:30 / START19:30
前売¥1,800 / 当日¥2,300(共に飲食代別)
チケット発売日:12月10日
チケット取り扱い:ローソンチケット(L:34921)

ネイキッドWEB予約 http://www.loft-prj.co.jp/naked/reservation/
入場順:1.ローソンチケットno.1〜 →2.ネイキッドWEB予約
問:tel.03-3205-1556(Naked Loft)

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