新しい境地に辿り着いたような感じ
──『Never Too Late』は、ツイン・ヴォーカルの畳みかける感じが底抜けに気持ち良いですよね。
TANNY:今回はツイン・ヴォーカルを増やそうやって決めたんです。ドラムがSUNEになった時に、「俺らを客観的に見た時に何が一番の武器や?」とか「どういうアプローチをしたら良いのか?」という話をU-tanとして、「やっぱりツイン・ヴォーカルじゃない?」みたいな。畳みかける感じって最近あまりやってないし、僕らがバンドを始めた当初からの攻撃スタイルやったので、それを今回は全面に出そかって。
──だからこそ歌がちゃんと聴こえるようにという意図を汲んでアメリカに飛んだわけですね。表現方法が格段に上がった手応えはありますか?
TANNY:出来上がった作品を聴いて、アメリカに行った意味はあったなって思います。
U-tan:曲は多かったんですが、時間があまりない中で十何曲録るというのは成長した部分もあるし、英語の発音は今までは気づかなかったもう一個上のところで教えてもらえたので、凄く意味がありました。
TANNY:前の経験を活かしつつ、新しい境地に辿り着いた感じはしましたね。
──現地の人から英語の発音を直される部分というのは、たとえばLとRの違いとかですか?
U-tan:あと、母音が5種類ぐらいあるじゃないですか。喉の奥で言う“アー”とか、ちょっと巻く“アー”とか。今回めっちゃ難しかったのが、“party”と“story”だったんです。“パーリィイ”って、最後の“イ”をちゃんと言わなあかんのですよ。“イ”がちゃんと聞き取れて初めて“party”って聞こえるんです。“story”の最後も同じで、その辺が難しかったです。“パーリィイ”って(ここで“イ”を一生懸命発音するU-tanがパソコンの画面にドアップで映し出される)。
MAKKIN:ここで英語のレクチャーしてどうすんねん!(笑)
U-tan:それが面白くて、向こうにいた期間中にも曲を作ったんですよ。俺らはめっちゃパーティー好きやし、パーティーに行きたいけど、その前にパーティーって上手く言われへんねんって。一発録りで、ボーナストラックとして入れた曲なんですけど。
──ブログを拝見したら、21曲作った中から厳選した14曲を収録したと書かれてましたが、恐ろしく曲を作りましたね。どれだけ気合いが入っているかがよく判りました。
U-tan:その中から14曲を選ぶのがけっこう苦労しました。
MAKKIN:アルバムで言ったら2年ぐらい出してないから曲も溜まっていたし、早く出したかったんです。U-tanは、一時神が降りて来ている時があったみたいで。
U-tan:今も来てるけどね(笑)。
──U-tanさんはここ数年の中で、最速の作曲ペースだったんですか?
U-tan:そうですね。けっこう早かったです。
TANNY:僕はU-tanに「もうちょっと待って」って言って引っぱっちゃいましたね。
──SUNEさんが加入した今のバンド・サウンドを想定した曲作りだったんですか?
TANNY:ドラムが変わったからこうしようというのはなくて、メロディとか全体のイメージで試行錯誤していたんです。
MAKKIN:次の時はもっとSUNEの良さを出して欲しいな。
SUNE:今回は徹した感じにしたんですよ。バンドのイメージがガラッと大きく変わるのは怖くもあったし、自分がバンドのいちファンでもあるので壊したくなかったんです。僕はもともと手数が多いほうが好きなんですが、このバンドはメロディを大事にするバンドなので、今回はなるべく削ぎ落としました。でも、最近になって自分ができることの隙間が見えてきたので、早く次を録りたいですね。
──今回採用されなかった曲もたくさんありますからね。
TANNY:U-tanと「もう1枚アルバム出来るな」って話をしていたんです。一昔前は「曲がない」って言ってた気がするんだけど、今は曲がありすぎて出しきられへんみたいな。
──1曲目の『27』のような30秒に満たない曲は、“いきなりこんなボールを投げてくるのか!”と思いましたけどね。新しくレーベルを立ち上げて、1枚目の1曲目に勝負してる感があると言うか(笑)。そうやってユーモアを全面に押し出すのもGOOD4NOTHINGらしいですよね。
TANNY:あまり固い感じじゃなくて、柔らかくしたかったと言うか。そのほうが面白いですから。
自分たちが最後まで責任を持つ
──マスタリングはU-tanさんに全幅の信頼を寄せているんですか?
MAKKIN:はい。
U-tan:今までは、マスタリングにはあまり立ち会わなかったんです。
TANNY:ガチでやるのはミックスまでで、マスタリングはお任せしてましたから。
──レーベルを立ち上げた意味と同様、自分たちで最後までしっかりやるという心の表れですね。音の現場監督はU-tanさんが担っているんですか?
MAKKIN:大まかな形を作るのはTANNYとU-tanです。あとは僕がコーラスをもうちょい欲しいとか、ベースをもうちょい欲しいとか言いますけど、それをまとめるのがU-tanとTANNYなんです。
──MAKKINさんは、曲を持っていってもほとんど改ざんされてしまいますからね(苦笑)。
MAKKIN:寂しいもんですよね。
TANNY:でも、そのおかげで名曲が生まれたからな。
MAKKIN:そうや! 俺のおかげや!!
U-tan:でも、MAKKINのミックスはベースしか聴こえなくて終わってましたね(苦笑)。
TANNY:MAKKINはホントにベースが好きなんやなって思いましたよ。プリ・ミックスの段階で各々が持って帰って、思うところをエンジニアの人に伝えていく時に、MAKKINは「全体的にベースが欲しい」って言っていたんです。それで、みんなの意見を盛り込んで聴いたら、もの凄いモコッとした感じになって却下したんですよ(笑)。
MAKKIN:やってるパートが好きなもんで(笑)。
TANNY:そこでMAKKINに言ったのが、「もうちょっと全体考えて、出すとこ引くとこ考えたほうがいいんちゃう?」って。
──でも、ベースの音はどの曲も粒が際立っていますよね。
TANNY:今回、楽器は良いスタジオで録らせてもらったので、凄く音が良いんですよ。
──抜けの良さは近年の作品で一番良い気がします。
TANNY:足し算引き算が前よりもできるようになったんです。殺し合うんじゃなくて“どうぞどうぞ”って引くやり方も判ってきたし。
MAKKIN:俺もちょっとは判ってきた(笑)。
──SUNEさんは与えられたことをきっちりこなすスタイルで?
SUNE:先輩(MAKKINのこと)の一件を見ているので、「バスドラをもっと欲しい」と言ったらこうなるんだろうな…って勉強させてもらっています(笑)。
TANNY:注文も最低限やったしな。
MAKKIN:僕も最低限のつもりだったんですけど、聴いたら確かにベースがでかいなって思いました。
TANNY:でも、やらんと後悔するよりも、やって後悔したほうが勉強になるしな。
──今回もいろいろトライアルできたことが如実に窺える感じですね。取材前に聴かせて頂いた音源が前半の6曲と後半の1曲なんですけど、全体の構成としては後半になるにつれてエモ度が上がっていく感じなんですか?
TANNY:僕らの傾向としては、頭のほうはパーティー・チューンが多くて、真ん中ぐらいにミッドの感じがあって、後半は泣きもありつつ違うアプローチの曲もありつつで、最後にもう一回上げるという感じでいつも考えているんです。
──今回もそういう構成で踏襲していると?
TANNY:曲を集める時とかに、自ずと「これ1曲目やな」って決まってしまうんですよ。
U-tan:ホンマは出来てる曲を全部入れたいぐらいだったんですけど、作品として見て『27』から始まってバラードの『film』で締まるっていう流れを組むのが難しくて、考えているうちに自然とこの並びになった感じです。『27』は僕らなりのメッセージを込めた曲なんですよ。最近の若い子たちって、CDを買って友達に回したら捨てちゃうと聞いたことがあるんですけど、それが悲しくて。だからパッケージとして所有する価値のあるものにしたくて、今回はアートワークも14曲分の歌詞や絵を自分らで描いて、パッケージ全体を見て欲しかったんですよね。
MAKKIN:前作に比べて、そういう部分は凄くこだわってます。
──アートワークを含めて“L.M.N.O.P.”第1弾作品にふさわしい作品になりそうですね。現時点でそれだけストックがあるなら、2枚組のアルバムも出せそうじゃないですか?
TANNY:僕らがキッズの時に聴いていた海外のパンク・バンドって、1枚のアルバムに25曲とか入っていたりしたじゃないですか? でも、現実に全部ライヴでできるかと言ったらできない。一生懸命作ったのに、忘れられていくような曲があるのがイヤなんですよ。どの曲もライヴでやりたいし、どの曲も同じように愛しているし、捨て曲を作りたくないというのは昔から思っています。
──GOOD4NOTHINGのオリジナル・アルバムって、どの作品もその時期のベスト・アルバムみたいなところありますよね。どれもシングル・カット可能ですし。まぁ、『27』はともかくとして(苦笑)。ちなみに、今回はトータルで何分の予定なんですか?
U-tan:38分ぐらいですね。
TANNY:また40分越えせず。
──メロコアのアルバムで40分台だと超大作って感じですからね。そして今回のレコ発ツアーもご多分に漏れず長丁場で、ライヴづくしのまま年をまたぎますね。
TANNY:今年もアジア方面に行く予定なんですけど、来年も海外に向けてのアピールはしていきたいです。違う環境の中でやったら勉強にもなるし、僕らだけで行くからメンバーの有り難みもよく判りますし。いろんな意味でバンドが叩き上げられる環境なので、どんどん続けていきたいです。
──今後はL.M.N.O.P.主催の企画も考えていたりしますか?
U-tan:いずれはやっていきたいと思っています。
TANNY:お酒の席とかでそんなんしたいなとは言ってますけどね。
U-tan:まずはこの4人で日本2周ぐらいはツアーがしたいですね。次がこの4人になってからの初めての大きいツアーなんで。そこでまたケンカして(笑)。
TANNY:ケンカしたいんかい!(笑)
U-tan:それが一番近道やな。KAWAJINとやってきた12年間から、新しいGOOD4NOTHINGを確立してやっていけたら良いなと思いますね。
TANNY:最悪、次の作品はSUNEちゃうかもしれんしな(笑)。
SUNE:それは毎回肝に銘じてます(笑)。