時代が過ぎても聴く意味があるもの
──今回は全体的に"恋"だったり、『ロールオーバー14歳』という曲があったり、マツキさんは中二病なんじゃないかと一瞬思うところがありましたが...。
マツキ:中二病というよりは、男子感ですね。男のしょうもなさというか、大人になってもどうしようもない感じが、自分が表現しようとした時に出てきてしまうところで、それを突き詰めて考えていくとブルース感に繋がっていくのかなという気がしています。そういう感覚を持っているから、ある出来事に対して悲しく捉えたりとか、諦めたり、いろいろな感情があると思いますけど、それが自分の中ではブルース感なんですよ。男の人のやせ我慢とか強がりとか、それを中二病と言ったらそうかもしれないし、僕は男子感だと思ってますけど、そういうものが表現したいんだと思っています。
──歌詞で歌われている中高生ぐらいの時の女子を見ただけでドキドキしちゃう感じとか、今の年齢のマツキさんがこれだけのドキドキを表現するというのも意外でしたし。もっとシュッとした感じがあったんですよ。
マツキ:こっちが本当の我々というか(笑)。シュッとしたフリはしていると思いますけど、そんなことないんです。30半ばぐらいになって、かっこつけすぎていてもボロは出るし、それはブルース感には繋がらないんですよ。表現したいことに繋がらない。どうしようもないことに対して向かっていく感じというか、そういう自分の中のブルース感みたいなものがSCOOBIE DOの本命の部分だと思っているんです。それを突き詰めて考えていくと、強がりなのかもしれないんだけど涙を見せずに歩いていく感じとか、どこか情けなかったりおかしかったりもするんだけどそれが説得力を持つ佇まいになっているとか、スーツバンドではありますけど、そんなにクールさみたいなものを求めていないんです。どっちかと言うと、かっこ悪いかもしれないけどやせ我慢をしてる姿だったりとかが自分としては好きなんです。でも自分の中では、昔と言ってる事とか書いてる歌詞とかは、あまり変わってないという感覚なんですよ。『きれいなお姉さん』でも、ここで全部をさらけ出しましたということはなくて、バンドを組んだ時から一貫して変わってない気はしているんです。
──ちなみに、マツキさんってどんな中学生だったんですか?
マツキ:僕は中学までは人気者系でした(笑)。野球がすごく好きで、その頃は面白い事をみんなの前で言うキャラだったんですよ。高校になってからは野球も辞めちゃいましたし、音楽とか自分の世界にどんどん入っていった感じですね。中学まではわりと開いていた感じです。
──それって、小学生時代のコヤマさんがみんなの前に立つと張り切る感じと似てるんですか?
マツキ:シュウ君のほうがそれがあった。シュウ君は運動ができるわけじゃないんだけど、学校で一番面白い人っていう感じだったんです、中学までは。それから同じ高校に行ったんですけど、2人だけ笑いのセンスが上がり過ぎちゃっていて、高校の中で面白いと言われている人を見ても全然面白くない。でも、その面白くなさが俺ら2人にしかわからないというか...。それで、その世界には馴染めなくて、レコードを交換しあったりとかばかりやってました。
──中学生の頃から音楽は聴いていたんですよね?
マツキ:小学校ぐらいですね。お兄ちゃんが2つ上なんですけどバンドブームにかぶれていて、その影響もあって中学生ぐらいの時には、ポール・ウェラーのTHE JAMを全部コンプリートしてました。だから、話せる友達がいなくて野球は一緒にやるけど家に帰るとTHE JAMを爆音で聴いていたり。高校に行っても音楽をわかる人がいなかったので、シュウ君に自分で編集したテープを無理矢理聴かせて、シュウ君はYMOとか好きだったので聴かせてもらって、ちょっとずつ音楽好きにさせていったんです。
──小さい時からそういう音楽を聴いていたことによって、リズムの取り方もそうなんですけど、楽曲を作る時に自然と滲み出ているものってありません?
マツキ:でも、今回はリズムの複雑さで聴かせると言うよりは、歌謡曲のつもりで作っていったんです。僕らが子供だった頃にトップテンとかベストテンで流れていたような、少年隊や安全地帯とかは今聴いてもすごく良いと思いますし、メロディー的なルーツはその辺なんだなって。今回はその辺の感じに近づけたいという感じでやってはいました。最終的には、これを聴いて元気になりますとか、持っている痛みを共有してくれている音楽だとか反逆の音楽だとかではなくて、特別な効能があるわけではないけれど、ずっと聴いていたい音楽であれば良いなって思います。
──以前、世代関係なく歌える曲を作りたいとおっしゃってましたが、その部分ですよね。
マツキ:ただ、それは常に思っていることではあるんですけど、実際作っている時はそこまで思っていないんです。でも、ずっと残っていくものというか、10年後20年後にも廃盤になってないというか、誰かが見つけ出して聴いてくれる...。そういうエヴァーグリーンなものを作りたいなとずっと思っているんです。パッと聴きの派手さを追究したものではなくて、時代が過ぎていっても聴く意味があるもの。そうすると究極的には歌なんですよね。歌えるもの、覚えやすいものをということをウダウダ考えながら作ってましたね。
──曲は、マツキさん1人で作られるんですか?
マツキ:はい。作っていったものをスタジオに持っていき、リズムはこんなでベースはこんなでって伝えていきます。
──そこからもっとこうした方が聴きやすいみたいなアイディアは出てくるんですか?
マツキ:あんまりないよね。
MOBY:この感じは違うというのは前はみんな言ってたけど、最近はほとんど言ってない。基本的にマツキタイジロウがソングライティングしたものをバンドでやるというのがスタイルになってます。
マツキ:一回録って持って帰って聴いてみて、イマイチだと思ったらメロディーとか歌も全部自分で変えて来ちゃうんです。なぜ直すかというと、上手く叩けないとか弾けないとかなんですけど、それは曲が良くないんです。『バンドワゴン・ア・ゴーゴー』はそうやって直していった曲です。今までは変える作業もみんなでやっていて、なかなか変わらないからボツになることが多かったんです。でも、自分で感じて直した方が早いと、ここ何年かで気付いて、だから次スタジオに行ったらここ変えちゃったよっていうやりとり。そのほうがスムーズだし、曲も良くなっていくから。大筋は作った人が主導権握っておかないと、落としどころがわからなくなってしまいますからね。だから、バンドのアレンジで煮詰まることはあまりないです。この方が、楽曲が生きる。俺はこれがやりたいんだということじゃなくて、やってバッチリ来たということだったら、この曲はこういう曲だったんだというところで決着するというか...。より楽曲重視になってきたんです。楽曲が呼ぶものを突き詰めていくという感じです。