SCOOBIE DOが夏を目前にリリースするBRAND NEW ALBUM『何度も恋をする』。彼らにしては珍しい、日本語のタイトルにまず驚かされた。
今作は、胸キュン度2000%のサマーアンセム大全集!『太陽と女の子』の、夏の照りつける太陽のような明るさを持った曲から始まり、そこからはSCOOBIE DOならではの"Funk-a-lismo"なサウンドの波が押し寄せる。ブラックミュージックを根底にサウンドを鳴らしている彼らだが、ここ最近は"聴きやすさ"も追究し、歌謡曲としても充分に成立する楽曲となった。SCOOBIE DOほどのキャリアがあれば、緻密に作り込んだサウンドを鳴らす事はいくらでもできるはずだが、それを大衆的な楽曲へと変換し、聴く人を限定しないものとして作り上げられている。間口を広げ、より"歌謡"として普遍的な作品として聴き継がれていくことを想像させる1枚。
今回も、SCOOBIE DOの作詞・作曲を手がけるマツキタイジロウ氏にお話を伺った。そして、前回に続きマネージャーとして同行したMOBY氏にもさりげなく話を伺うことができた。(interview:やまだともこ)
歌が良いに越した事はない
──アルバムタイトルが『何度も恋をする』ですが、最初の段階で"恋"をテーマに作ろうと思っていたんですか?
マツキ:いつも、コンセプトとか考えずに曲だけ作っていって、アルバムのボリュームぐらいになったところで、後付け的にこういうタイプの曲が多いなというところで、タイトルを無理矢理着地させる感じなんです。今回もご多分にもれずその方式で、出来上がってみたら夏っぽくて楽しい、いつものうちらの感じもあるんだけど、聴いていて切なくなる感じもあって、あまりそういうのってここのところやってないと思いまして、夏とか恋を入れたんです。恋って言っちゃうと気持ち悪いんじゃないかってみんなで言っていたんですけど、バンド史上日本語のタイトルのアルバムってなかったので、今回は『何度も恋をする』というタイトルにしてみようかって。もともと7曲目の『恋をした男子』のタイトルが『何度も恋をする』だったんですけど、別のタイトルにしたいと思っていて、でも『何度も恋をする』というのも良いタイトルだったので、アルバムタイトルで良いんじゃない? って話で(笑)。
──アルバムに入った以外にも曲はたくさんできていたんですか?
マツキ:アルバムに入らなかった曲を含めると倍ぐらい。その中から厳選したり、メンバーの意見も聞いたり。
──厳選するポイントは、どんなところだったんですか?
マツキ:聴きやすいものです。聴く人が襟を正して聴くとかにはならず、敷居が低いイメージがあった方が良いのかなって、なるべくわかりやすいものを選びました。
──そうは言っても、かなり緻密に作られたサウンドだと思いますが、それでも聴きやすさを感じるのは、そういうところだったんですね。
マツキ:バンドサウンドを味わって下さいというよりは、歌ありきという感覚なんです。もちろんバンドサウンドを含めての歌ではあるんだけど、歌が良いに越した事はないというか、メロディーが良いに越したことはないということを昨年1年は心のどこかで考えて曲を作っていたので、アレンジやレコーディングの仕方が自然と聴きやすい楽曲に向かっていったんだと思います。
──歌と言えば2曲目の『きれいなお姉さん』は、特にボーカルのコヤマさんの雰囲気に色気を感じて、恋をしてしまいそうだったんです。前作の『C.H.E.R.R.Y.』でも思った瞬間があって、今回はここに来たかと、そしてこのアルバムで何度恋をしたら良いんだろう、と(笑)。
マツキ:自分たちでやるようになってから3年間ぐらい、できたものをそのまま録るという感覚が強かったんです。でも最近のレコーディングは、サウンドの落としどころを見極めて作りたいと思い始めたので、歌い方だったり、歌の録り方だったりが曲に寄って行くというか。『きれいなお姉さん』は直接的にいやらしいことを歌っているわけではないんだけど、なんとなくいやらしい雰囲気はサウンド作りからも目指していたので、そう聴こえるのかもしれません。
──歌い方の指導みたいなものもするんですか?
マツキ:わりかし言います。シュウ君はどっちかと言うと癖がある方なので、なるべく言葉が聴こえるようにとはいつも言うんですけどね。それ以外は自分の考えたニュアンスで歌っているので任せています。
──また、『バンドワゴン・ア・ゴーゴー』などのコーラスは、バンドの一体感も特に感じますし、ライブでお客さんと歌っている姿を想像できますね。
マツキ:歌があるとはいえ、バンドがやる音楽なので、3人の楽器以外の声という部分もひとつの楽器だと思うから、それをうまいこと使いたいんです。掛け合い的なものを入れるだけでバンド感って出るものだと思っていて、サビを全員で歌うだけでもバンドの曲なんだなというのもあったりして、そういうことは意識的にやってます。曲が複雑になればなるほど、そういうものを入れてバンド感を残したいんです。
──なるほど。今回『太陽と女の子』は、アルバムの1曲目にふさわしい開放的な曲でしたけど、明るい雰囲気で始めようというイメージはあったんですか?
マツキ:景気よく始まりたいし、最後はある程度意味ありげに終わりたいし、考えているのはそれぐらいで、あとは聴きやすく並べていきたかったんです。3月にビクター時代のベスト盤(『Road to Funk-a-lismo! -BEST OF SPEEDSTAR YEARS-』)を出したんです。ベスト盤の曲の並べ方って、時代順に並べるとか売れた順に並べるとかありますけど、聴きやすい順に並べたら意外と良かったので、今回もその感覚で。だから、最初の選曲の時点で、ファンク的な要素もあるけど、聴きやすい曲が最後に残ったんです。
──最後は意味ありげに終わるというところで、最後の『イキガイ』は、以前インタビューした時に"歌詞で自分の気持ちをそのまま出したくない"っておっしゃってましたけど、今回は少し気持ちが出てきているんじゃないですか?
マツキ:わかりやすくはなっていると思いますよ。何の事についての歌なのかっていうのは、はっきりさせようと思っていたんですけど、最終的に判断するのは聴く側ですからね。ただ今回は『何度も恋をする』というところで、曲順通りに聴いていくと、最初は恋の意味が男女の恋だったものが、生きていく中で人にだけじゃなくて自分の職業だったりとか、趣味だったりとか、そういうものへの恋へと変わっていくような感じが出れば良いなと思ったんです。『イキガイ』は、まさに生きていく中で見つける恋を歌っている気がして、これは最後にしたほうが物語が繋がるのかなって最後にしたんです。後付ですけどね(苦笑)。でも『イキガイ』という曲が出来た時に、それは何か意味があるんだろうなっていう思いもあったんです。そしたら、これが最後なのかなと。頭と最後だけ先に決まっていて、あとはどうしようかって。そしたら、聴きやすく、物語が進む感じで作っていけました。