聴いてくれた人が同じように感動してくれたら嬉しい
──エンジニアは前回と同じくピースミュージックの中村宗一郎さんですが、今回はどうだったんですか?
マツキ:前回は極論を言えば、「僕らは演奏するので良い音を録ってください」というレコーディングでしたけど、今回は60年代とか70年代初期ぐらいまでの古くさい音にしたかったんです。アナログのぬくもりがあるサウンドにしたいということを伝えて、そしたら楽器をヴィンテージとか古いものにしようって、ドラムを古いものに変えて、スタジオにあるギターを使って、古いアンプを使い、先にサウンドのキャラ決めをしてからレコーディングに臨んだんです。鳴らす段階で、サウンドに対して落としどころが決まっていたので、昨年ほど煮詰まらずに行ったという感じですね。楽器を変えて同じ曲を録るみたいなことをよくやるんですけど、今回はテイクもたくさん録れて、けっこう選べましたし。
──今回もスタジオには、12時〜20時で?
マツキ:13時〜20時ぐらい。諦めがつくから効率がいいんですよ、時間来たから帰ろうって。
──その期間内で、みなさんの意識の摺り合わせもしていくわけですよね?
マツキ:このバンドのこの音にしたいというのがあまりないので、とりあえずこんな感じでって中村さん含めてイメージを摺り合わせて行きます。あとはやってみて良ければそれでよいという感じなんです。それが楽曲が呼んでいる音ですから。
──中村さんは、ゆらゆら帝国やBORISなどを手がけてますが、その感じとSCOOBIE DOは違いますよね?
マツキ:そうなんです。だから、『何度も恋をする』って爽やかでピースミュージックっぽくない楽曲だと思うんです。だけど、こういう爽やかで歌謡なものがピースミュージックから生まれるというのが俺は面白いと思うんですよ、これは新しいですよって中村さんに言い続けたら乗ってきて...。
──染め上げた感じですね。
マツキ:それで、マスタリングまで粘ってくれたりして、一度マスタリングが終わって完成ってなったんですけど、翌日電話がかかってきて、「もう一度だけ試させて。もうちょっとマスタリングをやってみたい」って。やりきった感があります。
──中村さんのほうがこだわり出しちゃったというか...。
マツキ:あれ?って(笑)。でも、出来上がってすぐってあまり聴かなくなってしまうんですけど、今回は割と聴いてます。
──ところで、『バンドワゴン・ア・ゴーゴー』は、頂いた資料にはチャンプ号(SCOOBIE DOの機材車)で津々浦々した全国のおいしいものが書かれていまして、MOBYさんのtwitterでは毎日のように食べ物の写真が載ってますし、けっこう食べ歩きをされるんですか?
MOBY:ツアーの時は、スケジュールの行程を崩さない程度に行きますね。
──全国でこの店のこれがおいしいなど、どこがお薦めとかあります?
マツキ:どこの街もおいしいものはたくさんありますからねぇ。街で言えば札幌が一番好きです。ラーメンやスープカレー、ジンギスカン、魚介類もおいしいし、人が良いですね。土地が広いというのもありますけど、すごいのんびりしている。そういうのが好きなんですよ。東北はMOBYが詳しいです。
MOBY:青森に煮干しで出汁をとっているラーメンがあって、すごく魚臭いんですけどおいしいんです。煮干しの袋を開けた時のニオイがラーメンからするんですけど(笑)。それと、名古屋の味仙という中華屋はバンドの人たちはけっこう行きますね。四国だと高知は、かつおのたたきとか豪快でおいしいものがある。福岡もおいしいものがたくさんありますね。札幌と福岡を嫌いな人はいないですよ。
──でも、それだけ全国各地に行かれていると、1年のうちのほとんどは家にいないんじゃないんですか?
マツキ:年間で日本を何周かはしていますからね。3分の1ぐらいは家にいませんね。
──今回も8月から年末までビッシリとツアーが決まっていて、1年があっという間に過ぎそうですが、これだけライブやツアーをやって、よく曲が作れますね。
マツキ:曲は日常生活の一部みたいな感じで、時間があったらギターを触ってなんとなく断片だけでも作ってるような感じなんです。常に曲を作るという気持ちでいるというのが自分には大事で、そうするといつか出来るんです。すでに次の曲もいろいろ作ってはいるんですけど、なかなかできないですね。このアルバムに入らなかった曲も何曲かあるし、これから作る曲もあるし。自分の気持ちの貯金は増やしていこうと思っています。
──最後の曲が『イキガイ』だったので、次はこんな感じになっていくのかなという思いもありつつ...。創作欲求は常にあります?
マツキ:CDや昔のレコードを聴くのが好きなんです。そうするといろいろと発見があって、最近はその中にちょっとでも俺が好きなものってないかなって思って探して聴いているから、出会えた時に感動があるんです。こういう曲があるんだって。それで、じゃあ俺ももっと良いって思われる曲を作りたいって思いますし、それができた時の感動を味わいたいんです。曲を聴いて味わった感動が自分のツボの部分だと思うんですけど、そのツボをもっと探りたい。それで自分が良いなと思う曲ができた時ってすごく嬉しいし、それを聴いてくれた人も同じように感動してくれればもっと嬉しい。そういうことの繰り返しのような気がしています。お客さんから、こういうものを聴きたいというのもあるし、その期待に応えようと思っているけれど、需要の部分だけで曲を作るのは嫌だなと思っています。考えてみるとそうやって作った曲ってないんですよ。メジャー時代も含めて。自分が納得した曲しか結局やってなかったかな。それもバンドの性なのかという感じもしています。
──では、メジャーを離れたりして、今はさらにやりやすくなった感じってありますか?
マツキ:メジャーはリリースのレールにある程度乗らないといけないし、こういう曲を作らないと...というのもあるんです。でも、自分としては良いと思ったものだけを出し続けていくのがベストだと思うから、そういう意味ではリリースが1年に1枚というのはやりやすいと言えばやりやすいですね。結局は自分で判断していけるから、今はすごく良い形で出来ていると思います。今年、何かしらの形でもう1枚出せたらと思っていますし。