Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューメロン記念日 FINAL STAGE"MELON'S NOT DEAD"('10年6月号)

2010.5.03 (mon)
at NAKANO SUNPLAZA

2010.06.01

text by 椎名宗之

場内を埋め尽くした輝かしい緑色の一番星  運命の5月3日から早くもひと月近くが経とうとしているが、未だにメロン記念日が解散したことの実感が湧かない。井伏鱒二の"サヨナラダケガ人生ダ"を生活の信条としている自分が過剰な感傷から逃れるために対象化を避けているのかとも思ったが、どうやらそういうわけでもない。当日は深夜にロフトプラスワンでチーマネ公認オフ会イベントの仕込みがあったので、終演後のメンバーへの挨拶もそこそこに会場を後にした。多分、今後お会いする機会もそうはないだろうと思ったが、不思議と悲しい気持ちにはならなかった。それは今思えば、ひとつのドアが閉まったファイナル・ステージを体感して、新たな別のドアが開いたことを実感できたからなのだろう。  スタッフが一切口を挟むことなく、メンバー自身が熟考したというファイナル・ステージのセットリストは実によく練られたものだった。本編ではハロー!プロジェクト時代の代表曲を前半に、"ロック化計画"の楽曲を後半にそれぞれ配し、この10年の歩みをギュッと凝縮させた構成。ファースト・ライヴ『これが記念日』の時と同様に1曲目を『香水』に据えたのも心憎い。正真正銘、これが最後のライヴということでヲタモダチの気合いはいつも以上に漲っていたが、悲壮感はまるでない。それはステージ上も同じで、メンバーの言動からこれがメロン記念日の終幕であるという気負いは感じられなかった。斉藤 瞳はリーダーとして威風堂々の佇まいだし、村田めぐみはDVD収録があったにも関わらず何度も噛み様を降臨させるし、大谷雅恵はのっけから"DOSUKEBE!"を連呼するなど舌好調だし、柴田あゆみは遺憾なくすべり芸を発揮して照明を暗くさせるし、一事が万事いつも通りの昂揚感に満ちたライヴなのであった。"最後までメロンらしく明るく楽しいライヴにしよう"という意識がメンバー間にあったからだろうが、"ホントにこれで最後なんだろうか?"とライヴ中に何度も思ったくらいの清々しさ、賑々しさで、ウェットな情感は皆無。アンコールの『甘いあなたの味』で巨大スクリーンに映る10年前のPVを背に唄う4人の姿に感慨はあっても感涙はしなかったし、セットリストに組み込まれていたら泣くかもしれないと思っていた『サクラ色の約束』も純粋に歌の良さを堪能するだけだった。『ALWAYS LOVE YOU』を披露する前に村田が涙ながらにMCをした時と、ダブル・アンコールの『ENDLESS YOUTH』でヲダモダチの有志が仕掛けたサイリウム演出(メンバーには内緒で『ENDLESS YOUTH』の時に緑のサイリウムを点灯させて全員で合唱しようという事前の呼び掛けがあった)にはさすがにウルッと来たが、泪橋は決壊しなかった。歌が終わり、心中に去来したのは爽快感しかなかった。
 4人がステージを去り、スクリーンには過去のツアーのクレジットが映し出される。最後に映ったのは、4人の手書きによるラスト・メッセージ。
 「たくさんの出会い、想い出、幸せを...ありがとう!!」(斉藤 瞳)
 「この絆は、一生私の原動力。ずっと、これからもありがとう」(村田めぐみ)
 「みんなに願うこと。いつまでも夢を大切に」(大谷雅恵)
 「みんなとの出逢いは私の宝物。ありがとう」(柴田あゆみ)

 それでもメロン・コールは一向に鳴り止まなかったが、客電も点いたのでこれでさすがに終演だと思った。...だが、さにあらず。「このままじゃ終われないよ!」という斉藤の声が轟き、聴こえてきたのは『This is 運命』のイントロ。そう、まさかのトリプル・アンコールが用意されていたのである。関係者用に配布されていたセットリストにもそれは明記されていなかったので、このオッタマゲーションな演出には度肝を抜かれた。最後の最後の最後の最後までエンターテイメント精神を出し惜しみせず発揮するメロン記念日らしい終幕だったと思う。
 森羅万象、物事の始まりは終結に向かう運命にある。であるならば、終焉は何かの始まりであるとも言える。ひとつの記念日が終わったら、自分だけの新たな記念日をまたこしらえればいい。でも、メロン記念日というアニバーサリーだけはずっと永久欠番だ。メンバー、スタッフ、そしてヲタモダチとで10年間大切に育み続けた代替不可な記念日なのだから。愛に溢れた物語の末席に携われた幸運に感謝。ありがとう、そしてしばしの間、さようなら。


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