ハッとさせる部分と聴かせる部分のバランス
──今回はどれぐらいの期間でアルバム制作をしているんですか?
中村:期間で言ったら、昨年の『VAMPIRE』のツアー(“VAMPIRE EMPIRE TOUR 08/09”)が終わってすぐくらいに『Black Market Blues』と『The Revolutionary』の2曲が出来たんです。それを始まりと考えるとそれなりの長さですけど、その間にツアーやライブがあったりとなんだかんだで、実際の作業時間はけっこう少ないです。曲を詰め始めたのが昨年の10月ぐらいで、11月にはレコーディングして、録り終わったのは12月の頭ぐらい。けっこう詰め詰めですね。短期間で集中して作った感じがします。
──ツアー行ってスタジオ入って、ライブやってまたスタジオ入ってみたいな?
中村:10月と11月はほとんどライブを入れてなくて、曲を詰めてばかりでした。それしかやってなかったです。
──今回のアルバムは10曲ですけど、それ以外にも出来ていたんですか?
中村:いえ、今回は最初に10曲って決めて絞ってやってました。それぐらい時間がなかったんです。前までだったら十何曲を詰めて、そこから選ぶという感じだったんですけど、今回は先に選んでから詰めていくという感じで。そういう集中した感じでした。
──こちらからすると、そこまで忙しくてよく10曲も作れたなという気持ちのほうが大きいですが…。
中村:僕も作業に入る前の9月とか10月ぐらいは、けっこうピンチだなって思ってました(笑)。本当に出来るかなって思っていたけど、良くしていく段階でこれはいいぞいいぞって。出来上がっていく中で、いけそうだなという感じにはなっていきました。
──いけそうだなっていう時期になると、バンド内が盛り上がっていく感じってあるんですか?
中村:パッとわかる感じで盛り上がるわけではないんですけど、どうなんですかね…よくわからないです(笑)。
──先ほどの話に戻ってしまいますが、このアルバムの中で一番最初に出来た曲というのが、『Black Market Blues』と『The Revolutionary』になるんですか?
中村:そうなんですけど、実を言うとすごい昔の曲を引っぱりだして、改めて作り直したというのが2曲入っているんです。それが『Finder』と『Invitation』。『Invitation』はインディーズの2006年ぐらいの頃に出来た曲で、『Revolutionary』を作るタイミングで「アルバムに入れられそうな昔の曲ないかな」ってなった時に、誰かが「これとかいけるんじゃないの?」って昔のデモが入ったCD-Rを再生して、「やろうよ」ってなったんです。アレンジも当時はボツになったけど、今聴くとかっこいいじゃんって。ちょこちょこ変えましたけど、ほとんどそのままになっています。『Finder』は、今まで出したアルバムの曲を選ぶ時に毎回候補に入っていたけど、毎回何らかの理由で外されていて、もうそろそろ入れようって。もうそろそろ入れようって毎回言っていたんですけど(笑)、今回はやっと入った。
──それも2006年ぐらい?
中村:これはもっと前で2005年ぐらいですね。バンドが始まってちょっとしてぐらいの時の。聴いた時のインパクトがすごいというか、すさまじいキャラをしている曲なので、毎回入れたいとみんな思っていたんですけどなかなか入れることが出来なくて、今回は念願叶ってようやく入りました。
──『Finder』は、すごく昭和歌謡みたいな雰囲気を持っていて、サウンドがコミカルで面白い曲ですよね。
中村:面白いというか変な曲というか…。今回のアルバムはかなり真面目な曲というか、シリアスめの曲が多いと思うんですけど、その中で変な部分をかなり担っていると思っています。これは変な曲担当なんです(笑)。僕の解釈ですけど…。
──どんどん転調していきますからね。
中村:意味のない転調が入ってきますよね(笑)。途中“ここで転調するか?”っていう、そこを聴くといつもおかしいなって思います。それがこの曲のアイデンティティーというか、それも含めて良い曲ですね。
──ベースのメロディーがGSっぽくないですか?
中村:なるほど。でも、GSは全然聴いてないんですよ。
──そうなんですか。あの途中でベースの音だけになるフレーズの辺りなんですけど。
中村:あまりやらないフレーズではありますよね。たしかおととしの合宿で曲を作っていた時にこの曲も演奏したんですけど、その時にそのフレーズがパッと出てきたような気がします。その時は酔っぱらいながら曲を詰めていたので、酔いどれフレーズなんだと思います(笑)。
──酔った自分が気持ち良くなれるフレーズだと(笑)。『Finder』のアレンジは、昔から変わっているんですか?
中村:けっこう変わってます。ああでもないこうでもないって。前半はけっこう当時のままだったりしますけど、後半になるとエセジャズっぽいセクション…スウィングしている感じの部分があるんですけど、その辺から後ろのほうは毎回アルバムに入れる作業の中でけっこう違ったりして。これまでの作業の中で、後半のアレンジがさっぱり決まらなかったんです。今回途中から速くなりますけど、わかりやすくエクストリームみたいなアレンジにしちゃおうよっていうことになって、やってみたら「最高だ、これは! 本当にわけがわからない!」って(笑)。最後の最後ですごい良い曲になるんですけど、それがちょっと腹立つけど、いい! ってことになって。
──曲の中で、こうやったら聴いた人が驚くんじゃないかとか、ハッとさせられるんじゃないかとかみたいなものって意識していたりするんですか?
中村:あります。それだけではないですけど、今回のアルバムはハッとする部分プラス良い曲だなっていうのがあって、そういうバランスがすごい良いっていう感じがします。ハッとさせる、ビックリさせるという部分では『命ノゼンマイ』みたいなものもあったりして、個人的にはですけど、今回はビックリさせる部分と聴かせる部分とが良いバランスで出来ていると思います。
──最初の話に戻してしまいますけど、やはり自分達だけでやったのは大きいと思います?
中村:まぁわからないです。でも、ないこともないかもしれません。