
ここ最近、どういうわけだかアコースティックの音色に反応してしまうようになった。前は、もう少しギターがギャーンって鳴って、ベースがうなりをあげ、ドラムがドコドコと轟音を響かせて...というバンドが好きだったのに、年のせいにはしたくないけれど年々アコースティックに心惹かれている。ということをうすうす気付き始めていた時に、GOING UNDER GROUNDのドラマー・河野丈洋のソロ・ミニアルバム『CRAWL』が届けられた。ドラムの他にギター、ピアノ、バイオリンを演奏するマルチプレイヤーとして活躍する彼は、本作を全てセルフ・プロデュースで制作しているのだそう。
1曲目の『わかりあえたら』は、アコースティック・ギター1本で歌われる。アコースティック・ギターそのままの温かい木のぬくもりを感じるこの曲。"君とはわかりあえない"なんて、とても悲しいフレーズから入る曲だが、とても心を揺さぶられる曲でもある。男の人の気持ちはわからないけれど、恋愛をしている時の男の人もこうやって悩んだり、ちょっと悲しい気持ちになったり、一生懸命いろいろと考えているんだなって思う。より深い繋がりを求められていると感じる最後のフレーズが、ちょっと泣ける。たぶんこんな言葉を言ってもらえたら、嬉しくて一生過ごすことができるかもしれない。そして、2曲目の『点線』。鍵盤やドラム、ベースなどの音が加わり、『わかりあえたら』に比べてサウンドの幅が広がっている。ここですでに、マルチプレイヤーの河野が垣間見れるだろう。少し皮肉を交えたフレーズも見受けられるが、それでも前を向いて進んで行きたいという真っ直ぐなまでの心情が綴られている歌詞。曲が終わりに近づくにつれて、ストリングスも加わり、より世界観が広がる曲だ。3曲目の『Hold on』は、新婚カップルをコミカルに描いたストーリー。サウンドも、ストーリーも歌い方もどこか素っ頓狂な感じが、また違った風景を見せてくれるだろう。どこかアメリカナイズされたコメディー映画のような雰囲気に、クスリと笑える要素がふんだんに折り込まれている。自分なりの映像を頭に描きながら聴くと、より楽しいはずだ。
そして、この作品の最後を飾るのは、『上尾市立南中学校校歌』。母校なんだろうということは想像ができるが、なぜに校歌を入れてみようと思ったのかは私にはわからない。すでに中学校の時の校歌がどんなだったかも忘れているぐらいだから。中学校の校歌らしくピアノの弾き語りというのは、自分の中学時代の記憶がフラッシュバックしてくるようであり、あの時代を思い出して、どこかむずがゆくなった。
しかし、校歌は別としても、総じて温かなラブ・ソングであるように思う。トゲがあるひねくれた言葉を吐くこともあるけれど、そういう気持ちも含めて、人を愛する気持ちを歌っているのではないだろうか。『点線』の歌詞ではないが、この年齢にもなると"ただガキみたいに愛とか言っていりゃいい"わけではないのだ。「好き」や「愛してる」だけではどうしようもできない現実が見えてくるのだ。それをストレートな言葉で教えてくれているようにも聞こえる。そして、やはりアコースティックの音色は温かかった。心にスッと染みこんでくるようだ。
この号が出る時はクリスマスはとっくに終わってしまっているが、2009年のクリスマスに、河野丈洋から届けられた最高のプレゼントではないだろうか。(text:やまだともこ)