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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】カサハラテツロー(2009年5月号)-設定が緻密に出来上がっている物語が、好きなんです

設定が緻密に出来上がっている物語が、好きなんです

2009.05.01

『RIDEBACK』の最後は泣きながら描きました

──話は前後しますけど、カサハラさんはそもそも子供向けの漫画を描かれていた訳じゃないですか。

0904_kt_edison.jpgカサハラ:さかのぼると大学に入る前後くらいから、漫画家になりたいとは漠然と思っていたんです。それで出版社に持ち込みをしていたんですけど、「キミ、古いよ」と散々言われまして。まあ確かに自分は古い漫画が好きだし、それもしょうがないかと思っていたんですよ。ところがその後、学研でハガキ整理のバイトをやっていたときに「君、美大生なんでしょ。じゃあ漫画描いてみてよ」と言われて。それで何となく描き始めたのが最初ですね。すると不思議なことに、子供向けの世界では「古い漫画」がアリだったんですよ。そうこうしているウチに柳田理科雄さん原作の『うさぎ山のひみつ』っていう話を描いたんですけど、それがきっかけで柳田さんに紹介して頂いて始まったのが『空想科学エジソン』(00年〜02年)だったんです。ただそれが諸般の事情や……、まあぶっちゃけ人気が無かったということで打ち切りになってしまいまして。それでどうしようかと思っていたところで『IKKI』の担当さんに声をかけて頂いて始まったのが『RIDEBACK』だったんです。

──初めての大人向け作品で、原作から組み立てるのも初めてだった。

カサハラ:だからね、ハジケたんですよ。やりたいコトは全部やってやれと。『空想科学エジソン』のときに「いつ打ち切られるか分からない」という月刊誌のシビアさを勉強したので、それなら初めから風呂敷を広げて何でも詰め込んじゃえばいいじゃん! っていう思考回路で作ったんですよ。とにかく風呂敷をドーンと広げた後に、伸びそうな部分だけ様子を見ながら伸ばしていく。最初から起承転結をつけてしっかりやってる作家さんからしたら、信じられないですよね。でもね、設定さえある程度できていれば、こういうやり方でもどうにかなっちゃうんですよ。

──ちなみに、そもそも学生運動に興味がなかったそうですが、本作を描くためにいろいろと調べてみていかがでしたか?

カサハラ:あれはあれでSFですよね(笑)。未知の世界というか、時代劇に近い。独特の言葉とかキャラクターがいっぱい出てきて、面白いんですよ。あと最近、あの時代の熱狂とはまた違うんだけど、何となくああいう感じのものって増えてきてますよね。サウンドデモとか。
 ちょっとズレますけど『月下の棋士』が連載していた頃に、将棋がガーッと来たじゃないですか。羽生名人なんて、それこそ今のイチロー並の扱いでしたよね、あの頃は。なんかね、日本ってそういうことがあるんですよ。今だとゴルフなんかがそうだと思うんですけど、シンボリックな人がいると急に火が着く。それでもし、そのシンボルがすごくカワイイ女の子だったりしたら、もっともっと行けるんだろうなって思う。琳はまさにそういう存在なんですよね。

──陳腐な表現をすればカリスマですね。

カサハラ:そう、まさに最初「カリスマ」っていう言葉を使おうと思ったら、担当編集に「陳腐ですね」って言われたんです(笑)。それで学生運動のことを調べてたら「イコン」って言葉があったから、じゃあこれで! っていう。本当に手探りだったけど、でも楽しんでやってましたよ。

──そして連載が終了した訳ですが、やり遂げた感想はやはり10巻の後書きに尽きますか?

カサハラ:いや、本当はあの後書きもね、ロボットへの熱い思いを書こうかと思ったんですよ。そもそも僕はロボットが描きたかった訳だし、主人公はやさぐれた少年でもおっさんでも良かったんだし。でも(主人公は)小山田真希と巨摩郡(『バリバリ伝説』)のハネ髪とナウシカを組み合わせれば何とかなるよ、っていう考えで始めたら、割と何ともならずに作者である僕が振り回されてしまったんですよね(笑)。

──かなり扱いにくい主人公だったようですね。

カサハラ:物語の中で、学生運動が最高に盛り上がって国会の前でもみくちゃになる場面があるんだけど、それが過ぎ去ってしまったらあれだけ輝いていた彼女は行方が分からなくなってしまいました、というところで終わろうと思っていたんです。でも、そこに辿り着く前にもうちょっと連載が続きそうになったからBMAを出してみて、そうこうしているうちにアニメ化の話が来てまた続けられることになりまして。ところが琳がいなくなっちゃって、じゃあどうしようと思ったんですが、やっぱりロボットが描きたかったからにはドンパチがなくちゃね、っていうことで(琳が)軍隊に入って。それで軍隊に入ったからには『トップガン』だろうと。

──てっきり『フルメタル・ジャケット』だと思いました。

カサハラ:あ、確かにそっちの方が強かったですね。連載中は『フルメタル〜』のDVDを何度も観て、あの感じを身体に染み込ませたりしました。

──なるほど。でも、それだけいろいろな展開をして行って、よく無事に終われましたね。

カサハラ:最後は泣きながら描きました。いやあ……本当に大変だったんですよ。ただいつの時点で話が終わっていたとしても、結局最後に琳が消えていくっていう方向性だけは変わらなかったんです。アメリカ編ではBMAの総攻撃を受けてキーファに攫われた時点で終わるハズだったし。そう、本当は4巻の最後で終わらせるための伏線として、2巻に無理矢理キーファを出したんですよ。そうしたら結局絡む機会が無くなって、キーファの行きどころが無くなっちゃった(笑)。鬼頭莫宏(『ぼくらの』など)さんと飲んだときに「あのキーファは、やっちゃったでしょ」って言われました。「分かってないなあ、計算通りだよ」って強がりましたけどね(笑)。

──キーファと言えば、あの変装シーンはルパンですよね?

カサハラ:その通りです。実はあれ、ライドバックよりオーバーテクノロジーです(笑)。ただ、あのシーンでキーファの銀髪がなびくかなびかないかで、結構編集さんと揉めたんですよ。「それはあり得ないですよ、カサハラさん」って言われて。でもね、漫画ですから。漫画の世界では、頑張ればマッチ棒で空を飛ぶことだってできるんです!

──そうですね!

カサハラ:結局あのシーンに関する苦情は1つも寄せられませんでしたね。漫画大国日本の偉大さを実感しました(笑)。で、話は戻るんですがアメリカ編の後、しょうこ編で終わるという選択肢もあったんですよ。むしろあの時点で僕のなかの『RIDEBACK』は終わっていて、アニメに喩えればエンディングのスタッフロールの背景でしょうこ編が流れている、くらいの感覚だったんです。でも編集さんに「最後にちょっと琳を出してくれればそれで良いですよ」って言われて軽い気持ちで登場させてみたら、そこから更に3巻も続いてしまった(笑)。いやあ、本当に琳には振り回されましたよ。

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