Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】カサハラテツロー(2009年5月号)-設定が緻密に出来上がっている物語が、好きなんです

設定が緻密に出来上がっている物語が、好きなんです

2009.05.01

エンターテインメントにルールなんて無いんです

──ちなみに『RIDEBACK』って、よく人が死にますよね。

カサハラ:『IKKI』っていう雑誌で書いている以上、そうなっちゃうんですよ。作家魂……と言うほど崇高なものじゃないんですけど、「こいつには負けたくない!」という対抗心ですね。(『IKKI』に連載されている)『ぼくらの』も『フリージア』も『ドロヘドロ』も……、とにかく人が死ぬじゃないですか。『IKKI』って、よく作家同士が集まって飲み会をやっているんですけど、その場でそういう話になるんですよ。そうするとつい対抗心が芽生えてきちゃう。

──作家さん同士の交流が頻繁な雑誌って、珍しいのでは?

カサハラ:誤解を招くかもしれないけど、同じ感覚の作家がひとつの雑誌に集まっているという意味で同人誌みたいなノリはありますね。まあ、そのへんは集めた張本人である編集長の趣味が如実に出ているんでしょうけど、とにかくそういうところが、僕にとってとても居心地の良い雑誌でした。
 あ、でも昨今の同人誌って、もしかしたら僕の定義よりもっと商業的というかシビアというか、例えば「この漫画でヌいて欲しい!」っていう購買意欲をそそるための、ハッキリした目的意識をもって制作された物が多いかもしれませんけどね。

──そういった昨今の風潮についてはどう思います?

カサハラ:これは同人誌に限らずなんですが、もっと多様性があっても良いと思う。最近「こうでなくちゃいけない」みたいなルールがいつの間にかできている気がするんですよ。例えば「エンターテインメントはこうである」ということを突き詰めていった結果、ハリウッド映画が爆発とキスシーンだらけになっちゃった、みたいな。もちろん昔はそういうものも好きだったけど、そんなのばっかりじゃない方が面白いし、そうじゃなくても面白いものはいっぱいあるんです。
 例えば夏目漱石だって、ポケットから取り出した先生の遺書がそれまでの2章を遥かにしのぐボリュームだったりとか(『こころ』)、そういう訳の分からないことを普通にやっていたんですよ。それで良いんです。

──むしろカサハラさんはそういうものを作っていきたい?

カサハラ:そうですね。そして、そういうものを作る人も、そういうものが好きな人も、この世にもっと居て良いと思う。……すごく文化系な考え方ですけどね(笑)。

──現在『コミックフラッパー』で連載中の『スコペロ』も、そういったカサハラさんの志向性がよく出ていると思います。

カサハラ:あれはね、本当は未来版『坊ちゃん』(夏目漱石)をやるつもりだったんですよ。でも2巻になったら、カプセルボール(作中に登場するスポーツ)がメインのスポ魂ものになっちゃった(笑)。

──では1巻で張られた『坊ちゃん』的な伏線は、今のところ回収予定が無い?

カサハラ:いや、きっとどこか先の方で結びつくハズなんですけどね。ただ担当編集さんが、文平先生(主人公)よりサキちゃん(ヒロイン。女子高生)の方が大好きなんですよ。僕は文平先生が好きなんですけどね。だって、話の展開に困ったらどうにかしてくれるじゃないですか。ああいうキャラって、読者には嫌われるけど作者には好かれるんですよ。例えば水木しげる先生はねずみ男が一番好きだと思うし、水島新司先生は岩鬼が大好きだったと思う。そういうキャラクターを作れるかどうかで、その作品を描き続けられるかどうかが決まるような気がするんですよね。

──それは今後が楽しみです。ちなみにカサハラさんは、今後もSFという枠組みの中で作品を作られていくんでしょうか?

カサハラ:そういうこだわりは無いんですけど、どうせ描くなら舞台はイチから作りたいですね。何となくどこかにある高校のお話……とかではなく、その高校の歴史とか、周辺地域の事情とか、ひいてはその時代の世界情勢まで考えたくなっちゃう。その結果SFになってしまうかもしれないけど、逆に時代劇というやり方もありますし。
 きっとそういう作り方が好きなんだと思います。ストーリーからガッチリ組み立てて描き始めると、急に打ち切られたときにトホホ……ってなりますからね(笑)。それに、しっかり世界が組み立てられていれば、読者の方もその世界の中で自由に遊べるじゃないですか。

──あと個人的には、以前ウェブラジオでも話されていた女性キャラクターの「胸の隙間」にも注目しています。

カサハラ:あれはね、中学生の頃好きだった子が、そこらへんがすごく無防備だったんですよ。だから毎日ね、学校に行くのが楽しかった(笑)。その思い出を今になって蘇らせている訳です。

──あれこそカサハラさんの専売特許だと思いますが。「谷間」じゃなくて「隙間」にフォーカスを合わせた作家さんって、今までいなかったのではないかと。

 そうですかね(笑)。まあ確かに、雑誌でそういう特集されているのも見たことないですね。ただ需要が無いだけだと思うんですけど(笑)。

──いやいや、そんなことないですよ! ……と、話が逸れてしまいましたが、最後に漫画家を目指している皆さんへのメッセージがあったら教えて頂けますか?

 実用的なメッセージなんですけど、担当編集とは仲良くした方が良いですね(笑)。
 まあね、いざ雑誌で連載が始まるとなると担当編集とのやり取りのなかで「描き直しイヤだなあ……」とかいろんなことがあるんですけど、それでもお互いの接点はしっかり持っておく。昨今、いろんな方のブログで「担当編集が気に入らなくて……」みたいな文章を目にするんですけど、あれは悲しいですよね。折角才能があるんだから、エネルギーをそこに割いてしまったらもったいないと思う。かく言う僕も散々そういうことをやって来たんですが、その結果辿り着いた結論が「仲良くしよう」なんです(笑)。そのうえで、作品については好きなことをやれば良いと思いますよ。

6th
ロフトチャンネル
下北沢シェルター30周年
ロフトオリジナルコーヒー
どうぶつ
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻