今年の夏フェス最多出演バンド(9回)となった9mm Parabellum Bulletが、2nd.アルバム『VAMPIRE』をリリースする。歌謡曲、メタル、ポストロックからサーフミュージックまで。アルバムタイトルでもある"VAMPIRE"のように、聴く者の心に噛み付いて離さない強さと破壊力を持った全12曲。また、あのはちゃめちゃでめちゃくちゃに暴れまくるライヴは一度見たら忘れることができないほど、強烈なインパクトを残す。今回はフリーペーパー各紙での2名ずつ対談ということでRooftopでは菅原卓郎(vo.g)と、かみじょうちひろ(ds)、菅原卓郎(vo.g)と滝 善充(g)の対談が行われた。普段は聞くことができない、対談で新たな一面を見ることができるだろう。(text:やまだともこ)
菅原卓郎(vo, g)×かみじょうちひろ(ds)楽曲と発せられる言葉から得られる達成感、詞を書く上での新しいスタイル
──2枚目のアルバム『VAMPIRE』がリリースされますが、“魔の2枚目”という言葉があるように制作の段階でプレッシャーを感じることはありましたか?
菅原:具体的なプレッシャーはそんなに感じていませんでしたが、制作が終わって解放された時にすごく気が楽になっていたので、実は感じていたのかもしれないです(笑)。1枚目を踏まえて、良いものを作ろうというのは常に考えていましたが、まずはCDを聴いた人が驚くものや楽しめるものを作るのが大事だと思っています。
かみじょう:無意識ですけど、徐々に進化していこうとは思ってましたね。
──『VAMPIRE』を1枚通して聴いて、全曲アルバム・タイトルを連想させる曲だと感じましたが、アルバム・タイトルは最初に決まっていたんですか?
菅原:いえ。いつも曲が出揃うぐらいまではアルバム・タイトルを考えられないんです。曲順を決めるぐらいになってようやく…。それで(中村)和彦が「“VAMPIRE”がいいと思う」って。どの曲も個性的ではちゃめちゃな感じなんですけど、9mmらしさで統一されていると思います。
──9mmらしさというのは、ご自身ではどんなところだと思いますか?
かみじょう:80年代〜90年代ぐらいの歌謡曲っぽい、くさいメロディーを聴かせるような感じです。
菅原:めちゃくちゃにやっちゃうところですね。
──『VAMPIRE』はまさに吸血鬼のようでもあり、殺傷能力が高そうな凶器のような雰囲気もありますね。ところで、今回はお2人で作詞をされている曲(『Trigger』と『Faust』)がありますが、これはどういう経緯からですか?
菅原:曲はできていて、最初は僕がテンポよく詞を書いていたんですが、行き詰まってしまったんです。その時に、このままではこの曲たちがアルバムに入らなくなってしまうと、みんなで完成させていこうと言う話になったんです。普段も曲ができてからイメージ会議をしているんですが、『Trigger』はイメージ会議後に、かみじょうくんと2人で話をしながら進めていきました。かみじょうくんの歌詞はシンプルに言いたいことを言うっていうスタイルだったので、段落の進み方とか話の進み方の骨になるところを参考にして僕が書いていきました。
かみじょう:僕が書いた詞を直接使っているわけではなくて、雰囲気的なところですね。今は戦場の詞になってますが、僕が書いていたのはOLの話ですから。この歌詞を読んでそこまでわかってくれる人がいたらなかなかするどいですね。仲良くなれそうな気がします(笑)。
──『Faust』は“知識と権力を得るため、悪魔に魂を売った”という、中世伝説のお話を元に書かれているんですか?
菅原:はい。ちゃんとなぞられている感じの曲になりました。前から『Faust』っていうタイトルの曲があったらいいなとは思っていたんです。イメージ会議の時に、滝がこの曲に持っているイメージを“万里の長城”だと言っていたので、俯瞰で見ているようなイメージにしていったらいいかなと、僕はひたすらイメージを、かみじょうくんも雄大な感じのイメージで書いてきてたので良い部分を足して完成させました。
かみじょう:万里の長城と言われたので、視点を上に向けたような歌詞で意識して、『Trigger』とは気分を変えて真面目に書きましたね。
芯のある言葉
──かみじょうさんは、菅原さんが書く詞を読んでどんなことを感じますか?
かみじょう:暗いなって思います(笑)。
──私は普段菅原さんはどんなことを考えているんだろうなって思いました。
かみじょう:この子の頭は宇宙なので(笑)。
──菅原さんはどんなことを考えながら詞を書いているんですか?
菅原:インディーの時は曲の雰囲気に合う言葉を入れていたんですけど、(いしわたり)淳治さんと作業をし始めた時に、何かしらメッセージがあったり、聴いた人のとっかかりになるものがないとだめだなって感じたんです。自分が好きな歌詞はすごくストーリーがあって、その上ですごく気になる言葉とかグッと来て乗っているものだなって思って、それを書きたいなと今は思っています。
──普段思いつかない言葉が並んでますしね。
菅原:例えばどんな?
──根本的な話になっちゃいますけど“VAMPIRE”とか…。
かみじょう:言われてみれば使わないですね(笑)!!
──だからなのか、現実よりもちょっと離れたところを感じられるという意味で、詞は小説を読んでいるみたいでした。
菅原:そういうふうに書きたいなと思っているんです。発音して気持ちいい言葉が乗っている曲もすごく好きなんですけど、自分がやるんだったら歌う時に発した言葉で達成感を得たいんです。曲も物語っぽい展開があるし、ビートも早い曲が多いし、みんなの演奏が力強いので、そこでイメージの断片にしちゃうと歌が負けちゃうと思うんです。何かしら芯がある言葉にしたいと思ってます。
──ビートが早いという話が出ましたが、今回もドラムの早さは圧巻でしたね。
かみじょう:自分で録ったものを聴いていて、バカだなって思いますよ(笑)。
──『Hide & Seek』とかとんでもないですからね(笑)。
かみじょう:あれはうちのメデューサみたいなやつが…。
菅原:和彦のことですね(笑)。
かみじょう:曲を作る時に、最初はBPM250ぐらいだったんですけど、早くやれば早くやるほど喜んでくれたのでいつのまにかBPM280ぐらいになってしまいました。
菅原:それで、自分で「この曲早くて辛いんだ」って、倒錯した事態になってましたけど。
かみじょう:でもライヴでやると意外と地味に見えるんです(苦笑)。
菅原:一生懸命弾かないといけないので暴れられないんです、早すぎて。僕らがすごく暴れているところを想像するかもしれないですけど、曲の存在感で推していく曲だと思います。
──『Vampiregirl』もリズム隊のサウンドを聴いているだけでもかなり楽しめましたよ。菅原さんから見たリズム隊の方々はどうですか?
菅原:普段スタジオで、演奏の話をしているのを一切見たことがない。それでも一体感があって、彼ら独自の味がある演奏になっているから不思議だなといつも思っています。すごく好きです。
──ライヴ時は、ドラムのプレイを見ていてどうですか?
菅原:ライヴ中にかみじょうくんのところに遊びに行ってます。シンバルが手前にいっぱい並んでいるので、気分が良い時に叩いてますよ。
──叩いている時は気分がいいんだなって思えばいいですか?
菅原:そうですね(笑)。「卓郎、盛り上がっているんだな」って思ってもらえれば。
──かみじょうさんはライヴ中に菅原さんがはちゃめちゃに暴れている姿を見ていてどうですか?
かみじょう:よくやるぜって思いますよ(笑)。あと逆光の中、ダビデ像みたいなシルエットが見えています(笑)。
菅原:デカイからね。
──9mmのあのライヴを初めて見た人にはかなりの衝撃を与えると思いますが、だからこそライヴをやる側もお客さんも次のステージに対して求めるものがどんどん大きくなっていくと思うんです。ライヴ 前にイメージをしてからステージに立ったりはされますか?
菅原:前回よりもいいライヴをしようと毎回思ってます。その前の回がすごく良いライヴだったら、「あれぐらいいけたらいいね」ってやんわり話はしています。あと反省会もよくやるんです。みんなでビデオを見て、ここの繋ぎはあまり良くなかったとか、ここのMCは喋りすぎだとか。…MCはオレだけですけど(笑)。
──あれだけ演奏しながら暴れていて、冷静になる瞬間ってありますか?
菅原:けっこう冷静にやってるつもりですよ。そうじゃない瞬間もありますけど。