2005年の春に、入江兄弟(健/gt、良介/vo.gt)を中心に結成。その年の夏にライブ活動を開始。2006年には結成わずか1年で"FUJI ROCK '06 ROOKIE A GO-GO"ステージに出演。2006年10月に現メンバーの武井優心(ba)、山崎正太郎(dr)が加入し、最強の布陣となる。Veni Vidi Viciousとは、彼らが尊敬するTHE HIVESのアルバムタイトルから付けたもの。今回は満を持してファーストアルバム『IRIE RACKIT』をリリース!!
ロック、ガレージ、パンク、オルタナティブのサウンドを消化し独自の色に染めて放出する。楽曲も人柄も、まだまだ荒削りな部分もたくさんあるが、今後の彼らにはたくさんの明るい未来が待ち受けているように思う。
Veni Vidi Vicious、初のインタビューはRooftopが頂きました。(interview:やまだともこ)
"IRIE"の元に集まった Veni Vidi Vicious
──単独作品では初めて全国流通となりますが、自信を持って「これが Veni Vidi Viciousです」と言える作品になりましたね。
良介:もちろんです。ただひとつ心残りなのは"マリファナ"という詞が入ってたりするので、親戚のおばあちゃんに買ってもらう時どうかなと思いましたけど(苦笑)。
──『IRIE RACKIT』というタイトルの意味は?
良介:僕の名字が入江(IRIE)で、ジャマイカ語の"IRIE"という単語は"楽しい"という意味を持っているのでかけてみました。"IRIE RACKIT"(アイリー・ラキット)となると"どんちゃん騒ぎ"とか"賑やかなお祭り"みたいな言葉になるんです。あと、もともとは僕と健で結成していて、入江の元に集まったメンバーなので"IRIE"は入れたかったんです。
──武井さんと山崎さんはどうやってバンドに入ったんですか?
武井:僕は山崎と別のバンドをやっていたんですが、Veni Vidi Viciousの一番のファンだったんです。
健:ヒュー♪
武井:最初見た時に「キター!!」って思いました。
──どこに魅力を感じました?
山崎:ボーカルがすごいなって。才能があるな、一緒にやりたいなって思ったんです。
──『IRIE RACKIT』が出来上がって、率直な感想はどうですか?
健:レコーディングはほぼ一発録りでしたし、賑やかだなと思います。途中武井が失踪したりもしましたけど(苦笑)。
武井:それ言うの(笑)? 2週間ぐらいで戻ってきましたけどね。
良介:僕は次が早く作りたいです。
武井:次出したいっていうのは同じ。まだ僕らの一面しか見せてないから、違う部分も出していきたいんです。今回はファーストアルバムだし、パンク出身でガチャガチャしているのが好きなので、激しい感じでやりたかったんです。
山崎:僕はあまりが実感なくて、CDショップに並んでようやく実感が湧くと思います。レコーディングはすごく楽しかったですよ。
──結成して3年が経ちましたが、1年目にしてFUJI ROCK '06に出演されたり、バンドの環境は変わりました?
武井:仲が良いバンドがすごく増えました。
──どんなバンドと仲が良いですか?
良介:ザ・ミイラズ、ジョンズゲリラは特に。ザ・ミイラズとは昨年末にスプリット『NEW ROCK E.P』も出してます。
初インタビューの素直な感想
──『IRIE RACKIT』はほとんどの曲が入江兄弟で作詞をされているんですね。
良介:はい。曲になると、僕が作ってきてもスタジオで合わせるとだいぶ変わるんです。バンドってこういうものですよね。ボーカルや曲を持ってきた人に全ての決定権があるバンドもいますけど、僕1人では何もできません。
──ということは、もともとはギターのフレーズのみを持って行く感じですか?
良介:ほぼそうです。歌はスタジオでベースとドラムが付いてから何語かわからないもので歌うんですが、曲のイメージはできているので言葉を付けていくだけです。でも、言葉を付けないでも伝わるものにも憧れてます。
──『Chaiyya Chaiyya』は歌詞が一番短いわりに、曲はどれよりも長い曲になってますよね。
良介:それ以上歌詞が思い浮かばなかったというのもあるんですが(苦笑)、たくさんの言葉を乗せなくても伝えられる気がしたんです。これは唯一サイケデリックな感じになりました。
武井:そうやってちゃんと伝わるかどうかが心配で"妖艶"っていうフレーズを入れちゃってますけどね(苦笑)。
──今回、プロデューサーさんは『cosmo』のイントロにこだわっていると伺っていますが。
武井:このイントロのメロディー、すごく好きなんですよ。どのライブでもほとんどやってます。
良介:いつもこの曲やりたいって言うよね。『cosmo』はこのメンバーになって最初にできた曲なんです。イントロのギターはもうちょっと軽い音だったんですが、プロデューサーさんが重量感のある音にしてくれたんです。最後のサビにもこだわってます。一番キャッチーだから、気に入って貰えると嬉しいです。
──『Marihuana Monkey』はアナログな音作りをしているように聴こえましたが、録り方を変えているんですか?
武井:録り方は全部一緒なんですが、ミックスで変えてるんです。
良介:僕らの場合、本当は一発録りが向いているんですけど、スタジオの広さの関係で4人一緒には出来ないんです。歌だけ後で、ベーシックトラックは一発ですね。歌は、コーラスも8チャンネルぐらい使っているし、一発では録れないんですよ。
──タイトルからかなり衝撃を受けた曲ではありましたが...。
良介:マリファナを吸ってるヤツとか寒いなって思うんですよ。ただ、マリファナを吸ってるヤツも嫌いだけど、あからさまに否定するヤツも嫌い。
──だから、"だって興味ないし"とか、"だってくだらないじゃん"というフレーズが出てくるんですね。
良介:そうなんです。...今気づいたんですけど、ライブは30分ぐらいだし、1曲ごとの解説をメンバーが聞いているところで話す機会ってなかなかないんで、こういう話せる場所があって良かったです(笑)。
武井:初インタビューだしね。インタビューってこういう感じなんだね。
──曲について話す機会ってないんですか? レコーディングでも?
良介:なんとなく雰囲気は伝えますけど。
山崎:あとは、勝手に解釈をしてます。
──勝手に解釈となると、違う方向に向かう可能性もありますよね?
良介:そういうこともありますね(苦笑)。でも、そこまでずれることはないですよ。
──なるほど。次の曲『Juliet』はドラムに勢いがありましたね。
山崎:この曲、早いんですよ。でも練習は大嫌いなので一発勝負で。
良介:彼は練習が嫌いなんです。もうちょっと練習してくれたらいいのにって思いますけど...。
山崎:...。
──ここで仲間割れはしないでくださいね(苦笑)。次の『MOTOWN』はどうでしたか?
良介:夢をよく見るんです。その夢で見たものを詞にすることが多いですね。
武井:この詞、もっと長かったんですけど、曲が長くなりすぎちゃったんで半分カットしたんです。カットする前の詞を読むと、よりわかりやすかったんですけどね。
良介:夢でイカれた街に一人で行ったんです。最初はこの街が全然つまらなかったのに、どんどん楽しくなっていくんですよ。その街にバンドが演奏をしに来るんですけど、そのバンドは自分なんです。それでイカれた街でどんどん楽しくなっていくんですけど、楽しい側になったら最初の僕みたいな子が街を訪れてくるという話。
武井:人間は常に同じことを繰り返すものですからね。
良介:いきなり大きな話になったね(笑)。
自分は自分でありたい
──『DOMINO』は健さんが作詞をされた曲になりますが。
山崎:俺と武井がVeniのファンになるきっかけの曲です。
良介:一番古い曲で、アニキと2人のときからやっていた曲です。ガレージが好きですって感じがしますよね。そこはすごく魅力的です。そういう面もあるというのを知ってもらいたかったんです。
──『YEAH TEAH YEAH』はシーンが一番イメージしやすい曲でしたよ。
武井:歌詞が最高ですよね。
良介:『ブルース・ブラザース』っていう映画をイメージして書きました。
──映画からイメージして曲を作ることは多いんですか?
良介:そういうわけではないです。たまたま『ブルース・ブラザース』を見たら夢に出てきて、そこから話を膨らませました。あんまり夢の話ばかりするのも良くないですね(笑)。
──『MOTOWN』に近い雰囲気を持った曲すね。
良介:夢の話を膨らませて書くことが多いので、そういうのが多くなるんですよ。
武井:聴いている側は、物語みたいでおもしろいですけどね。
良介:これまでは歌詞を聴き取れないって言われることが多かったので、CDが出せるのは嬉しいですね。
──で、最後の『Time is Over』は、これまでの楽曲のイメージを完全に覆してくれましたね。アコギでスローの曲が入っているとは思いませんでした。
武井:こういうのもあるよと。
良介:どうしてもこの曲を入れたかったんですけど、時間がなくてバンドでは録れなかったんです。だからアコギで一発録り。他の曲に劣らず、存在感のある曲になりました。
武井:ライブではバンドバージョンでやっているので、次の作品ではバンドで演奏したものを入れたいです。
良介:これは、オヤジに向けた曲なんですよ。オヤジの体調がすごく悪い時があって、その時に声が出なくなったオヤジに教えてもらったことです。
山崎:恋愛の歌と勘違いされがちですけど。
──恋愛の歌だと思ってました。
良介:全然恋愛とかじゃないです。それは声を大にして言いたいです。
──アルバムを聴く前は英語で歌っているバンドだと思っていましたが、完全に日本詞なんですね。
良介:日本語でしっかり伝わって欲しいですね。日本で日本人に向けてやっているので。聴くのはほぼ洋楽ですけど、自分たちは自分たちでありたいと思います。THE HIVESとか好きですけど、日本語で歌っていたら嫌ですもん(笑)。
かっこわるくてもそのままを見てもらいたい
──ステージ上では曲が終わるごとにメンバー同士で話してるように見受けられましたが、あれは何を話しているんですか?
良介:実はいつもセットリストを決めてないんです。これじゃダメだなと思うんですが、その時の雰囲気とか勢いでやりたいというところがあって、曲が終わるごとに次の曲を決めているんです。
──確かに、ライブの雰囲気はうまく掴んで演奏されてますね。こういう雰囲気を持った感じだと海外でもやってみたいという願望はありますか?
武井:はい。日本でやっていても海外のお客さんから反応が良いので、飛び込んでみたら気持ちよさそうな気がします。
──ライブで盛り上がりそうな曲も多いですしね。バンドとしては、今後どうなっていきたいですか?
良介:もっと多くの人に見てもらいたい。だからこそでっかいところでやれるようになりたい。
武井:支持されたいね。今は、敵が多いので(苦笑)。
──自分たちの魅力はどういうところだと思いますか?
山崎:他人に媚びないところですかね。
武井:メンバー1人でも欠けたら今の音にはならないと思うので、この4人の雰囲気を大事にしていきたいです。空間が共有できれば。あとは、良介のワールドを堪能してくれたら。
良介:僕ら、「生意気だからダメだ」って大人の方々から今までに何度も言われてきたんです。でも、今の事務所の方と出会えて、少しは変われたかな。僕らのことをすごく好きだと思ってくれて、期待に応えたいと思いますよ。CDも自分たちだけでは出せないですからね。拾い上げてくれたことに感謝してます。僕らの魅力は...。
──媚びないと言われてましたけど、本当に素のままの感じがしますね。
良介:パンクとかロックンロールって生き様ですからね。そのままを見てもらいたいです。かっこわるいところを見せてもいいと思ってますから。