Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューNo Regret Life('08年08月号)

この気持ちは何だろう?
心を揺さぶる『Can't Explain』がいよいよリリース!!

2008.08.01

こんなに長い間リリースがなかったことってNo Regret Lifeにしては珍しい。コンスタントにリリースして、目が回るぐらいライブをやっていたのに、ライブは変わらずに各地を飛び回っていたものの、今回のシングルは1年半ぶりのリリースとなった。『Can't Explain』"説明しようがない"というタイトルを持つ今作は、誰もが奥底にしまい込んでいる説明できないあの感じを表現しながらも、ちゃんと前に進もうとしている様子。ただただ前に向かおうという曲ではなく、藻掻き苦しんだからこそ這い上がってまた進むんだという詞は共感が持てる。圧倒的な演奏力は今回も健在で、今まで纏いすぎていた鎧を一度脱ぎ捨てることで、よりタイトでダイナミックなサウンドへと進化した。ボーカルの小田和奏は「世界中の人を感動させるパワーが音楽にはある」と言っていたが、正面切ってこの言葉を言える彼なら、きっと何かを起こしてくれそうな予感がする。長い期間を経て気持ちのリスタートをしたノーリグがどのように次のステージへ向かっていくのかが楽しみである。(interview:やまだともこ)

バンドが次のステップに進むための1年半

──今まではコンスタントにリリースをしているイメージがありましたが、前回のアルバム『Allegro』が昨年の3月でしたからけっこう時間が空きましたね。この1年半はどんな感じだったんですか?

小田:ずっと曲は書いていたんですよ。『Allegro』が、その前の作品から比べるとバンドの飛躍感があったというか、バンドのモチベーションだったり、サウンド面や方向性、アンサンブル1つとってもそうなんですけど、いろんなことがやれたんです。この時のツアーはバンド史上一番長いツアーでもあって、すごく充実していて、それが終わってすぐに曲作りに入ったんですけど、そこでさらにワンステップ上がったものを目指そうと思い始めたんです。バンドを続けていくことだったり、リリースを重ねていくことだったり、その上でリスナーを含めメンバーやスタッフの曲に対する期待やモチベーション、ハードルなどが1個ずつ上がっていくんですよね。だから、いろんな方向性を探っていたんです。次のステップに上がるためにどんなNo Regret Lifeを見せるべきなのか。答えがわかってたわけじゃないから、模索していたら1年半も経っちゃったんです。かかりすぎたなとも思うけれど、できた曲『Can't Explain』にはエネルギーがあるんじゃないかなとも思ってるし、いろんな気持ちが入り交じった1年半でした。

──その間にもライブは変わらずにずっとやられていましたが、『Allegro』以降今作に至るまで具体的にご自身ではどんなことが変わったと思いますか?

小田:スタッフとバンドとの間では、楽曲を作るにあたって何を一番前に出してあげようかと言うところで何回もディスカッションをしたんです。そこでNo Regret Lifeは歌が前に出て、エイトビートになっているというところは自分の中でも認識があったんですけど、周りのスタッフにはテンポがミッドハイぐらいで、歌がスポンとあって景色がガラッと変わるようなところがNo Regret Lifeの持ち味なんじゃないかなって言われたんです。その原点をレベルアップした状態で見せるのが次のシングルにはふさわしいんじゃなかと。オレ的にはいい曲であればそれでいいのかなって、いろんな形の曲はずっと書き溜めていたんです。ツアー中に浮かんだリフひとつにしてもそうですけど、1ヶ月ちょいでデモを10曲ぐらい録った中でどれが良いかと選んで、どの曲も良かったんですけど、みんなが満場一致で納得する曲になっていなかったんですよ。そこで、もう少し曲を書いてみますっていう話をして。とにかく曲を作り続けてましたね。

──かなりたくさん作っていたんですね。

小田:ストックできるだけしていこうと思ったんです。弾き語りの状態だけのものを1日1曲ぐらいのペースで昨年の夏ぐらいからずっと書いていて、保留するものと進めるものを家で掘り起こしたらどれぐらいあるかわらかないぐらいです。

──そして厳選されたこの3曲にたどり着いたと。

小田:そうです。『Can't Explain』(M-1)はできたのが正月明けぐらい。自分の頭の中がカオスだったので、余計なことを考えなかったんでしょうね。ポーンと出てきました。先ほど言われていたように今まではコンスタントにリリースしていて、良いペースでライブもやれていたんですけど、敢えて原点に戻ってやろうと考えれば考えるほど、"こうしたほうがバンド的にはおもしろいんじゃないか"という欲というか知恵が働いちゃうんですよね。だから、『Can't Explain』に関して言えば最初はもっとシンプルなアレンジでやろうかとも思ったんですけど、3人で合わせていくうちに欲が出てきてどんどん鎧を着ていくんです。そうすると歌が一番ぼやけちゃったりもして。で、1回素っ裸にして必要なものだけ身につけようって、アレンジは今までにあったようでなかった感じになりましたよ。

──これまではコンスタントにリリースがあった分、メンバーの皆さんもこれまで以上に今回の楽曲への意気込みが感じられる作品ですね。

小田:この1年の間、感謝しているのはメンバーなんです。一番待ってくれたのはあの2人で、オレが全部イニシアチブをとるというか、オレがボスというわけじゃないんですけど、オレが書く曲に対してあの2人はすごく信頼してくれていて、そこは一番感謝しています。もうちょっと書いてみようと思うんだって言うと、じゃあ待とうって。リリースできなかったもどかしさとか苦しさみたいなものは、あの2人も同じように感じていたと思うし、完成した時にあの2人が本当に喜びましたからね。それだけでもこの1年があって良かったなって思います。ま、ここにメンバーがいたら言わないですけど(笑)。


これがダメだったらもう1年でももぐってやるよ

──『Can't Explain』は最終的にどの角度から聴いてもNo Regret Lifeだなと思う曲にはなったと思いますが、今までのイメージを完全に覆す曲になっているのではないかという期待も若干あったりしたのですが...。

小田:もちろんバンドって変わらなきゃいけないんですよね。それが進むことだと思うし、成長するということは何かを捨てることかもしれない。『Allegro』で到達したバンドのサウンド面とかアレンジ面とかを1回捨ててみようというのもあって、3人ですごく繊細なことも大胆なこともできるようになりたいなって思っていたんです。ライブはずっとやっていたんだけど、ようやく音源をリリースできるというところで、今はやっと帰って来れたっていう安堵感みたいなものを感じてます。これがNo Regret Lifeなんだなっていう意識があるけど、今まで聴いてきてくれた人からはやっと新しいものが出る! って、それがすごく新鮮に映って欲しいし、オレにとっては新しい家族が3人増えたようなもので、これをライブではどうやって調理してやろうかっていうおもしろさも感じてます。実際、この1年半ってリスナーから見れば長かったなっていう気持ちしかないと思うんです。曲を作っているっていう話はライブで言っていたり、ブログで誰かが書いていたので期待させていた分、長く待たせて申し訳なかったなっていう気持ちもありますけど、中途半端なものを出して、「あー、ノーリグだね」で終わるのは寂しいじゃないですか。時間が空いた分、今まで以上にワクワクさせられるようなものじゃないと意味がないのかなって思います。僕もいちリスナーとして好きなバンドの新作が出るのを知ると、すごくワクワクするんです。期待とか待っていた時間が長かった分どんなふうになっているんだろうなって思うし、ジャケひとつ見ても期待するし。もしかしたら期待はずれなのかなって思うときもあるけれど、それはリスナーには操れないことですからね。カップリングの『Mountaintop』は昨年の秋ぐらいからライブでやっているので、リリースもしていないのに歌詞を覚えている人がいたりとか、盛り上がるポイントを押さえている人がすごく多いですね。このテンポでノリやすくポジティブな感じのものもなかなかなかったな。それを狙って書いたり、おもしろおかしくいろんな要素を入れました。『Can't Explain』は仮タイトルがそのまま正式タイトルになったんですが、これがダメだったらもう1年でももぐってやるよっていう意味も持っているんですよ。THE WHOにも『I Can't Explain』っていう曲もあるんですけど、説明しようがない気持ちを元に詞を書き上げました。

──だから「この気持ちはなんだろう」で始まるんですね。

小田:1行目で結論が出てるんですけどね(笑)。ただ、この1曲を通して全ての答えが出ているかと言ったら出ていないとは思います。何でバンドやってるんだよとか、何で歌っているんだよとか言われても、歌っている瞬間がすごく好きだし、そういう好きな瞬間をずっと求めているんですよ。でも、人を好きになる気持ちとかバンドをずっとやり続けている気持ちとか、「なんで?」と聞かれても"好きだから"としか表現ができないんですよ。それ以上でもそれ以下でもない。この1年ぐらい絶えず曲を書き、新しい方向を模索してきたけど、『Allegro』を越える曲になった自負はめちゃくちゃあるんです。これで勝負しようというときにフォーカスをどこに置くっていうところがすごく大変でしたけど、曲だけでドキッとするようなものを作ろうというのと、『Can't Explain』の意味合いがつながっているんじゃないかなって思います。これができたことでまたボロボロと曲が生まれてきてますしね。

──ということは、今はバンドにとってはリスタートみたいな雰囲気ってありますか?

小田:バンドのリスタートというか、気持ちのリスタートかな。これまでにリリースしている2枚のアルバムで言えば、ちょっとずつ話がつながるようなものであったらいいなと思って意識して作っていた部分もあるんですけど、それは一回遮断してみましたから。

何がなんでも1日1歩進んでやろう

──この3曲とも前に進もうという詞が多いんですけど、人はすごく気持ちが弾んでいる時や嬉しいことが続いた時って敢えて前に進もうって思わないというか、落ち込んでいる時だからこそここから1歩出なきゃって考えると思うんです。小田さんも『Allegro』を越える曲作りというところで、いろいろ考えていた期間だったからこそ、こういう前向きな楽曲が出来上がったのかなと思ったんですが...。

小田:最近の自分のことというよりは、わりと昔のことを思い出したりして曲を作ることが多いんです。謎のフラッシュバックもありましたよ。『Can't Explain』の曲を書いた時は、最初から思いっきりポジティブな曲ではないなっていうイメージが漠然とあって、一番最後に光をあててあげたいって思って『ある光』に繋がるように作り上げていったんですよ。昔のことを思い出したりもしてますけど、自分が立ち止まったら終わりだなということはいつも感じています。簡単な話、例えばバンドを辞めちゃうのって簡単なんです。その中で続けることを選ぼうとしているのは、まだ未練があるというか、欲求が満たされきれていないというか、その気持ちがなくなったらバンドも辞めるだろうし、歌も歌わなくなると思う。オレが止まっちゃえば全部終わっちゃうんだろうな。自分のためにも周りの人間のためにもリスナーのためにも、何がなんでも1日1歩進んでやろうって。何か辛いことがあったりしても、一生失意のどん底ではないですよね? これ以上落ちることないだろうって思うんです。今までもそうやって考えることによって、すごく救われてきたんです。大事な先輩がいたり、大事な仲間がいたり、その人たちに言われた事ってすごく自分のためになっているし、歌うことで誰かの力になれたら...そればっかりを思っているわけではないんだけど、そういう関係性でありたいなって思いますね。

──上っ面な言葉じゃないからこそ聞いてる人にちゃんと伝わるんですね。

小田:そうであれば嬉しいですよ。


世界中の人を感動させるパワーが音楽にはある

──ところで、前回のアルバムから言われていたのが3人で音を出したいということだったんですが、今回も他の楽器は入れずにまず3人の音をというところは考えてましたか?

小田:ずっと3人でやってますからね。たまに対バンでギターが2本あるバンドを見ると、こんなこともできていいなって思うこともあるけど、3ピースって絶妙なバランスだと思うんです。何か欠けたら崩れちゃうっていう危うさ。誰もごまかせないですからね。

──3ピースでこれだけの楽曲があって、ノーリグの良さはもっと多くの人に伝わるべきだと思うんですが、ご自身もまだ伝わりきれていないもどかしさは感じていますか?

小田:感じていますよ、ずっと。認知されたいという気持ちはすごくあるし、意識しています。いいものを作りたいというのは自分のエゴで、認知されたいというのはバンドを転がしていく上のエゴ。でも自分一人が満足する作品だったらリリースする必要はないですからね。最高だな自分、っていうところを求めればいいですからね(笑)。CDを聴いてもらえたら、反応は極端でもいいんですよ。とことん好きになってくれたら嬉しいし、受け付けないって言われても、そういう意見もあるなって思いますし。誰でも嫌いって言われることにすごく恐怖観念があると思うんだけど、嫌いって言ってる側は意外とそこまでネガティブな意味で言ってなかったりするということに最近気付いたんです。この曲俺には合わないなっていうのと、この曲好きじゃないなっていうのって、好きか好きじゃないかっていう意味での"嫌い"だったりするんだけど、嫌いって言われるとそんな風に言わなくてもいいのにって思うことはありますよね。でも、一番しんどいのは何も思わなかったっていう意見。世界中の人が感動するっていうのは難しいと思うけれど、そこに持って行けるパワーが少なからず音楽にはあるんじゃないかなって思います。でっかい夢かもしれないし、それがゴールかもしれないですけどね。今できることっていうのは1日1歩何かを進めていくとか、もっと多くの人にライブを見て欲しいし、CDを聴いてもらいたいということです。人に届けるというものとかそういうものに対しては全力でやらないと失礼ですからね。

──お客さんがCDを買ってくれるとか、ライブにお金を払ってくれるとかよく考えたらすごいことですよね。

小田:不思議ですよね。最近思ったのが、『Can't Explain』に関して言えば1年かけて試行錯誤してできた曲が4分弱なんです。オレはこのたった4分の曲を作るために、この1年費やしたのかなって思うと笑えましたからね。それでもかすりもしない人もいるだろうし、うーんって思う人もいるだろうし、逆にすごくノーリグを好きになってくれる人もいるだろうし。不思議な世界だなあと思います。

──その4分ですごく幸せになる人もいるし、そう考えると音楽ってすごくパワーを持っていますよね。

小田:でも、オレがこうやって悩みながら曲を生みだしたということはリスナーにとってはどうでも良いことなんですよね。やっとできた曲なんですって言うことがイコール感動ではなくて、出来たものが良かったら自然に感動してもらえるんです。そこを間違えちゃいけないなって思っていて、それこそ『Can't Explain』ではなくなってしまう。悩んだ上に素晴らしいものが出来て、聴いてくれた人も同じように感じてくれたらというところは目指しています。それで届かなかった人にも、自分が音楽を続けていく上でいつかその人に届くものを作りたいと思いますね。いっぱい悩んだことを伝えたいわけじゃなくて、そこに人の温度を乗せたいんですよね。この曲にはこういう気持ちが入っているというのをもっとダイレクトな立場で、ダイレクトな状況で伝えていきたいです。

──ところで、2曲目の『Mountaintop』では、「目指せ山頂を」というフレーズが常に一歩ずつ前に進んでいる姿が想像できる曲でしたが、小田さんが目指している山頂とはどんなところですか?

小田:難しいですね。自分なりの目標はあるけれど、まだ言うべきではない気がするんです。山頂はないのかもしれないですしね。目標っていう意味ではわかりやすいんだけど、ここまで行ったらおしまいっていうのは自分で決めてない。この曲は一定のテンポを刻んで山を登っている感じが面白いなって思ったんです。

──『ある光』も歩き続けているというか、ノーリグに置き換えたら"まだまだノーリグの旅は続いていく"ということを感じさせる楽曲ですね。

小田:『ある光』はかっこつけた言い方になりますけど、自分なりの哲学というか、サビで言っている「生きていくことの 意味や理由なんて 知らないよ」ということなんです。

──私自身最近そういう話にとても興味があるので、今ここで生きることの意味を話したら、すごく壮大なことになってしまいそうなので自粛しますが、深く考えれば考えるほど難しい話になってしまいますね。

小田:でも、生きている意味を見いだすのは自分自身なんですよ。

──3曲ともノーリグのメッセージが充分に込められた作品になりましたね。

小田:オレらの曲って、決して耳障りのいいものではないと思うんです。BGMには成り得ないものにしたいし、さりげなく聴き流せるものではないものにしたいと思いますよ。

──何かを感じずにはいられないですよね。そしたら、今後の作品もとても気になるところではありますが...。

小田:ここ1年いろんな曲をたくさん書いてきて、それ以外で自分らのK点越えをした曲達は続々とラインナップされているので、待たせた分だけのものがこの後に出てくると思いますよ。

──今回のCDにはDVDも付くんですよね。

小田:新しい試みにチャレンジしました。曲の雰囲気が広がればいいなと思うし、画を見てほしいなってすごく思ったんですよ。このシングルの後にもいろいろと楽しいことがあると思うし、9月にはシェルターで1年振りのワンマンもありますしね。ワンマンはひさしぶりだからガッツリやっちゃおうかなって思ってます。シェルターで燃え尽きてやろうかなと。新旧いろんなラインナップが組めると思うので、懐かしいものもやりたいと思うし、その先にあるものを見せたいと思うし。と、考えると今までのワンマンの中では一番長くなるかもしれないですね。何やろうかなって考えるだけでワクワクしてます。でも、また近々Rooftopでお会いできると思います。to be continuedなので、楽しみにしていてください!

LIVE PIX:平沼久奈

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LIVE INFOライブ情報

8.07(Thu)広島ナミキジャンクション
8.08(Fri)福岡県DRUM LOGOS
 MySpace×SKUNK SHOT BOOSTER presentsBOOSTER CABLE shot.15
8.22(Fri)名古屋ダイアモンドホール
 TREASURE 05X with ZIP-FM 〜burning diamonds〜
8.23(Sat)下北沢ERA
 BRIT BANQUET presents 『BANQUET!!!!!!!!!Vol,4』
8.26(Tue)松山サロンキティ
 松健aniki祭り『俺等流の夏祭り』
8.27(Wed)大分T.O.P.S
 松健aniki祭り『俺等流の夏祭り』
8.29(Fri)神戸STAR CLUB
 松健aniki祭り『俺等流の夏祭り』
9.07(Sun)大阪LIVE SQUARE 2nd LINE
 No Regret Life "Can't Explain"発売記念ライブ
9.09(Tue)HEVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
 ベリテンライブ2008 #4
9.25(Thu)下北沢SHELTER
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