メンバーが愛おしいとキスをしたくなる
──そうやって即興で語りを入れるスキルも凄いと思いますが、演奏でそれに応えるのも並大抵の技量ではできませんよね。
木暮:僕の息遣いとかで終わるタイミングが判るみたいですよ。リーディングが終わって次の曲に入るところとか。
建部:まぁ、そこは慣れですかね。気持ちが入ってる時の言い回しとかは自ずとこっちも判るんですよ。何故か判りませんけど。そういうのは頭では余り考えてないです。ドラムが一番気になるのは歌なので、余計に敏感なのかもしれないけど。
──歌とドラムの関係性は特殊なものですからね。
建部:歌がちゃんと出ればいいといつも考えてますからね。リズムが先で歌が後っていうのは絶対にないです。あくまでも歌ありきなんですよ。
──アルバムに収録された曲はどれも、歌にすべての軸があるのはよく窺えますよ。音に整合性があって聴きやすいこともありますけど。
木暮:自分達が生活してきた中で生まれた曲だし、割と聴きやすいものでいいのかなと。僕らはああいう破天荒なライヴをやっていますけど、アングラ志向みたいなものが余り好きじゃないんですよ。だからサウンドも聴きやすく、開かれたものにしたいんです。
──でも、ザ ネクスト!が主催する“仮面舞踏会”は如何にも怪しくていかがわしい匂いがして、中に入るのを尻込みしそうですけどね(笑)。
木暮:入口を装飾して、かがまないと入れないようにしてるんですよ。それが夜に舞い込む入口って言うか。
──ああ、実際のライヴでそういう感じにしているんですか。
黒沢:自分達の企画ライヴが“仮面舞踏会”って言うんですよ。その時にはいろいろ仕掛けるんです。
木暮:毎回ライヴではステージ上に小さな箱を置くんですけどね。より非現実的にするためって言うか、平面的なライヴをより立体的にするために。その箱の上で見えないタクトを振ってみたりするんです。
──「風に吹かれて」のようなバラードがアルバムの要所要所に配されていますが、これもバンドの大きな持ち味のひとつですよね。
木暮:5曲やるライヴだったら、3曲目辺りに必ずスローな曲を入れるようにしてるんですよ。無闇に暴れるばかりじゃないところをちゃんと見せたいので。
平野:そういうスローな曲を演奏するのは、特にバンドに入った当時は凄く難しく感じてましたね。
建部:ヴォーカルが映える曲だしね。ただ、映えるのはいいんですけど、僕らがバック・バンドみたいになると面白くない。4人全員が同じベクトルに向かってその曲の世界に入り込んでいかないとダメだし、そこで1人でも気が緩むと台無しになる。その意味でもスローな曲は難しいですね。
木暮:演奏していて1人だけ気持ち良くなってるメンバーがいると、ライヴ中に「曲に戻ってこい!」って殴りに行くんですよ。
黒沢:4人の一体感がないとダメなのに、周りが見えてないと容赦なくブン殴るんです(笑)。
木暮:でも、そういうことが起こった後はライヴの流れが大抵ハッピーになるので。ハッピーだったらキスをすることもあるし。愛おしいと思ったら、どうしてもキスをしたくなってしまうんです。
──え!? 唇と唇ですか?
平野:キスっていうのはそういうものですから。ほっぺになんて考えられない(笑)。
黒沢:不思議なことに、木暮にキスされると凄く嬉しいんですよ(笑)。
平野:そうなんですよ、これが。自分もメンバーになって初めてキスをされた時は“ポッ”となったんです。いや、ヘンな意味じゃなくて、その心遣いが嬉しいんですよ?(笑)
──そういう特異性も含めて(笑)、ザ ネクスト!のライヴは必見なわけですね。
木暮:今はライヴハウスがいっぱいあって、1本のライヴが凄く安売りされてる気がするんですよ。昔はライヴハウスと言えばおっかない所で、そこにいるだけでドキドキする空間だった。そういう感覚を自分達のライヴで取り戻したいんですよね。そういう危うさやいかがわしさを体現していきたいんですよ。