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トップインタビュー【復刻インタビュー】Good Dog Happy Men(2007年12月号)- the GOLDENBELLCITY音楽で奏でられる世界で一番新しい御伽噺、その最終章今、万感の想いを込めて鳴らす黄金の鐘

the GOLDENBELLCITY音楽で奏でられる世界で一番新しい御伽噺、その最終章今、万感の想いを込めて鳴らす黄金の鐘

2007.12.01

真実の想いは何よりも美しい──。そんな普遍的な真理を込めた理想郷"the GOLDENBELLCITY"をテーマに、音楽で奏でられる世界で一番新しい御伽噺を三部作にわたって紡いできたGood Dog Happy Men。三部作の最終作であり、バンドとして初のフル・アルバムでもある『the GOLDENBELLCITY』は、これまで発表されてきた『~ep1』と『~ep2』の随所で顔を覗かせていた登場人物や情景が巧みに盛り込まれ、物語の妙味を引き立たせるための相互作用として機能している。また前2作同様、楽曲ごとに録音の手法に工夫を凝らし、時空を超えた街の歴史を音像化している点も至極ユニークで、聴き応えは十二分にある。聴き手が五感をフル稼働させれば、それぞれに思い描く"the GOLDENBELLCITY"がまるで万華鏡の如く美しく色付き、煌びやかに精彩を放つことだろう。そして、寓話という体裁を取りながらもその歌々に刻み込まれた現実社会の暗部や生きる上での道理に気付かされ、音楽という表現の限りない可能性に身震いするはずだ。近年発表されたポピュラー音楽の中でも稀に見る高いポテンシャルと精度を誇る本作は、メンバー自身の手による温かみのあるアートワークやPVを含めて表現としての純度が凄まじく濃密な作品である。表現と対峙する真摯な姿勢と溢れんばかりの熱意、そして自らの音楽性に対する絶対的な矜持。Good Dog Happy Menは、音楽至上主義を貫く表現者集団の中で今一番信頼するに足るバンドだと僕は思う。(interview:椎名宗之)

設計図を無視して一筆書きで仕上げた

01_ap1.jpg──前作『the GOLDENBELLCITY ep2』のインタビューで、門田さんが本作の曲作りに際して「手が震えて歌詞が書けない」と仰っていましたが、これだけのヴォリュームとクォリティの高さを考えるとそれもよく理解できますね。

門田匡陽(vo, g):あの時はちょうど曲作りの詰めの段階で、この一連のプロジェクトに一文字一文字終わりを付けようとしていたんですよ。その時はいろんな感情が交錯していて、プロジェクトが終息を迎えるにあたって“この言葉でいいのだろうか?”という思いが歌詞を書きながらずっとあった。このフル・アルバムには15曲が入っていて、『~ep1』と『~ep2』にはそれぞれ4曲ずつ入っているから、三部作には全部で23曲を収めたことになるんだけど、自分としては作った曲の半分くらいしか入れられなかったんですよ。それと、バンドとして初のアルバムという意味では、Good Dog Happy Menの全部を出しきった作品ではないんです。Good Dog Happy Menを3年間やってきて、その間に縫い上げてこしらえた袋があるとすると、この三部作を作り上げてその袋全部に風を通したかったんですよね。風を通すことでGood Dog Happy Menの袋を空っぽにして、次の作品作りに向かいたかった。確かに空っぽにする作業はできたけれど、収録曲はこれですべてというわけではないんです。

──この三部作を生み出そうとする当初の思惑と比べて、すべてを作り上げた後の心境はだいぶ変化があったのでは?

門田:設計図を緻密に作ったんだけれど、結局はその設計図を無視して一筆書きで仕上げたんですよ。当初の構想が膨らんだというよりは、補足しきれなかったという感が強いですね。でも、それは敢えてそうしたんです。つまり、自分の頭の中で描いた設計図を忠実に再現したいのならば、この4人で細部にわたって話し合わなければならない。でも俺はその作業を敢えてしたくなかったし、Good Dog Happy Menはファンタジーの部分をファンタジーのまま残しておかないと、聴き手がその音楽を面白がれないんです。聴き手の想像力を介在させる隙間を作っておきたかったから、出来上がった作品は最初に作った設計図とは全く違うものになりましたね。

──『~ep1』と『~ep2』を制作する過程で物語に生命の息吹が込められるようになって、門田さんの意図とは裏腹に登場人物が自由に行動するような部分もあったんじゃないですか。

門田:そうですね。漫画でも、物語の中盤に差し掛かると主人公の顔付きが変わってくると作者の人がよく話していますよね。主人公が作者の意図と反して勝手に動き出すというか。それに似たところがこの三部作にもあって、“the GOLDENBELLCITY”という街にはっきりとした景色が徐々に描出されるようになったんです。最初はもっと血が通っていない無機質な感じでしたからね。

──他にも収めるべき楽曲の候補が多々あったということは、本作に収められた15曲は厳選に厳選を重ねたものなわけですね。

門田:『the GOLDENBELLCITY』は今の世界の映し鏡であるというコンセプトがあったので、今の自分達だけのことを唄っている曲はすべて外しました。リアリティを追求した結果、自分達の中だけで通用するリアリティに基づいて作った曲は排除したというか。後は曲と曲の相互関係がうまく行かなかった曲ですね。1曲単位で見ると凄く完成度が高くても、他の曲とのバランスが悪ければ外すことにしたんですよ。

──登場人物や街の中でで繰り広げられるエピソードの数々が複数の曲にまたがって描写される面白さは、フル・アルバムならではですよね。「Apple star storyS」に出てくるヨーヨー売りのチンピラがオス猫の眼の「B D H M」だったり、「ハートのJUNKY」にある“この世界は張りぼてで仕切られている”という訓話を「廃墟の子供達 -黒い羊水-」に出てくる血走った眼のミュージシャンが喚いていたり。

門田:うん。それはこのアルバムに限らず、これまでの『~ep1』『~ep2』でも言えることだし、この三部作の醍醐味のひとつですよね。

街のリアリティを持たせるために年代設定は不可欠

──「ANDANTINO -museの楽団-」なら1959年、「Groria Streetから愛を込めて#3 -嬉しくて哀しい事-」なら1981年と、楽曲ごとに録音年代を設定して、アナログ時代の1920年代から現代のプロトゥールスまで音質、空間、湿度にこだわったレコーディングの手法はこの三部作で一貫していますが、1枚のアルバムとして聴くとその効果がはっきりと窺えますね。

門田:この街は突如こうなったわけではないし、今現在の街の景色を表現するために、今に行き着くまでの過去を逐一表現しなければ駄目だと思ったんですよ。街のリアリティを持たせるための年代設定はとても大事なことで、俺達は音楽でそれを表現しているわけだから、現代に至るまでの音楽をその都度再現することは必要不可欠だったんです。

──そのための苦労は各人のパートで多々あったんじゃないですか。

伊藤大地(per, ds):門田の世界観を作り込んだ曲ではあるけれど、4人の場に降りてきてからはそれほど神経質にはならなかったですね。ライヴっぽく一発録りをして勢いを出した曲も多いし。『Most beautiful in the world』がプロトゥールスでのレコーディングだったのに対して今回は全面的にアナログで録ったから、凄く生々しい表現になっていると思う。求めていたサウンドを上手く形にできた気がしますね。

韮沢雄希(b):楽曲の世界観と雰囲気に近づけることを突き詰めていきましたよね。このアルバムのためにウッド・ベースをちゃんと弾けるようにして取り組んだし。20年代の曲はマイク1本でベース、ギター、ドラムと音の小さい順にマイクに近付いて録る手法を採り入れたり、それによって曲の持つ細かいニュアンスを表現できたと思います。

内田武瑠(ds):20年代に比べたら録音技術はだいぶ進歩しているけれど、今はその当時の音を再現するのがこんなに大変だとは思わなかったですね。今ニラが言ったような手法を昔のミュージシャンは当たり前に試みていたわけだけど、自分達が今それをやろうとすると、その手法ができる高いスタジオに入らなくちゃいけない。現代のほうが万能なはずなのに、何だか不思議な感じでしたね。

門田:だからかなり贅沢なレコーディングをさせてもらいましたよ。宅録でもできるようなことをこだわってスタジオでやらせてもらったわけだから。

内田:そう、宅録ではなくこれだけの規模で取り組むことに意義があったんです。そこまでこだわったからこそ、人力ゆえの血の通った感じが音の細部にわたってよく出ていると思うんですよ。

門田:そうやってレコーディングを徹底することによって、たとえば俺のギターで言えば左手がどう押さえているのか、右手がどんな動きをしているのかが鮮明ではなくともちゃんと出るんですよね。そういう作り手の意志が反映されたアルバムが最近は少ないと思うんです。

──各曲の年代設定はどのように決まるんですか。

門田:曲作りをする時に“だいたいこの辺りかな”とある程度想定するんです。だけど前後しますよね。エンジニアの人と話し合うと、「この機材を使ってそういう録り方をするなら、その時代じゃないよね」という話にもなるんですよ。こっちは1968年くらいかなと思っている曲でも、それが1975年だったりする。そうなると2つに1つで、1968年に近付けるか1975年に近付けるかなんです。ただ、それはテクノロジーだけの話で、自分の中の空気感としては1968年だとしたらそれに見合う録り方を模索する。俺達が時代を近年に設定して、そこから時代が古くなることは絶対にないんですけどね。

──たとえば内田さんがヴォーカルを取った「勇敢な指揮者~大行進」は如何にも1920年代風なマーチング調の楽曲で、「鍛冶屋 花火師 ピエロ」のサウンドは1950年らしくエルヴィス・プレスリーやバディ・ホリーを彷彿とさせる創成期のロックンロール。サウンドは微に入り細にわたって起伏に富んだアレンジが施されていて純粋に楽しめるし、そこに相互作用のあるストーリーを孕んだ歌詞が門田さんの記名性の高い歌声で唄われるのだから、音の総合格闘技としてはかなり最強の部類に入りますよね。

門田:そうですね。格闘技に喩えるなら俺達は禁じ手が一切ないバーリトゥードみたいなもので、リングの上で何をやってもいいんですよ。だから、あらゆる概念を乗り越えて何でもやってみたい。空手が好きで格闘技を始めたわけじゃないんです。つまり、ロックが好きでバンドを始めたわけじゃないですから。

──あくまで歌を真ん中に置いた音楽を志向しているということですか。

門田:いや、歌を真ん中に置いている感覚も自分ではそれほどないですね。純粋に音楽が好きなんですよ。演奏すること自体が好きだし、それがロックではなくても別に構わないんです。そういう4人が集まっているのがGood Dog Happy Menなんですよ。

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the GOLDENBELLCITY

earbridge production TBCD-1981 / 2,800yen (tax in)

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01. ANDANTINO -museの楽団-
02. 勇敢な指揮者~大行進
03. Apple star storyS
04. Groria Streetから愛を込めて#3 -嬉しくて哀しい事-
05. Judgement ;
06. そして列車は行く
07. ハートのJUNKY
08. B D H M
09. VIVACE -TiTs-
10. 鍛冶屋 花火師 ピエロ
11. 廃墟の子供達 -黒い羊水-
12. 記憶と記録
13. Jewel Box
14. 黄金の鐘
15. 今、万感の想いを込めて

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