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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ANOYO(2007年10月号)- 光と闇が交錯する人生を往くすべての人に捧げる、愚直なまでに赤裸々で真摯な詩

光と闇が交錯する人生を往くすべての人に捧げる、愚直なまでに赤裸々で真摯な詩

2007.10.01

孤立はみんなで生きていくための第一歩

10_ap03.jpg──それは、自分自身に対しても、ANOYOの音楽を受け取る側に対しても嘘をつきたくないという思いが一貫してあるからですか。

原田:生きてりゃ大なり小なり、絶対に嘘はつくものだと思うんですよ。一概に嘘を悪いものとは言えないと思うし、良い嘘もたくさんありますからね。ただそれは実生活の中での話であって、何かを表現する立場の人間として、俺は自分自身以外に見せられるものが他にはないと思っているんです。余りにヒリヒリし過ぎて辛い時は辛いけど、もしも「そんなちっちぇこと言うなよ」って言われても、俺は「そんなわけには行かねぇ!」と絶対に突っぱねるし。もちろん、どう感じるかは受け手次第ですよ。「24区」を聴いて感動して泣いてくれる人もいれば、「そんな青臭いことをいつまで言ってるんだよ?」と言う人もいる。それでいいと思うし、物事には賛否両論あって当然ですよね。ただ、表現する上で比喩を使うこともあるけど、1から10まで比喩を使って終わっちゃうことはしたくないんです。

──今年の8月から不定期に週2回、新宿ロフトのバー・スペースで深夜にゲリラ的ライヴを敢行していましたよね。あのライヴはバンドにとって非常に良い経験になったんじゃないですか。

原田:そうですね。かなりの武者修行になりましたよ。路上でライヴをやってるような感覚もありましたね。深夜だからお客さんが誰もいなくて、スタッフだけが俺達を観てるようなことも多々ありましたから。

前田:ライヴが終わって無料音源をお客さんに配ってたんですけど、その時の心持ちやアピールの仕方も凄く勉強になりましたしね。

小林:ライヴ自体は15本ほどやったんですけど、ライヴとして成立したのは後半の3本くらいでしたね。音響の設備は物理的に音の返しがないので、他の3人の音をしっかり聴かなきゃいけなかったんですよ。それが自分の中では身になった気がします。そこで音のバランスがだいぶ良くなったので、今は原田の詩が聴こえない状況が減ったんじゃないかと思いますけど。

──ライヴの向き合い方もかなり変わってきたのでは?

小林:底上げはできてきたんじゃないかと思いますけどね。

原田:でも、俺自身が凄く弱い人間なので…。プロとかミュージシャンっていう呼び方が俺は好きじゃないんですけど、自分がそういうものだとしたら良くないとは思うんです。一定のものがライヴで見せられないわけだから。ただ、どうしてもその日の気分や体調、天候にも大きく左右されてしまうんですよ。

前田:確かに、原田のきめ細かさは尋常じゃないですよ(笑)。

──でも、自分の感情に実直であり続けるという意味では、表現者として何処までも真摯であることの表れにも思えますけど。

原田:ライヴではお客さんの顔を見ながら唄うんですよ。その時に「こいつにはこういうことよりももっと違うことを伝えたいな」って思うことが多々あるんです。そうやってその時々で歌詞が変わるんですよね。それで「判ったね?」と相手の反応を見る。でっかいコール&レスポンスじゃなくてもいいんですよ。一人でもいいから俺の表現で心を動かすことができれば、それで充分じゃないかと俺は思うんですよね。そのスタンスは、新宿ロフトで500人相手にライヴをやる時も何ら変わりはないんです。何人いようが常に一対一で臨んでますから。

10_ap04.jpg──プロでもなく、ミュージシャンでもなく、敢えて自分自身に肩書きを付けるとしたら、何になると思いますか。

原田:質問の答えに合ってるかどうか判らないけど、俺の肩書きは原田大輔ですね。それ以外の何者でもないです。それに依って立っているつもりだし、弱かろうが何だろうが、常に自分の感じたままを包み隠さずにいたいんですよ。だからまず、「それでも立ってていいんだよ」っていうことをANOYOの歌詞の全編を通して必ずどっかしらで表現しているんです。そこで救いの言葉を提示しているわけじゃないんですよ。「俺はこう思うけど、君はどう思う?」という問い掛けなんです。「24区」の中で“(俺達は)一人じゃないんだ”という言葉があって、それは孤立と孤独は結び付かないってことを言いたかったんですよね。個々人で理解し合えない孤立は避けられないけど、同じ時代に共に生きている以上は決して孤独じゃないんだってことを訴え掛けたかった。同じ時代に生きているからこそ、俺は今こうしてライヴで君達に話をしているし、君達は俺達が見えてるし、俺達も君達が見えてるよ、っていう。その認識が凄く大事なんです。孤立とは、みんなで生きていくための最初の一歩なんですよ。

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