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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ANOYO(2007年10月号)- 光と闇が交錯する人生を往くすべての人に捧げる、愚直なまでに赤裸々で真摯な詩

光と闇が交錯する人生を往くすべての人に捧げる、愚直なまでに赤裸々で真摯な詩

2007.10.01

何の因果か、このページにふと目を留めたあなたは幸運な人だ。ここ最近どんな音楽を聴いても感受性がさっぱり応答しないとあなたがお嘆きならば、尚のことラッキーだ。このインタビュー記事が、ANOYOという特異なポエトリー・リーディングを全面に押し出したユニークなバンドをあなたが知るきっかけになるのなら、こんなに嬉しいことはない。このページに掲載されている不可解なアーティスト写真や珍奇なジャケット写真に決して惑わされないように。これは生きることに直結した、余りに赤裸々な詩を聴かせる彼らなりの照れ隠しなのだと僕は思う。平易な言葉で日常の混沌と憂いを描出し、それを明るいエネルギーに転化する原田の歌声と、確かな技術に裏打ちされたバンド・アンサンブルが音の塊となって混濁する様は得も言われぬ昂揚感をもたらす。ライヴで感涙を催すこと必至の大作「24区」が重いテーマを孕んでいるだけに、ヴォーカルの原田大輔が書く詩と世界観につい心を奪われがちだが、デビュー・アルバム『リカオン』には何処にも属さない(属せない)未曾有の音像と日本語ロックの新たな可能性が満ち溢れていることに注目して欲しい。「歌は世につれるが、世は歌につれない」とは山下達郎のけだし名言だが、ANOYOは世が歌につれないことを充分に認識した上で音楽という表現の可能性に懸けている。その姿勢が愚直なまでに真摯だからこそ、"俺達は一人じゃないんだ"というありふれた言葉が強固なリアリティと共に僕達の心に深く突き刺さるのだ。(interview:椎名宗之)

思いの丈を書き連ねたら規格外の詩になった

──不勉強ながら今回初めて皆さんの音源を聴いたんですけど…今まで知らなくて本当に損をしました。

一同:
おおッ!

前田道治(b):マジッすか!? 有難う御座います!

──原田さんの詩を前面に押し出しながらも純然たるポエトリー・リーディングではないし、言葉の情報量の多いロック・バンドだと僕は受け止めたんですけど、結成当初からこのスタイルだったんですか。

原田大輔(vo):いや、全然ですね。歌が上手ければ普通に唄っていた気がします。確たる理由があって喋るようになったわけじゃなくて、ヴォーカルになって思いの丈を一生懸命歌詞に書くことになった時に、まるで長ったらしい作文みたいになっちゃったんですよ。それをメロディに合わせたら、案の定歌詞が溢れて入りきらなくなったんです。でも、これは俺が句読点に至るまでとても削ることができないという思いで書いた歌詞だし、それをメンバーに伝えたら、「じゃ、全部言えば?」と言われて。それから曲のサイズに関係なく喋るようになったんです。最初の頃はちゃんとした歌詞もなくて、その時思ったことを即興で喋る曲が幾つかあったんですよ。

──じゃあ、れっきとした歌モノの曲もちゃんとあったわけですね。

前田:むしろ歌モノの曲が8~9割を占めていたくらいなんです。今よりももっとガレージ・ロック寄りだったんですけど。最初の最初は原田もリッケンバッカーを掻き鳴らして唄ってましたからね。それが徐々にリーディングの割合が増えて、こっちはこっちでセッションが楽しくなるとループするのが面白くなってきて。それで今に至る感じですね。

──ドアーズに『アメリカン・プレイヤー』というアルバムがあるじゃないですか。ジム・モリスンの詩の朗読テープにメンバー3人が演奏を加えた作品で、ジム・モリスンの死後発表されたんですけど。

原田:へぇ…全然知らないです!!!!!!!

──ああ、そうですか(笑)。僕が『リカオン』を聴いて反射的に連想したのはその『アメリカン・プレイヤー』なんですよ。

前田:聴いたことないですねぇ。逆に知りたいくらいですよ(笑)。

──皆さんの中でお手本にするようなバンドや音楽は特になかったんですか。

原田:なかったというか、単純に知らなかったですね。REDЯUMのKAZIさんに初めて会った時に「オマエ、町田町蔵のINUは好きか?」「ブルー・ハーブは好きか?」「ヒップホップは聴くのか?」とかいろんなことを訊かれて、「全部知らないです」と(笑)。そしたらKAZIさんが凄まじい数のCD-Rを焼いてくれたんですよ。それを聴いて、やっといろんな音楽を知るようになったんです。

──結成当初、バンドが今みたいなスタイルになるとは露にも思わず?

小林健治(ds):
こうなって欲しいなという気持ちはありましたよ。20歳の時に僕と原田の2人でバンドを始めた遅さゆえのコンプレックスもあり、早くオリジナリティを持った形になればいいなと思ってましたから。

──そもそも、曲の成り立ちはどんな感じなんでしょう。やっぱり原田さんの詩が先にあるんですか。

小林:いや、まず楽曲がある感じです。曲の断片をそれぞれが持ち寄って来るところから始まって。

前田:最近は原田がここで喋るとか、ここで唄って欲しいとかを盛り込んで作るようにしてます。

小林:そこからセッションなり話し合いなりで広げていって完成させて、原田に渡すっていうケースが多いですね。

原田:それを受けて、最後に僕が詩を当てはめるという…。

──へぇ。それは意外ですね。てっきり原田さんの詩がまずありきなのかと思いましたが。

原田:しかも、いつも先にタイトルが決められているんですよ。そこから自分でイメージを膨らませるんです。まぁ、ほとんど無視しますけどね。何か引っ掛かるイメージがあれば書き進めていきますけど。でも、ボツになることも結構多いんですよ。

──ははは。ダメ出しは1対3の比率なんですか。

原田:そうなんです。俺の側に立って一緒に戦ってくれるヤツはいませんよ(笑)。

林慎之介(g, cho):でも、僕は結構、原田に助け船を出してあげることが多いですけどね。「このタイトルはこういうことなんじゃないの?」っていうふうに。

──まるでバンド内で大喜利をやっているみたいですね。楽器の3人がお題を出して、原田さんが即意妙答で応えるような感じで。

前田:ああ、そうかもしれませんね。そういうやり方が勝手にポップだと自分達では思ってるんですけどね。

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