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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】N.G.THREE(2007年9月号)- Lo Fidelity Peopele Are Coming Back!!!

Lo Fidelity Peopele Are Coming Back!!!

2007.09.01

短期間で制作するには、迷いを捨てるしかないんです

──この10年の間に「もう一度、N.G.THREEをやってみたい」っていう気持ちは生まれてこなかったんですか?

新井:うーん…。N.G.THREEはいったん解散したんだけど、自分の中では特別なバンドだったんですよ。だから6月のイベントも、リラックスして楽しみたいっていう気持ちもありつつ、かなり気合いを入れてたんです。やるからには、歌なりギターのプレイなり前よりもステップアップしたところを見せないと意味がないし。同窓会で終わらせたくなかったんですよ。6月のイベントでベストなパフォーマンスをするっていうことだけでしたね、最初は。

──それが実現して、オーディエンスの反応も良く。

新井:NORTHERN BRIGHTからのファンも多いから、N.G.THREEのことは観たことないって人も多かったんです。自分で言ってるんだけど、N.G.THREEは伝説のバンド(笑)。ライブは、みんなウェルカムだったし、浦さんもフィルも楽しそうにやってくれて。そっからツアーが決まって、「このメンバーでぜひ、レコーディングしたい」ってことになって。

──レコーディングもすごいスピードだったんですよね、きっと。

新井:早かったです(笑)。ライブでやったレパートリーと、どうせなら新曲もいくつかやりたいってところからスタートしたんですけど、7月15日の浜松のライブ前日に新曲のリハをやって、16日に大阪でライブ、で、17日からレコーディングですから。大阪にいた3日間でリズムを全部録って、東京に戻ってきて。ベースとギターを2日で入れて、歌を2日で入れて、ミックスを2日でやって…。

──すごいっすね! カッコいいです。

新井:(笑)カッコいいでしょ? そうなるとね、迷いを捨てるしかないんですよね。余計なことはやらないっていうか、今自分たちが出来ること、やるべきことに集中するっていう。その分、勢いと魂が詰まってる感じがするしね。

──新曲が3曲入ってますが、これも素晴らしいですね。特にタイトル・チューンの『Lo Fidelity Peopele Are Coming Back!!!』はN.G.THREEのスタンスを示した名曲だな、と。

新井:浦さんとも言ってたんですよ、「かっこいい新曲が出来て良かったね」って(笑)。よく言ってることなんですけど、僕はリズムセクションをイメージしながら曲を書くことが多いんです。今回の場合は、フィルと浦さんのリズムを想像しながら、「こんな曲があったらないいな」っていう。

──このリズム・セクションを手に入れた、っていうことが大きいんですね、やはり。

新井:そうだね。アルバム・タイトルの曲は、もともと6月2日のイベント用に作ったTシャツに書いてあったフレーズなんだよね。「何か文字要素を入れてよ」って昔からそういうセンスがある平岡君に頼んだら、“『Lo Fidelity People Are Coming Back!!!』っていうタイトルのシングルがもうすぐ出るよ”っていうのを考えてきてくれて。もちろん冗談だったんですよ、そのときは。

──それを実現してしまった、と。でも、すごくいいタイトルですよね。

新井:いいよね、すごく気が効いてて。というか、N.G.THREEはまさに“Lo Fidelity People”だから(笑)。“NO GOOD THREE”ですからね、バンド名が。ホントに下手くそだったし、音源の音も悪かったし。“あいつらがまた帰ってきた! ”みたいな。

──確かに昔はそうだったかも(笑)。

新井:この曲に関しては、僕が曲を作って歌詞は平岡君っていう当時のスタイルで書いたんですよ。それもまた嬉しいかったんですよね、僕としては。

──しかも、フィルが参加したことで、よりパワーアップしたカタチでやれるわけだから。

新井:そうだね。当時は自分たちで機材を揃えて自分たちで録ってたんですよ。何でそうしたかっていうと、あの頃の日本のバンドの音っていうのが、そんなに好きじゃなかったんだよね。いかにも「いいスタジオで録りました」っていう音というか、変に豪華になっちゃってて。こういうとコンプレックスみたいに聞こえるかもしれないけど、どうして海外のバンドみたいな音にならないんだろう? っていう気持ちもあって。

──で、自分たちでやってみようと。

新井:でも、それはそれでストレスがたまるわけですよ。レコーディングなんかやったことないから、音として納得できるものが全然録れなくて。なんかね、60's、70'sライクな音にこだわってたんですよね、当時は。レニー・クラヴィッツみたいな音で録れないかなって。でも、あれをやるには、レニクラくらいの機材がないと無理なんですよ

──本物のビンテージ機材とかね。あれは金持ちの音楽ですから。

新井:そうだね(笑)。でも、今はレコーディング技術もすごく進歩してて、自分たちのテンションをそのままパッケージすることも可能になって。今回のアルバムの音は、今のどんなバンドにも引けをとらないと思うけどね。

──楽曲のポテンシャルが引き出されてますよね。

新井:そう、以前はそれも納得できない部分だったんですよ。N.G.THREEを組んだときに心がけてたのは、いつまでも色褪せない曲をやろう、っていうことで。そのときの流行はありつつも、ずっと聴けるような音楽を作りたいっていうのは思ってたんです。で、曲にもそれなりに自信があったんですよ。ただ、一方では「曲はいいんだけどな…」っていう思いもあって。

──それはさっき言ってた、レコーディングの音質の問題?

新井:それもあるし、自分たちの演奏力、歌唱力のこともありますよね。ホントはこういう感じでやりたいんだけど、今の実力ではまだ無理だなっていう。追いついてない部分っていうのがホントに大きかったんです。

──なるほど。

新井:ただ、もう一方では、「反応をおそれないで、どんどん作品を出していく」っていうのも自分たちのテーマだったんですよ。周りのバンドを見てると、曲もけっこういいし、ライブもやってるのに、なぜかリリースはしないっていうパターンが多かったんですよね。たぶん「もっと高いクオリティになるまで出せない」っていうことだったんだろうけど、僕らはそうじゃなくて、「今やれることはコレです!」ってどんどんリリースしていこうと思ってて。前に進めないと思ってたからね、そうしないと。

──そういう意味で今回のアルバムは「ようやく、自分たちのバンドの本質が表現できた」という作品かもしれないですね。「だから言ったろ、すげえバンドなんだよ」っていう気分もあるんじゃないんですか?

新井:や、そこまで強気じゃないです。正直、ここまでやれるとは思ってなかったから(笑)。

──ハハハハハ!

新井:浦さんもフィルも「こんなスケジュールじゃ無理だよ」って言ってましたから。「歌入れの日数、もう1日あったほうがいいんじゃない?」って浦さんに言われたりして。俺はひとりで「ダメダメ、そんなこと言ってちゃ。大丈夫、これでいけるよ」って言ってたんだけど、それも全然確信がなかったっていうか、自分で自分に言い聞かせてるところもあったんです。実際、レコーディングの日数も予算も、レーベルはもう少し余裕を持って用意してくれてたんですよ。でも、そういう問題じゃないな、って思ったんですよね。短期間でギュッと凝縮してやったほうが、絶対にいいものができるはず、っていう。

──実際にそうなりましたよね。

新井:技術的なことも大きいと思いますよ。しっかり歌えて、演奏できるようになってきたんですよね、ここ10年で。ようやく(笑)

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