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トップインタビュー【復刻インタビュー】清木場俊介(2007年9月号)-オッサン少年の旅はまだまだ続く── "唄い屋"としての本懐を遂げた集大成的作品集『IMAGE』

オッサン少年の旅はまだまだ続く──“唄い屋”としての本懐を遂げた集大成的作品集『IMAGE』

2007.09.01

自らの名前を堂々とタイトルに冠したファースト・アルバムから約2年、生粋の"唄い屋"こと清木場俊介が満を持してセカンド・アルバム『IMAGE』を完成させた。前作発表後に敢行したツアーでの経験、貪欲に人生を楽しもうと向き合う日々の中で交錯する喜怒哀楽が余すところなく凝縮された本作は、25歳から27歳までの清木場俊介が在るが儘、想うが儘に生きた証であり、清木場と同じく人生を貪欲に楽しんでいる人間ならば大いに共感し得るエンターテインメント性の高い作品集だ。どうぞ肩の力を抜いて、その彩り豊かで芳醇なヴォーカルに耳を澄まして欲しい。体に赤い血がどくどくと脈打った同じ人間同士、きっとあなたの五感を激しく揺さぶってやまないだろうから。(interview:椎名宗之)

今も10代の頃と同じく生き急いでいる

──今回発表される『IMAGE』という作品集は“剥き出しの清木場俊介”がギュッと凝縮されているのが大きな特徴のひとつだと感じたんですが、この2年間に行なわれたファンクラブ・イヴェントや初の全国ツアーで培った経験が如実に反映されていますね。

清木場:そうですね。去年初めて一人でツアーを回って、お客さんとのやり取りとか、自分で考えていた以上に難しい部分もあったんですけど、それ以上に強く感じたのはお客さんとの距離がグッと近くなったことなんです。僕のソロ・ライヴを待ち望んでいたお客さんがあんなにたくさんいてくれたことが、自分にとって凄く励みになった。だからこそお客さんとはこれまで以上にちゃんとぶつからなきゃいけないと感じたし、その過程でより人間っぽい部分が少しずつ出てきたと思うんですよね。

──ツアーを回る前は、オーディエンスとの距離感を掴みかねていた、と?

清木場:それまでは自分の感覚や力ではどうしようもできない場所にいて、その中でいい意味で自分を演出していたので、自分自身の中身というものが余り強く出せなかったんですよ。

──それ故のソロ活動始動であり、『IMAGE』に収められた楽曲には一糸まとわぬ清木場俊介の姿が投影されていますね。

清木場:ええ。10代の頃に抱いていたがむしゃらな思い──誰かに負けたくない気持ち、根本にある悔しさみたいなものは、今回アルバムを作ってみて今でも全然変わっていないと思った。10年前と同じ気持ちで生き急いでいるのが自分でも気づけたんですよ。ある時期には己を演出していた自分もいたけれど、このアルバムの制作を通じて“自分はあの頃と同じガッツのある人間なんだな”と実感できたというか。

──ブルース調の「Lenny Down」やソウルフルな「Baby」にはバンド・アンサンブルの妙がとりわけ感じられて、ツアーを通じて体得したバンドの一体感が作品として昇華した好例だと思いましたが。

清木場:今回、“清木場バンド”と呼んでいるツアーのバンド・メンバーで録ったのは「忘れないで」と「サル」の2曲だけで、新たに参加してもらったミュージシャンがたくさんいたんですけどね。ブルース・ハープの妹尾隆一郎さんやドラムの沼澤尚さんといった日本でも大御所の方達とセッションができて、凄くいい勉強になったと思います。

──ツアーを通じて、歌と向き合う姿勢の変化はありましたか。

清木場:ただ唄うことが何よりも好きだという根本的なものは変わらないですけど、少し前は唄うことに醒めていた自分がいたことは確かなんです。たとえば歌を唄って人を感動させて、その人の人生が変わるということが、心の奥底では“そんなことあり得るのかな?”と正直なところ思っていた。ちょっと大袈裟過ぎるというか、どこか格好悪く感じて口にはできなかったんですよ。でも、一人でツアーをやってみて、ファンの人達の真剣な目や涙、笑顔を見て意識が変わったんです。チケットを取るために仕事を頑張ってくれたり、いろんな都合がある中で会場に足を運んでくれたり、そう簡単にはできないことだと思うんですよ。それだけのパワーを僕も貰っているし、僕もファンの人達に伝えられているんだなと感じたし、そうすると自ずと歌に対する取り組み方は変わってきますよね。

──7月にシングルとしても発表された「最後の夜」のような壮大なバラードを聴くと、ヴォーカリストとしての表現力が格段に増したのを痛感しますね。

18_ap01.jpg清木場:ありがとうございます。ソロ活動を始めて、自分自身の中で清木場俊介という存在がフラットなスタンスになれたのもここ1年くらいなんですよ。だからまだ生まれたばかりの感覚というか、全くの新人のつもりでやっています。そこからまた頂点に向かって登り詰めていく作業が今は凄く楽しいんですよね。

──『IMAGE』は前作発表以降のシングル5曲も収録された全12曲、70分を超える大作なので、曲の流れが淀みないよう構成には苦心されたと思いますが。

清木場:アルバムを作る時に気に留めるのはやっぱりライヴなんですけど、ライヴを意識した曲順というのがまず念頭にありましたね。どこに置いても重くなってしまう深い曲がたくさんあったから、どう並べたら一番しっくりくるのか悩んだし、シングル曲の5曲だけが浮き立たないようなバランスまでじっくり考えました。「今度のアルバムはシングル曲がいいよね」って言われないようにしたかったので、並びには凄くこだわりましたね。

──シングルとして発表された既発曲は、この作品には不可欠な重要な曲ばかりだったんですよね。

清木場:そうですね。清木場俊介という“唄い屋”としての存在をいち早く確立させて、伝えていきたいという思いがあって、「最後の夜」のようなバラードを唄うのはこれまで敢えて避けてきたんですよ。ミディアムからアップ・テンポの曲をシングルとして優先的に唄ってきたのは、そういう曲を支持してきてくれた人達に対して申し訳ないと思っていたからなんです。

ライヴで演奏した曲を煮詰めていく新たな試み

──バラードを禁じ手にしてきたことは、何か思うところがあったんですか。

清木場:禁じ手というか、僕の中でバラードは巧く唄えて当たり前なんです。決してバラードが嫌いなわけではないんですよ。歌の評価の高い人達は皆、バラードは確実に唄えて、その上でアップ・テンポの曲も唄いこなせている。だから「バラードは巧いよね」という言われ方は結構寂しいな、と(笑)。アップ・テンポの曲でもちゃんと主張できて、思いを伝えることができるというのをいち早く確立したかったんです。アップ・テンポの曲を唄いこなせるようになると、感情を込め過ぎない何気ない唄い方でもちゃんと説得力が生まれるんですよね。それがバラードに反映されて、ただ闇雲に感情を込めるのではなく、感情の起伏をちゃんと付けられるようになるんですよ。

──なるほど。ホーン・セクションを配した軽快な「五日間……バックレよう」があるからこそ「最後の夜」が活きるわけですね。

清木場:そうです。「最後の夜」をシングルとして出したのも、「五日間……バックレよう」というアッパーな曲が生まれて、ちゃんと唄いこなせるようになったと自分の意識の中で確信したからなんですよ。

──その「最後の夜」も然りですが、「サル」「月」「忘れないで」など、アルバムの収録曲にはすでにツアーで披露された曲も多々ありますね。

清木場:ツアーを回る中でアレンジの方向性が見えてきて、プロデューサーの考えるアレンジと僕のイメージするアレンジが凄く近いものになったんです。ライヴで演奏した曲をさらにアレンジして煮詰めていくほうがより音楽的だと思えた。本来はアレンジをしなくていいように作品を作って、それをライヴに持って行くんですけど、今回は逆でしたね。ツアー中に曲を作って、まだまだ活きる可能性のある曲をアルバムで成長させるというやり方に今回初めて挑戦してみたんです。

──如何にもライヴ映えしそうな曲が多いのは、そうした制作過程があったからこそなんですね。

清木場:やっぱり、ライヴを日々イメージしながら曲作りをしていますからね。レコーディングももちろん好きですけど、ライヴが一番楽しいので。みんなで一丸となって熱くなれるのはやっぱりライヴですから。

──ライヴで初披露した時とは雰囲気がガラッと変わった曲もあるんですか。

清木場:ありますね。「忘れないで」はアコギ一本の“ド”バラードでしたから。ソロ活動を始めた直後に温かい声を掛けてくれたファンの人達に僕は凄く支えられたし、その感謝の気持ちを込めて書いた曲なんです。

──中でも、スクラッチDJとラップ、テルミンまでを織り交ぜた「サル」は本作最大の異色作と言えますね。

清木場:人間いろんな感情が渦巻いているし、敢えて口にしない気持ちもあると思うんですけど、僕の場合はいいことも悪いことも全部言いたいんですよ。自分の生きるこの世界が動物園の檻で、僕がその中に閉じ込められたサルだとしたら一体どんな気分だろう? と考えて、あの歌詞をダーッと書き連ねたんですよね。テルミンは“清木場バンド”でキーボードを弾いている川村ケンちゃんが自信満々に持って来たんですよ(笑)。

──そのテルミンの味付けもそうですけど、「believe」や「天国は待ってくれる」などで聴かれるストリングスが過不足なく非常に効果的ですよね。バラードでのストリングスも決して甘さに流されていないというか。

清木場:かなり攻撃的なストリングスだと自分でも思うし、何故か僕の曲のアレンジではそうなってしまうんですよね。「believe」はミディアム・テンポですけど、弦が凄く攻撃的に後押ししてくれてますからね。

──今回、マスタリングはロンドンにあるメトロポリス・マスタリングで行なったそうですね。オアシスやユーリズミックスなどを手掛けたエンジニア、イアン・クーパーに作業をしてもらうために。

清木場:前作はL.A.でレコーディングして、サウンドがクリアでヴォーカルもちゃんと目の前にあるような録り方をやらせてもらったんですけど、今回はUKロックのようにもっとシンプルに、余り整理されていない生の状態で音を作っていく作業をやってみたかったんです。それを今の清木場俊介がやったらどうなるか、凄く興味があった。そのためにはそういう曲調のものを作らなくてはいけないので、ストック曲を一度棚上げにして、曲を新しく作ることにしたんですよ。みんな口を揃えて「ロンドンの音がいい」って言うし、それなら自分で行ってみないことには判らないと思ったから行ってみたんですけど、やっぱり凄く良かったですね。

──抜けが良く乾いたアメリカの音とは対照的に、イギリスの音はどこかウェットな印象が一般的にはありますよね。

清木場:でも、エレキ・ギターの音はイギリスのほうがパキッパキでシャリッシャリな気がして、僕は好きでしたね。アコギは逆に、L.A.のほうがカラッとしていていいのかもしれないけど。

──マスタリングの際に最も気を留めたのはどんなところでしたか。

清木場:ヴォーカリストの表情を余り出し過ぎないことですね。日本のエンジニアの方は、ヴォーカルにコンプレッサを掛けて、そこでバランスを取りながら楽器を後ろにした形を取ることが多いんですけど、アメリカやイギリスの場合はもっと平らなんですよね。よく聴くといろんな立ち位置が判って、凄く完成度が高い。ヴォーカルも楽器と並列だから、凄くバンドっぽいんです。レコーディングも“せーの!”で録るセッション的なもので、そういうバンド・サウンドっぽいところは凄く意識しましたね。僕が10代の頃に聴いて育ったのはメタリカやエアロスミス、レッチリとかでしたから。レッチリのギターのシャカシャカした音は特に今回意識した部分なんです。

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