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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】UNCHAIN(2007年8月号)- よりスタイリッシュに、より流麗に── 精悍なグルーヴと洗練されたメロディが凝縮した『rejoice』

よりスタイリッシュに、より流麗に──精悍なグルーヴと洗練されたメロディが凝縮した『rejoice』

2007.08.01

前作『departure』から僅か半年余りで届けられるUNCHAINの4thミニ・アルバム『rejoice』は、従来の音楽性を更に増幅させた多彩な楽曲が揃った充実作だ。日々のライヴによって課された幾多のトライアルを消化/昇華した末に彼らの音楽至上主義はより凝固なものとなり、その成長の跡が如実に表れている。とは言え、英語詞で"この非情な世界に愛をもたらそう"と臆することなく唄う彼らの音楽はまだまだ発展途上にある。それは制作過程にあるジグソーパズルのようでもあり、聴き手であるあなたの"Last Piece"が組み合わさって初めて過不足なく成立するのだ。(interview:椎名宗之)

愛があればこの非情な世界も乗り越えられる

──今年の1月、3rdミニ・アルバム『departure』発表を機に活動の場をメジャーに移したことで、環境の変化が随分とあったんじゃないですか?

谷川:
周りの環境は確かに変わりましたけど、曲の作り方は変わらずにマイペースでやってます。でも、最近はそれだと締切に間に合わないことに気付いて(笑)。だから、何事も前倒しでやるようにはなりました。あと、チケットを買ってライヴに来てくれるオーディエンスに対して、チケット代分以上に楽しませたいという責任感やプレッシャーを以前に増してひしひしと感じるようになりましたね。

佐藤:メジャーに行ったからというよりも、CDを出してツアーを回るたびにライヴでの課題が出てきて、それを改善していくことで徐々に変化してきたことのほうが大きいかもしれないですね。

──現時点でのライヴの課題はどんなところですか。

谷川:一番はオーディエンスとの一体感ですね。ただ、まず自分達が楽しまないとオーディエンスも楽しんでくれないので、常に精一杯楽しんでライヴをやることを忘れちゃいけないといつも思ってます。

──前作から半年余りで発表となる4thミニ・アルバム『rejoice』ですが、精力的にツアーを回る状況下でよくこれだけ充実した作品を完成させたなと思うんですけれども、4枚目となると作業的にはもう随分と慣れてきたんじゃないですか。

佐藤:そうですね。今まではレコーディングのペースがかなり遅かったんですけど、今回は1ヵ月で5曲録りましたからね。UNCHAIN史上最速のペースなんですよ。まぁ、やるしかなかったっていう事情もあるんですけど(笑)、思ったよりうまくいったので良かったですね。

谷川:最初はもう、絶対にできないと思ってましたから(笑)。

──最初からミニ・アルバムの体裁で行こうと考えていたんですか。

佐藤:そうですね。前作を制作してる段階で、次はまたミニにしようというのは決めてました。

──夏をテーマにした3曲(「I'll Remember」「Precious」「Summer Groovin'」)が収録されていますが、これは今の季節を意識して?

谷川:はい。今回は曲を作る前にリリース時期を知ってしまったので(笑)、夏っぽい曲が出来ればいいなという気持ちは最初にありました。

佐藤:今回は、ライヴでどう聴かせたいかっていうのを細かく考えたんです。タイトルの『rejoice』は“楽しませる”とか“喜ばせる”という意味なんですけど、そういう気持ちをバンドからリスナーに与えたいという意味が込められてるんです。CDを聴いただけでも映像が浮かぶような音作りを心懸けて、実際ライヴに来たらそれ以上に生の高揚感でグイグイ行けたらいいなと思って。もちろん夏っていうイメージもあったので、バーッと弾ける感じを出してみたり。

──特に4曲目の「Summer Groovin'」にはその弾ける感じがよく出ていますよね。その一方で、1曲目の「Sing Out Love」には“愛があればこの非情な世界も乗り越えられる”という普遍的なメッセージが込められいて、スケールの大きさを感じます。

谷川:僕は男女の恋仲をテーマにするよりも、できるだけ視野の広い観点で歌詞を書きたいと最近よく思っていて、音楽を通じてもっと大きな愛を感じ取って欲しいんです。そんな大きな愛や寛大な心を常に持っていれば、最近頻繁に起こる少年犯罪のような事件もなくなるんじゃないかと思ってこの歌詞を書いたんですよ。

──歌詞の中にもあるような、スティーヴィー・ワンダー的な人類愛というか。

谷川:そうですね。スティーヴィー・ワンダーを聴いているといつも大きな愛を感じるんですけど、僕もそれを伝えられればいいなと思ってます。

──頭からリスナーの心を一気に掴むような流麗なサウンドですよね。

谷川:サビから入る感じがいいなと思ったんですよ。CDショップの視聴機で聴いた時に最初にこれが流れてきたら“オッ!”と思うんじゃないかなと。

──2曲目の「I'll Remember」はミディアム・テンポで、目に浮かぶ景色は去りゆく夏というか。

谷川:この曲は、夏の中でもお祭り騒ぎをした後の寂しさみたいなものが表現できればいいなと思ったんです。景色で言うなら、夕日が沈みかけてる感じが出せればいいなと。この曲のメロディは3月のツアーの移動中に車の中で浮かんできて、頭の中で半分以上は作れたんですよね。

──普段からそうやってメロディが浮かぶことが多いんですか。

谷川:楽器を持ってない時に浮かんでくることが多くて。一番多いのが、自転車に乗ってる時とシャワーを浴びてる時なんですけど、この曲は急に車の中で浮かんできた。

──アレンジが凄く簡潔で、必要最小限の出音でまとめているのが特徴的ですね。

谷川:そうですね。構成的には間にギター・ソロを挟んだり、細かい工夫はあるんですけど。

──3曲目の「Precious」は個人的に一番好きな曲なんですけど、甘く切ないメロディが際立った、如何にもUNCHAINらしいナンバーですね。

佐藤:これは僕が作ったんですけど、やっぱり楽器を持ってない時にメロディ浮かんできて。結構ストレートな曲なので、一番ロックしたい時はこれ、みたいな(笑)。元々は全然違うシャッフルした感じの曲だったんですけど、みんなのところに持っていったら「もっとロックな感じにしよう」ってことになって。当たり前に過ぎていく時間の一瞬一瞬を大事にしていこう、というのがこの曲のテーマです。

谷川:その一瞬は永遠に等しいくらいに大切なんだよ、というのが一番伝えたいところですね。そのメッセージを夏の甘酸っぱさを感じさせるメロディに絡めながら唄ってます。

──一瞬の積み重ねこそが永遠に繋がりますからね。この曲は非常にライヴ映えしそうですね。

谷川:そうですね。もう何度か披露しているんですけど。

──UNCHAINの場合、ライヴで何回か演奏してから音源にすることはないんですか? ライヴでオーディエンスの反応を見て、アレンジを微妙に変えてみたりとかは?

谷川:そういうケースはないですね。やってみたいとは思うんですけど。

佐藤:先にライヴでやるよりも、レコーディングのほうが断然作業が早いですから。

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