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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】オナニーマシーン(2007年7月号)- 成長を拒否してますから

成長を拒否してますから

2007.07.01

アルバム発禁騒ぎや、ジャケット写真で金玉見えてる疑惑など、リリースのたびに何かと問題を起こしてるオナニーマシーンのニューアルバム『義雄』。今回のジャケット写真はおっさん! ......誰コレ!? 結成8年目を迎え、遂に実の父親までをネタにしてアルバムを作ったオナマシのイノマーさんに、どんなつもりでこんな物を作ってしまったのか直撃した。(interview : 北村ヂン)

成長を拒否してますから

──実の父の写真をジャケットにズドーンと使った今回の『義雄』ですが、まあ親を色んなことで使うっていうのはミュージシャンでも、お笑いの人なんかでもよくやることですけど、大体そういうのって20代くらいの若気の至りでやっちゃうネタじゃないですか。

イノマー:あんなもん親不孝でしかないですからね。

──でも、これだけ年老いた父親を使うっていうのはなかなかないですよね。

イノマー:68才ですからね。埼玉の田舎で母ちゃんとふたりで年金生活しているじじぃを引っ張り出してきて……かわいそうな話ですよ。本人もよくわかってないですからね。自分がどうなっちゃってるのか。「ご飯食べようか」って言ってムリヤリ写真館に連れてって写真撮っただけなんで。でも、自分の顔と名前でCDが出るっていうことは楽しんでるんじゃないですかね。取材とか受けてもひとりでしゃべってますからね、アルバムのことなんて何にもわかってないのに。まあ8枚目だから色々とやりつくした部分もあって、今回はもう一回原点に戻ろうかなと……。

──まあ、親は原点っちゃあ原点ですけどね(笑)。

イノマー:父ちゃんのザーメンに戻ってね(笑)。

──原点といえば、初期のアルバムでは買いづらくならないようにバンド名も「オナマシ」って書いたり、ジャケットはかわいいイラストにしようみたいな気を遣ってましたけど、今回は相当買いづらいですよ。

イノマー:買いやすいかなって思ってたんだけどね。出来上がってみたら、これ買いづらいなって。逆に変態だもんね。これを中高生の子が買うっておかしいですよ。最初の『恋のABC』とか『彼女ボシュー』の頃って世の中的にも日本語パンクブームで狂ってた時期なんで、その渦の中にいるのが楽しいなと思ってそういうやり方でやってたんだけど、ブームも一段落して、静かな海を見ながらどうしようかって思ったときに、頭に浮かんだのが義雄の顔だったんですよ。まあ自分が40才になったっていうのもデカイですね。

──40才になったら普通はこういうことやらなくなるもんですけどね。まあ、オナニーマシーンも結成8年目ですしね。

イノマー:8年といってもギュッと凝縮したら3ヵ月くらいですけどね。なるべく動かないで、体力を使わずに、地味に10周年、20周年ってやっていきたいと思ってます。

──ライブ、全然やらないですからね。そういう意味ではスタジオバンドですよね。

イノマー:ある意味ビートルズですね。ストーンズというよりはビートルズ。フィル・スペクター的なスタジオワークというか……。 アゴ(LOFT RECORDS) スタジオにもろくに入らないじゃないですか。

イノマー:スタジオも好きじゃない、ライブもそんなに好きじゃないっていう。何でバンドやってるんだろうって感じだからね。曲を作るのも別に好きじゃないしなあ。

──でも、オナマシの曲の何がスゴイって、ほとんど全曲コンセプトが同じなのにこれだけの曲数があるってことですよね。

イノマー:ボツにした曲を含めれば100曲くらいは作ってますからね。そのほとんどに「オナニー」って言葉が入ってますから、偉大なるマンネリズムですよ。そういう意味では8年間ブレてないですね。サウンドが大人っぽくなったりなんてこともないし。ずーっとC、F、Gのスリーコードですから。オノチンのギターも『恋のABC』の頃から変わってないし。成長を拒否してますから。大人の階段を全く上がってないんですよね。常にラママ以上ラママ以下というか、低いステージでずっとやってるという。

──お客さんから見下されてるステージですね。

イノマー:それがいいんですよね。ロフトだと客席を見下ろしちゃうじゃないですか、RoofTopでこんなこと言うのも申し訳ないけど、それが苦手なんですよね。

──ロフトのステージで脱いだら、確実にチンポがお客さんの目線の高さになっちゃいますしね。

イノマー:やっぱり目上のチンポってよくないですよ。自分の中でも、あんまり上から物を言いたくないっていうのはあるんで。お笑いでもロックでも、下から上をつつくのが一番楽しいじゃないですか。

オナニーマシーンに対して本気で怒ってもしょうがないですからね

──下から上をつつくといえば、今、日本で二番目に著作権にうるさいと言われている松本零士先生に噛みついてますけど。

イノマー:「淫河鉄道69」ですね。……なんであんなの作ったんだろう(笑)。いわゆる松本零士さんと槇原敬之さんとのいざこざがあったじゃないですか。いい大人がパクッたパクられたって言ってるのってすごいくだらないし、肝っ玉のちっちゃいこと言ってるなって。だからそこに便乗できたら面白いかなっていう感じですかね。

──むしろ怒られたいという(笑)。

イノマー:多分、誰からも相手にされないまま終わっていくと思いますけどね。こんな曲にヘタに文句つけたら自分の方が汚れますよ。インディーズ業界の末端でやってるバンドがふざけてやったことに対して、松本零士さんが怒ってきたら逆に拍手ですよね。それで、みのさんの「朝ズバ」とかで軽く取り上げてもらえたら嬉しいんですけどね。「こんなバンドがいるんですよ! オナニーマシーン!」って(笑)。

──朝じゃあ絶対に無理でしょう。

イノマー:あとは、根本敬さんの「因果鉄道の夜」っていう本があるんですけど、それがボクの人生のバイブルでもあるんですよね。もちろん「銀河鉄道999」もすごい好きで読んでたんで、そういう好きな物にリスペクトとして作ってみたら完璧にちゃかしたものになってしまったと。「チンポはオナニーを裏切らない、オナニーもチンポを裏切りはしない」って(笑)、ねえ。

──でもオナマシってこれだけのことをやっていながら、今までそんなに大問題って起こってないんじゃないですか。

イノマー:オレが電車で痴漢して捕まったり、レイプしたりしない限り、誰も騒がないんじゃないですかね。オナニーマシーンに対して本気で怒ってもしょうがないですからね、いまさら。そういうポジションを8年かけて作れたっていうのはありがたいなって思いますけどね。特殊学級みたいなもんですから。

──オナマシからは、そういう変なことをやって話題を作って売れよう、みたいな匂いが全くしないのがいいんですかね。

イノマー:まあ、売れなくてもいいとか、聴いてくれる人さえ聴いてくれればいいっていう考え方は好きじゃいないんだけど、そういうことを踏まえた上でオナマシは売れなくてもいんですよ。まあ売れて欲しいですけど、どこか一周したところで聴いてくれればいいと思ってるから。離れていく人も多いけど、入ってくる人もいますからね。だからゼロになることはないんですよ。日本のオナニー人口、童貞人口、モテない人口っていうのは多いんだなって思いますね。かといってオナニーマシーンを聴いたところで助かるかっていうと何にもならないんですけどね。

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