日本最後の"国産ドメスティック・ロックンローラー"、真夏の革ジャン反抗賊ことマックショウがまたやってくれた! 前作『ブルメタ★反抗賊』から1年振りに発表される通算5枚目のフル・アルバム『フルスロットル・レッドゾーン』は、めくるめくナナハン・サウンドに飢えたテディ・ボーイ&テディ・ガール達を震撼させること必至の大暴走活劇ロックンロール! そして身を焦がす甘酸っぱい切なさが過去随一の徹頭徹尾本気モード! 昭和82年も革ジャン&グリス・スタイルで無軌道に突っ走る兄貴達を直撃すべく、彼らのアジトである"ロックスビル・スタジオ・ワン"を直撃した!(interview:椎名宗之)
サウンドの良し悪しよりも、もっと大事なことがある
──新作の話に入る前に、この都内某所にある(笑)プライヴェート・スタジオの話を訊きたいのですが。以前は池尻大橋に隠れ家のようなスタジオがありましたよね。
KOZZY MACK(vo, g):そうですね。前は池尻で倉庫を借りて、そこでレコーディングとかをやっていたんですけど、いずれ自分のスタジオが欲しいなと思っていて。それでようやく去年ここを作ったんです。
──完全にDIYな感じで?
TOMMY(b):まぁ、大工仕事だけは後輩にやらせて(笑)。
──池尻大橋のスタジオとは、だいぶ設備が変わったんですか?
KOZZY:全然違いますね。マックショウでレコーディングを全部自分達で取り仕切ってやるようになった時に、日本のスタジオがクソ高いってことを初めて知って、これは何とかしたほうがいいんじゃないか? と思ったのがきっかけで。実際に自分で録ってみたら“プロよりも僕のほうが耳いいんじゃないの?”って感じて(笑)。それで、これは全部自分達でやっちゃったほうがいいのかな、と思って。その時ちょうどプロ・トゥールスとかが出てきて、宅録みたいなものの敷居が下がってきた時期だったこともあったし、自分達でできることってもっとあるなと思ったんですよ。でもまぁ、マックショウとしてはサウンド云々よりもロックンロールをプレイする場所っていう意味で自らスタジオを始めたんですけどね。サウンドの良し悪しよりも、もっと大事なことがあるんだよ、っていう。で、そこから少しずつ機材を揃えていって、それが今回やっと着地した感じなんです。
──正式名称はあるんですか?
KOZZY:ありますよ。“ロックスビル・スタジオ・ワン”と言います。“ツー”はいずれ、また都内某所に作ります(笑)。
──その新しいスタジオで生まれたのが今回の『フルスロットル・レッドゾーン』というわけですね。具体的にはどういう部分に成果が表れていますか?
KOZZY:今回特に気を付けたのは、CDショップでメジャーの作品や海外の作品と聴き比べた時に遜色のない音を作るっていう部分ですね。いわゆる“一般的に聴き易い”っていうところも少しは考慮したんですよ。「マックショウ、曲はいいけど聴きづらいな」っていうのも今まではあったと思うんで(笑)。
──でも、そういう聴きづらい音が好きだというファンも多いんじゃないですか?
KOZZY:まぁ、初めの頃は荒削りなサウンドってところに付いてきてくれた人達もいっぱいいたと思うんですけどね。でもそれだけじゃないよっていうのを今回は出せたかな、と。バラードの良さを素直に聴けるようにしたりね。そういうタイトなサウンドっていうのはマックショウでやってこなかったし、それを自分達の手に入れた機材でどこまでやれるかと思って。
──そう、演奏が非常にタイトになったのは一聴して判りますよね。それとKOZZYさんが仰るように、「サンシャイン・ガール」を筆頭に聴かせるバラードが増えたな、と。
KOZZY:そうですね。やっぱり5枚目にもなると、イメージで作った曲や適当に作った曲はさすがに入れられないなと思って(笑)。そういうのはもう笑えねぇだろ、っていうのがあったし。言い方は悪いかもしれないけど、昔からあるような幼稚で単純な言葉でどこまでやれるかっていうのを追求してみたかったんですよ。
──シンプルなスリー・コードでどこまでやれるか、とか。
KOZZY:そうそう。今まではコスプレ的な笑いも含めてやっていたのを、今回はかなりストレートにやるぞ、と。まぁ、今の時代にこの炎上したジャケットは決してストレートじゃないですけどね(笑)。
──相当な変化球ですよね(笑)。そんな部分も含めて、『フルスロットル・レッドゾーン』というタイトルが示す通りにバンド自身もレッドゾーンまで振り切るぞ! という感じなんですね。
KOZZY:うん、“もう無理!”ってところまで(笑)。“そろそろ本気だぞ!”みたいなね。
──今までの作品は、いい意味で音がペラッとしていたじゃないですか。ロックのいかがわしさが充満しているかのように(笑)。
KOZZY:そうですね、“ドラム聴こえねーよ!”とかね(笑)。
──それが今回は各パートの音が比較的クリアで、バランスが凄くいいですよね。
KOZZY:だから今回、僕がちゃんと聴かせたかったのはそこだけですよね。こんなリーゼントで革ジャン着てスリー・コードのロックンロールをやってる奴でも、スタジオを持って、その辺のお高いスタジオで録ったものと同じだけのサウンドが作れるんだよ、っていうのをアピールしたかった。あとはやっぱり、割と王道的なところで勝負する時が来たのかなと思って。有り難いことに、これだけたくさんの人達に応援してもらってるわけだから。
──いつも本気じゃなかったわけではないですよね?
KOZZY:もちろんいつも本気だったんですけど、途中で“まぁ、いっか”ってなってた(笑)。
──でも、今回はドラムもちゃんと聴こえますからね(笑)。
BIKE BOY(ds):ただ、レコーディングはやっぱりライヴとちょっと違うんで…。
KOZZY:せっかく強気な発言をしていたのに、またそんな弱気な発言を!(笑)
BIKE BOY:スタジオは苦手なんですよ、なんか実験室に入ってるみたいで(笑)。お客さんがいない中で気分を盛り上げなきゃいけないし。でもまぁ、レコーディング自体は面白いですよね。録ったものをすぐに聴けるし、聴いて「ここちょっと遅いな」って思ったらすぐに録り直せるし。
──そこはスタジオを所有している強みですよね。TOMMYさんはアルバムが仕上がってどうですか?
TOMMY:演奏面は今までと一緒ですね(笑)。さっぱり進歩してないですよ。だから演奏が巧くなったって言うと語弊があると思うんですけど、今回はちゃんとやっただけなんです(笑)。
KOZZY:今までのアルバムは、1、2回演奏したら“もういいじゃん”って感じだったんですよ。音が悪いからこそ聴き込む良さみたいなものってあるじゃないですか。そういうのをちょっと狙っていた部分もあったんですけど、今回はもうそれは必要ないかな、と思って。僕も自分でソロ・アルバムを出したり、他のアーティストのプロデュースをしたりする中で、マックショウを今後どういうサウンドで打ち出していくかをずっと考えていたんです。ひとつには“今まで通りラフなものでいいんじゃないかな?”っていう考えもあったんだけど、曲が出来上がったら“これはちゃんとしたサウンドで出したい”って思い直した。まぁ、クオリティの高い低いの問題だけじゃないとは思うんですけどね。