“愛の高速道路”を探し求めて…
──3曲目の「Cherry」はこのアルバムの中で最も性急でハードな曲ですけど、「Cherry」と聞いて連想するのはやはり…。
ehi:そうです、そうです。その通りでございます。
Nao★:この曲のサビもヒドいよな?(笑)
ehi:えーと…「童貞を彼女に奪われた」って唄ってます(笑)。
Nao★:かわいそうやわぁ…(笑)。
ehi:今振り返ると、我ながら凄いこと唄ってますよね(笑)。「Cherry」は“サクランボ”=“童貞”っていう意味もありますけど、同性愛を意味するダブル・ミーニングもあるらしく、女が女を好きでもいいかな? っていうのもあるんですよね。好きな女を別の女に取られた、って意味に取ってもらっても面白いかな、と。
Nao★:でも、私がバンド加入を誘われた時に音を聴かせてもらって、この曲が一番好きだったんですよ。“この曲、やってみたい!”ってすぐに思ったんです。“このバンドでやってみたい!”という気持ちを一番掻き立てられた曲なんですよね。
──4曲目の「MOSQUITO」はWho the Bitch一流のポップ・ソングで、とても親しみやすいですね。
ehi:蚊の気持ちになって空中を飛んでいて、自分の好きな血液型はAか、Bか、ABか……。
──あるいはO型か?
ehi:いや、Oは入ってないんです。たまたま譜割が合わなかったので(笑)。
Nao★:でも後付けで、自分の好きな人がO型やから吸わない、ってことにしようと(笑)。
ehi:だから、“狙った獲物は逃さない!”っていう女性の心理を蚊になぞらえて唄ってる曲ですね。
──歌詞に関しては、yatchさんは完全にお2人にお任せなんですか?
yatch:はい、お任せです。
ehi:でも、yatchはyatchなりに単語を幾つか持ってきてくれるんですよ。「こういう言葉もあるよ」ってマメにリストに書き出してくれることも稀にあるんです。
──それは、如何にもWho the Bitchらしいスラングに類する言葉とか?
yatch:そうですね。あとは響きのある言葉ですかね。でも、そういう言葉を渡してみても、採用されるケースはほとんどないですけどね(笑)。
ehi:なかなかねぇ…(笑)。最初はホニャララ英語で唄うから、そのホニャララ英単語に合わせる時に、意味がどれだけ良くてもメロディに合わないと唄えないんですよ。タイミングを見計らって、だいぶ前にyatchが作ってくれたメモから引っ張り出して使う言葉はあるんですけどね。
──「My Point」はちょっと変化球っぽいナンバーですが、アルバムの良いアクセントになっていますよね。
Nao★:頻繁にライヴでやることはないけど、長い時間できるライヴの時に組み込む感じの曲ですね。
──この曲も何か尾籠(びろう)な意味が込められているんですか?(笑)
ehi:この曲の主人公は“私を見て!”的な女なんですよ。で、“愛の高速道路”を探してる、っていう…。
──あ、“愛の高速道路”ですか!?(笑)
ehi:ええ。“look for the way to the love highway”って唄ってます。“love highway”って、外国では凄くダサい言葉だと思うんですよ。それをあえて使ってみたんです。日本語で言えば、“人生の片道切符”くらい恰好悪い言葉だと思いますよ(笑)。
Nao★:ああ、確かに“人生の片道切符”はダッサいなぁ(笑)。
ehi:向こうの人には“love highway”ってタブーに近い言葉なんやろうけど、私は日本人やし、まぁええかな、と。
ダサい部分が自分達にとって凄く大事
──最後の「明日を撃て」は唯一の日本語詞ですが、これは英語で唄うよりも日本語のほうが肌艶が良いという理由からですか?
ehi:日本語がメロディに乗るなら、なるべく日本語で唄いたいとは思ってるんですよ。この曲は、最初から日本語がスポンと乗りそうな感じだったんですよね。この曲が完成しつつある時にNao★が加入したので、とりあえず1番の歌詞は私が書いて、2番はNao★に書いてもらうことにして。
──“ジタバタするな、航海は続く”という歌詞もあって、Who the Bitchには珍しく非常に前向きな曲ですけれども。
Nao★:そこは後半で私が付け足した歌詞なんです。“チクタク刻め、後悔のない日”っていう歌詞が前半にあったから、同じ語呂で意味の違う言葉を入れるとキュッと締まるかな、と思って。
ehi:人生につまづいても、それでもなお前に進んでいこうっていう、唯一まともな内容の歌かもしれないですね(笑)。
──ショボクレることなく、潔く前に一歩踏み締めているのがいいですよね。
ehi:反省してない感じがいいですよね(笑)。いい意味で開き直っているというか。やっぱりこういう、余り深く考えすぎない方向性がいいんだと思うんです。メンバー各自、いろんな音楽をやってきたけれど、こうしてWho the Bitchでやってる音楽が一番肌に合ったモノだったのかな、っていう。実際、残っていく曲って余り考え込まずに作ってるんですよ。メロディやアレンジを突き詰めて考えた曲のほうが残らないんですよね。Aメロからサビまでがツルッと出来て、アレンジもみんなの頭の中で一斉に浮かぶような曲のほうがポップ性も強いし、ライヴで演奏し続ける確率が高いんです。だから、今はあえて余り深く考えないようにしてますね。
──身の丈以上のことをやらない、極々自然な感じがいいんでしょうね。ライヴを観てもそうですもんね。「L・O・V・E!」のコール&レスポンスが湧き起こるライヴは、今やWho the Bitchにしかできないでしょう(笑)。
Nao★:はははは。無理やり言わせてますからね(笑)。
ehi:そういう、今どき誰もやってないダサいことをやりたいんですよね。ダサいか恰好いいかは聴く人、観る人が決めることだから判らないですけど、ダサい部分っていうのが私達にとっては凄く大事なんですよ。
──ああ、よく判ります。ダサい、クサいが凄く恰好良く思える音楽ってあると思うし、際限もなく恰好つけたライヴを見せられても、鼻白むことが多々ありますからねぇ…。そういう価値観は年齢的なものもあるんですかね?
ehi:そうですね。恰好つけたい時期はもう終わったというか。私達の人生も、ぼちぼち中年の域に達してきましたから(笑)。
──いやいや、「股の間のイチモツを振ってみろ~!」とギターのネック…文字通り“サオ”を突き立てて暴れるなんて、駆け出しのバンドにはとてもできない芸当ですよ!(笑)
Nao★:いやぁ、あの“イチモツ”がなければもっと恰好いいと思われるんじゃないですかねぇ?(笑)
ehi:あれはですね、バンドの合宿で踊ってる時に思い付いたんですよ。私達はリハの時でもああいうノリのMCをいつもやってるんです。
Nao★:話す内容をカッチリ決めてるわけじゃないんですけど、「こんばんは~! Who the Bitchですッ!」って勢い付けてMCするんです、誰もいないのに(笑)。
ehi:リハの最中は、メンバーをどれだけ笑わすかが大事だったりしますからね。それで「ホレホレホレ~!」とか言いながら悪ノリして(笑)。