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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】Good Dog Happy Men(2007年6月号)- 現代における一番新しいお伽噺。三部作で構成される"GOLDENBELL STORY"の第一章が幕を開けた。

現代における一番新しいお伽噺。三部作で構成される“GOLDENBELL STORY”の第一章が幕を開けた。

2007.06.01

お伽噺に隠されたリアリティー

──ep1は4曲なので1曲ずつ聞きたいんですけど、『Nightmare's Beginning』(M-1)はいろんな登場人物が出てきますよね。門田さんがこれを鳥獣戯画と言うのは言い得て妙というか、東京も鳥獣戯画みたいなものですからね。

門田:そうなんです。鳥獣戯画を見たときに現在の東京に当てはまるなって感じたんです。今って内側を外に出しすぎているというか、生きていて奥ゆかしさといったものを感じない。でも俺はそれを避難して描いているわけではなくて、すり減らしながらサヴァイブしようっていったらそうでもなくて。

──「What a wonderful world!」という言葉が何度も出てきてるから、否定的じゃない感じはしますよ。

門田:現象を現象として捉えないとダメだよっていう意識があるんです。現象は本質なんじゃないかな。事実として本質的なことを歌おう。鳥獣戯画も、こんなに馬鹿な生き物が馬鹿なことやってるんだぞって描きながら実は君たちだよって。

──それが人間の滑稽さだったりね。

門田:それをやりたいって前々から思って想像しやすいテーマを探していたんです。その時に上野であった展覧会でタイル絵の鳥獣戯画を見て、インスピレーションが降りて来て…。

──発想がおもしろいですよね。「もしノアの箱船に乗り遅れた生き物がいたらどうだろう」という。

門田:『ノアの箱船』に関しては、昔大学の授業でディズニーの『ノアの箱船』を見ただけなんですよ。それにサントラ付けるとしたらこんな感じだったんです。

──大混乱してますもんね(笑)。ノアの箱船という例えから、権力やお金を持つことに一番の価値があるとか、そういう価値観の物差しを感じたんですけど。

門田:音楽業界のメタファーですね。俺たちは海亀なんです。

──お伽噺という形を通して真実を歌っているということですね。『ハイストレンジネス』(M-2)でもかなりエグいことが歌われてますが…。

門田:『ハイストレンジネス』はどちらかというと逆なんです。わりと日常的に聞く言葉で歌っているんだけど、1番の歌詞が「お尻を触られた」、2番は「ミサイルが飛んできた」になっているんです。いつも見るニュースの「殺人事件がありました。次は天気予報です。」と一緒なんです。現代的な一部分を無責任に歌っている。

──この曲は2007年の世界をリアルに歌っている感じがしますね。

門田:the GOLDENBELLCITYの中にも時間軸は普通にあって、この曲に関しては、現代のthe GOLDENBELLCITYを歌ってるのかもしれないですね。だから『Nightmare's Beginning』と『ハイストレンジネス』の時間軸はものすごく離れているかもしれないですね。ただ、これに関してのもうひとつの意味はみんなが超常現象だと思っていることは全然たいしたことではなくて、UFOも幽霊も超常現象と捉えて納得したいだけなんですよね。超常現象と捉えれば関係ないこととして済む。北朝鮮が日本海にミサイルを落としても何のリアリティーも感じていないんです。今まではイラク戦争とか遠い国のお話だからリアリティーがなくて当たり前って思ってたけど、日本に落とされてもリアリティーはないんですよ。だからこれは“超常現象”なんですよ。

──超常現象として認識するということは想像力の放棄ですよね。それに対する危惧は曲の終盤にわざと聴こえづらく歌われてますね。

門田:本当に世界は単純だと思いますよ。自分が生きてる世界が世界なんですもん。そしたら何も要らないですからね。今持ってる90%は捨てられます。例えば六本木という街も無駄の塊。全部捨てられる部分。

──架空の街のことを歌っているのに、実はすごくリアリティーがあるっていうのがおもしろいと改めて感じますね。

門田:それが俺たちのしたいことだから。

──『雨と仲良く』(M-3)はすがすがしい歌ですが、これは街のどの通りをテーマにしているんでしょうか?

内田:俺はストーリーの中で、ノアの箱船に乗り遅れちまった海亀が、雨降ってるから仲良くしようかなっていうイメージ。上陸前ですね。この街に関係していることを歌っているけど、街の中枢には入っていない。

──イメージは港の入り口みたいな?

内田:そうかもしれない。絵の中にも小さな仕掛けがありますから視覚的にもおもしろいと思ってくれたら嬉しいです。

──『Groria Streetから愛を込めて#1』のGroria Streetはジャケットには描かれていないですよね?

門田:いや、『Groria Streetから愛を込めて#1』の歌詞の後ろに描かれています。

内田:初めてそこでGroria Streetが見える。

門田:この曲に関しても三部作の#1~#3まであって、関連性としては一人の旅人がずっと旅をしているだけの話なんです。それに憧れていた子供が一緒に旅をするんだけど、定住する街と愛する人を見つけて生活に戻っていく。でもこの人はずっと旅をしているんです。この曲を作ったのは、こういう物語を作って歌うことにドキドキできるかなっていうのを知りたかったんです。自分は旅人なのか子供なのか。そしたら意外と俺は子供のほうだったんです。その視線で書いた。それが面白かったな。

──まだ明かせないかもしれないけど、主人公が旅人になるってことはあります?

門田:可能性としたらありますし、ひょっとしたら街の誰かが死んでいくかもしれん。『Groria Streetから愛を込めて #2』を聴いたらビックリするかもしれない(笑)。

時代ごとの機材を調べてレコーディングを

──今回レコーディングではアナログレコーディングをあえて採用したそうですが…。

17_ap03.jpg門田:1920年代をテーマにしている曲だったら、その時に存在した機材で録ってます。70年代にしたいねって言ったらプロトゥールスを使ってそうするのではなく、音楽の歴史を辿って70年代に使っていた機材や、録音方法を調べて録りました。 韮沢 例えばその時代にエレキはないから、アコースティックベースを使って。古い年代の曲とかは、マイク1本で録る。みんないっぺんに録るからマイクの目の前で演奏して、門田が後ろでギター弾いて、ドラムが向こうの方で叩いているっていう感じ(笑)。

──そんなに失敗できませんね(笑)。 韮沢 ミスはしましたけど、それは採用してます。

門田:20年代にミスは直してないと思うよ(笑)。

内田:ミスではなくて、それは俺らの演奏だった。

──そうした録音方法によって、音質、空間、温度、湿度を大事にしたそうですね。

内田:音質の概念は俺らは違う。汚い音もいいなって思う。すごくあったかい音でもあるし、曲によっては冷たい音でもある。それが俺らの一種の表現方法ではある。

門田:今のバンドってボーカルが違うだけでみんな一緒に聴こえる。シンバルは耳に痛いし、ギターも強く弾いたら心臓が痛くなるんですよ。そういう音が欲しかった。コンプレッションのひとつにもこだわって、他のバンドと同じ音にしたくない。大地が叩いてる、武瑠が叩いてる、韮が弾いてるってわかってもらいたい。

──でも、1920年代風の曲は今回ないですよね?

門田:今回は1970年とか2007年とかだから極端ではないんですよ。ただ2枚目はめちゃ極端(笑)。年代が離れているから。

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