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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ART-SCHOOL(2007年3月号)-「僕はここにいるんだよ」。詞で語られる木下理樹のリアル

「僕はここにいるんだよ」。詞で語られる木下理樹のリアル

2007.03.01

自分のために詞を書いて、自分のための曲を作る

──全体的に人間の心情、内面を表してる詞が多いと思うんです。木下さんってたくさん話すタイプじゃないと思うので、自分を一番表現できる場所が詞の中でだったりするのかなと思ったんです。

木下:そうなんですよねー。今ってブログでも自分をさらけ出せるじゃないですか。でも、ブログっぽい歌詞にはしたくない。確かにそこでバランスを取っているような気がしなくもないですねー。そんなに喋る方ではないですから…。

──ここでバランスをとって自分を保つ…。あと、ステージにしてもすごくクールなんですが、こうやって喋るとどこか優しい人なんだなっていう感じを受けるんです。『アダージョ』(M-5)で、子供の声が入っていて、とてもホッとした気持ちになったんです。

木下:音楽に関してもそうですけど、ピュアな人が好きなんです。でも、俺が思うピュアって一般で言うピュアとはかけ離れていると思うんです。中島らもさんがピュアで好きだけど、世間的にはピュアではないじゃないですか。だからわかんないんですけどねー、それに関して言えば。でも、ピュアなものって見てると切なくなりますよねー。胸がいっぱいになりません?

──胸がいっぱいになる感覚はわかりますけど、切なくなるというのは…はい。ところで、『テュペロ・ハニー』と『LUNA』の2曲に「男らしく生きろ」というフレーズが出てきて、この言葉に妙な執着心を感じました。

木下:これは何なんでしょうかね(笑)。僕が育った大阪シティーは、「男子たるものいつでも強くなきゃいけない」「女の子を守らなきゃいけない」「明るくなければいけない」とか、そういうのが強かったんです。これは前から思ってたんですけど、「そもそも自分も守れないのに、女の子を守れるわけねえだろ!!」って(笑)。だからずっとコンプレックスがあったんです。スポーツもできないし…。でも、これは過去のこととして面白いかなと思って書いたんです。

──『テュペロ・ハニー』には「Falling down」というフレーズが入っているんですが、こういう詞を使うところが、木下さんだなと。

木下:いやいや(笑)。「落ちていくことを大切にするんですね」ってよく言われてるんですけど、ちょっと待てと。それを大切にしてたらそもそも音楽なんてやってないから(笑)。そうじゃないんですよ。…どんな捉え方をしてもらっても良いんですけどね。「僕はここにいるんだよ」っていう詞なんですよ。

──木下さんの存在の主張?

木下:“ここにいるんだよ”というか、“ここにいてもいいんだよ”っていうことです。包まれる感じの歌詞って最近少しずつ書けるようになってきたんです。家で一人で音楽を聴くことが多くて、ある曲を聴いた時に、包まれるような感じがしたんですよ。でも思えば俺がそう思えた音楽って、全部自分のために作られた曲ばかりなんですよ。だから、共感できたというか。

──誰かのための曲ではなく自分のための曲。

木下:そうじゃないといやらしくなっちゃうから。癒し系の曲ってあるじゃないですか。でも、そういうのって俺は癒されない。むしろやさぐれていく(笑)。そういうのはやりたくないんです。

──では、木下さんにとっての音楽って何ですか?

木下:音楽は好きです。音楽を愛してる。それが全てです。あとはメッセージ。メッセージを歌うようなアーティストっていっぱいいると思うんですけど、僕はそういう人間にはなれない。僕は自分のために詞を書いて、あとは聴く人がそれぞれ感じてくれればいいかな。

──自分のために書いた音楽で多くの人が共感してるじゃないですか。それに対してどう感じます?

木下:例えばレディオヘッドとか、シガー・ロスとか熱狂的なファンに支えられてますよね。もちろん音楽が素晴らしいというのがあるんですけど、一人になれる音楽なんです。僕らもそうなりたいと思います。

── 一人になれる音楽とは?

木下:シガー・ロスをホールに見に行ったことがあるんですけど、ホールでロックバンドって退屈なんじゃないかとか壁があるんじゃないかとか思っていたんです。でもそのライブは5本の指に入るぐらい感動したんです。壁があるから逆に良かったというか。そもそもアーティストの気持ちなんて、一緒に育った兄弟でもない限りわからないじゃん。でも、一人のままでいいんだよっていう音楽に聞こえたんでH?す。そこにすごく感動した記憶がある。

──無理矢理輪に入らなくてもということですか?

木下:そうそう。輪の中にはいると思うけど、自由でいけるというのが良かったんです。

──それはART-SCHOOLのライブにも影響を受けてますか?

木下:そういう要素はいっぱいあると思いますよ。僕自身、ファンのためにやろうとか思わないですからね。いやらしいのがいやなんです。うさんくささとかいやらしさとか自分の気持ちが詰まっているものって、音楽の中にはあっていいと思うんだけど…。その辺は今でも揺れる場面がたくさんあるので、なんとも言えないですけどね。

──大きなフェスに出られていて、周りのバンドは一緒になって盛り上がろうっていう中で、バンドとの温度差を感じることってありますか?

木下:僕らが変わってるんですよねー(苦笑)。あんまり居場所がないというか、逆に居場所があってもしょうがないなって思う。そういう意味ではいいんですけどね。

──居場所がない分を曲の中で「僕はここにいる」っていうところなんですかね。

木下:あるかもわからないですね。

──今回ツアーもファイナルがC.C.レモンホールでワンマンですね。

木下:鑑賞するというか、僕はシガー・ロスを椅子席で見たときにスタンディングより感動したから、そんなに不安感とかないですよ。音楽に集中できるのかなって思います。

──会場もいつもより大きいし、不安はないですか?

木下:不安はないですねー。フェスとかでデカイとか出てますからねー。いいライブをしたいと思うだけで、そういう面でも自分達の不安はあるけど、ここでやることに対してのプレッシャーとかはないですねー。あとCD買ってもらえたらいいです。

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