K.O.G.A.Recordsのレーベルオーナーでもある古閑氏率いるROCKET Kのニューアルバム『MIDNIGHT LOVER』発売!ハイセンスなポップメロディー&グッドロッキンオリジナルの数々が収録されたこのアルバム。単純に深夜の下北でお酒を浴びてるだけではないということを証明した1枚となった。 このアルバム、そしてシェルターから下北沢まで、シェルター店長西村をインタビュアーとして、いろいろとお話を伺ってきました。2人の間に、深夜のシェルターのようなゆったりとした時間が流れていました。(Interview:西村仁志(下北沢シェルター店長 / text:やまだともこ)
赤松、デモのCD-Rを無くす?
西村:ROCKET Kの『MIDNIGHT LOVER』はもう売ってるんですよね?
古閑:うん。今ひとつ伸びが足りない(苦笑)。自分の慰めもあるかもしれないけど、長くやってるとそういう時もあるなって思っちゃうよね。どう考えてもこれが一番の自信作だったんだけど。
西村:ファーストの『REVENGE OF THE GROOOVIE DRUNKER!』から聞いてきたけど、詰まってる感じがして、これが絶対一番いい作品だと思うんですけどね。
古閑:聞いた人はいいって言ってくれるんだけどCDは売れない時代だし、それを打開するためにワンマンやったりRooftopに出してもらったりもして、協力を得てやってるところもありますね。作品としては一番好きなアルバムです。
西村:古閑さんってレコーディング期間中に飲みに来てるんで、制作段階を聞いてるパターンが多いんですよ。だから発売する頃にはアルバム1枚聞き終わっちゃってる(笑)。
古閑:(笑)僕が聞かせることもあるけど、だいたいギターの赤松が絶対に途中段階を聞かせに行ってるでしょ。
西村:フロント2人は酒飲んでると必ず「かけろ」って言いますもんね。「CD-Rだとかかりづらいんですけど」って言ってるのに…(笑)。
古閑:しかも、赤松はその時点で酔ってCD-Rを無くすっていう(笑)
ROCKET KとVENUS PETERの切り替えスイッチ
西村:ところでROCKET Kっていつからやってるんでしたっけ?
古閑:リリースしてから5年だから、構想を練ってるころから考えると6年ぐらいになる。実はVENUS PETERの活動期間は3年半だから、VENUS PETERよりも長くやってるんだよ。VENUS PETERは、最初のライブが原宿クロコダイルでTHE VELVET CRUSHの前座だったので、これはすごいって話題になって、人気が出るべくして出てしまった感じはありましたね。
西村:デビュー・ライブがTHE VELVET CRUSHって相当なもんですね。ちなみにROCKET Kの初ライブは?
古閑:下北沢CLUB Queかな。譜面台立ててライブやって「古閑さん、ロックが譜面台ですか!?」っていろんな人に言われた覚えがあるよ。
西村:ちなみに吉村さん(bloodthirsty butchers)も毎回譜面台立ててます(笑)。
古閑:ジョン・ライドンも立ててたよね。長くやってると色んな言い訳はいろいろできるんだよ(笑)。でも、今では歌詞をちゃんと覚えてる…と言いつつもガンガン間違ってるけど…。
西村:ステージ・アクションに命懸けてるんだろうなって気はします。それでこそロック・スターだっていう部分もあります。
古閑:アクションに関しては赤松に任せているので…。ライブでは目立ちたいんでアクションはしますが…。VENUS PETERと違うことをやるのがROCKET Kだと思うので、いつもそれは考えてますね。ただ、今回みたいにVENUS PETERとROCKET Kのワンマンが連日になってると辛い辛い(苦笑)。
西村:9月29日がシェルターでROCKET Kワンマン、30日は代官山UNITでVENUS PETERワンマン。2つのバンドの切り替えスイッチはあるんですか?
古閑:個人的なことなんですけど、ROCKET Kの時はスリムのジーンズ、VENUS PETERの時はダボダボのパンツ履きますね。それが僕なりの切り替え。あとROCKET Kは帽子を被る。VENUS PETERは帽子を被らない。VENUS PETERは昔から見てる人がいるから、ダサくなったと思われるのがイヤなので、改めて格好つける感じ。ROCKET Kは現役でやってるバンドなので、改めてファッションをどうするとかはない。いつも通りのファッションで格好よく決める。それが僕の中でのROCKET KとVENUS PETERの違いですね。
西村:VENUS PETERやROCKET Kがなかったとしても、古閑さんは下北で服装もきちんとしてる人ではあると思います。
古閑:これだけ狭い街で十数年いて誰が見てるかわからない。初めて会う人に「古閑さんいつも見ますよ」とか、「ママチャリ乗ってますよね」とか、「昼間は顔が死んでますよね」とか(苦笑)。
西村:ずっとママチャリですね。
古閑:そう。カゴにフライヤー入れたり、即売のCD入れたりしてライブハウスにすぐに持っていけるのが下北の良いところですね。
──となると、ROCKET Kの『MIDNIGHT LOVER』に入っている『MY BICYCLE』(M-8)は古閑さんの愛用しているママチャリが題材となっているんですか?
古閑:その通り。毎日下北でチャリンコ乗って、チャリンコがブッ壊れても誰かが助けてくれるのが下北だったり。だからまたチャリンコで突っ走るみたいな。
長くバンドを続ける秘訣
西村:最近、スタジオはメンバーみんな揃うんですか?
古閑:赤松はいつものことなので…。実はうちの3人ってみんな体弱いんです。梶原くんは喘息持ちで、命削ってドラム叩いてるようなもんで、ゼーゼーしてる。でも、マックスで叩かないと梶原くんの信念が許さない。赤松くんは酒で無理するからすぐに風邪ひく。僕もすぐのど腫らすので薬に頼りっぱなし。
西村:古閑さんは5年前に比べるとちゃんと声が出るようになった。
古閑:歌えるのは歌えるけど、ちゃんとボーカルをやるのはROCKET Kが初めてなんですよ。でもオレが歌わないとROCKET Kはどうにもならないから、“歌”っていうものに対する気合いはその辺のボーカル以上にあるつもりではいますね。その分ベースがおろそかになってる(笑)。でも梶原くんの走るドラムに合わせてグルーブを出すっていうのができていれば問題無し。逆にVENUS PETERはベースだけなので、タイトできっちりリズムを合わせることを考えてるから。昔VENUS PETERだった時は“こんなに弾いてたんだ!! ”って思うぐらい難しいフレーズです。今は全然弾けるようになったけど…って弾けるけど…って(笑)。
西村:古閑さんがやってたことですからね。
古閑:「好きこそものの上手なれ」は僕の座右の銘なんですけど、好きだったらある程度はなんでもできるというところも、昔ちゃんとやってたんだなって改めて思いましたね。
西村:そういえばいっぱいベース持ってますよね。
古閑:うん。でも常に使うのは4・5本。あとは眠ってたり、誰かに貸して戻ってこないとか。ただ下北にいれば返って来るだろって。
西村:誰かがステージで弾いてるかもしれないですよ。
古閑:そうそうそうそう(笑)。そういう意味ではROCKET Kも3人がメンバーが代わることもなく5年続いてるのはすごい珍しいことだと思うよ。5年続けることも5年間人気を持続させることも難しいのはわかってるのでよく続いてるなとも思う。お互いのキャラが立ってるというところで、干渉し合わないっていうのがいいなと思うし。ライブ終わってとか練習終わってその後何してるか知らないしね。
西村:でも最終的にはシェルターで落ち合ってるみたいな(笑)。そういえば、ROCKET Kの作品はK.O.G.A.じゃなくて他のレーベルからとか出さないんですか?
古閑:話があればね…。オムニバスは話はあるので参加したいと思うし、そういうところで幅を広げていかないと。ノンジャンルで下北に集まったのに、だんだんジャンルが細分化されてきてる。だけど、いろんなバンドと対バンしたいし、僕は若いかっこいいバンドと対バンしたい。年寄りとやりたくないという意味ではなくてね。
西村:この手の音をやってる古閑さんと同世代のバンドっていないですよ。
古閑:うん、いない。同世代バンドがいない分、ロフトレコードや3P3Bやpizza of deathや1138とか昔から知り合いのレーベルとは横の繋がりでいつも仲良くしたいし、そこは下北にいることを生かして多くの人たちと接したいと思ってますね。
西村:下北はそういう繋がりができるから面白いかもしれないですね。
古閑:どこに出会いがあってどこに才能があるかわからないから、ポロっと実現するのがこの街かもしれない。シェルターの高森みたいにね(笑)。