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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】BANDWAGON(2006年7月号)-ロック・バンドとしての自己確認とレンジ総括の果てに辿り着いた新境地

ロック・バンドとしての自己確認とレンジ総括の果てに辿り着いた新境地

2006.07.01

前作『New Music Machine Extended Play!!!』から18ヵ月振りに届けられたBANDWAGON待望の新作は、バンドのレンジの広さを雄弁に物語る全く表情の異なった3曲と凄まじく高い殺傷能力に満ち満ちたリミックス1曲をコンパイルしたシングル『The Eternal Allergy』だ。舶来パンク・7インチ特有の、針を落とした瞬間に襲い掛かる音圧と破壊力とあの得も言われぬ昂揚感に加え、パンク以降のリビドーを刺激するあらゆるロックのエッセンスをブチ込んだ会心の作である。ヴォーカル&ギターのナベカワミツヨシ曰く「腐るほど出てくるアイディアを如何にこの4人だけでやるかがテーマ」という今秋発表のフル・アルバムを期待しながら、まずはこのヒップでソリッドなシングルを心ゆくまで楽しもうではないか。(interview:椎名宗之)

内なる葛藤を表出するよりも楽しめる音楽を

──1年半振りの新曲「The Eternal Allergy」は、ギラついたピアノのカッティングが印象な意欲作ですね。

ナベカワ:前のミニ・アルバムを出してから一番初めに出来た曲なんです。今までは鍵盤をいわゆる上モノ的に使ってきたんですけど、ライヴではギターをぶら下げながらキーボードを弾いてるイケダ(ケイスケ)君の意識自体も変わってきてるんじゃないですかね。それが恰好良ければギタリストとして見られなくてもいいよ、その曲に必要じゃなければギターも弾かなくていい、っていう。

──ピアノの旋律の美しさはありつつも、雄叫びのようなコーラスのせいか、とても肉感的で逞しさが漲っていますね。

ナベカワ:ええ。あのコーラスがまず最初にあったんですよ。「我々はインディアンだ!」っていうところから始まって(笑)、「インディアンならどう呼び声を掛けるか?」って考えたら“オ~オオ!”だろうと。だから仮タイトルとして「アパッチ」と呼んでいたんです(笑)。曲を作る時はそういう笑いのネタとして始めることが多くて、最終的にそれを如何に昇華させるかがキモっていうか(笑)。

──我々の細胞に擦り込まれている太古のリズムを呼び起こすかのような躍動感に溢れているのが特徴的ですね。

ナベカワ:人を高揚させるのは結局リズムなのかな、と思うんですよ。そこにアンセム的なメロディが加われば、それほど最強なものはないと思うし。僕らのライヴに来る人達って、結構無表情で聴いてることが多いんです。そうじゃねぇだろ! って思うんですよね。1,800円も払って来てるわけですから、もっと騒いじゃえ! っていうアンチテーゼもありますね。踊るのは恥ずかしいかもしれないけど、せめて一緒になって唄えるような曲にできたらいいな、と。

──身も蓋もない言い方になりますけど、凄く肉々しい曲ですよね。ガツガツしてるっていうか(笑)。

ナベカワ:まぁ、売れる売れないは別にして、シングルを出す以上はガツガツしてないとダメだろう、と(笑)。そこにはバラードは必要ないと思ったんですよ。

──2曲目の「What Went Wrong!!!」はニューウェイヴの匂いを残したレゲエ・ソングですけど、案の定一筋縄では行かない変態レゲエになってしまうのが如何にもBANDWAGONらしいですよね。全然夏らしくないし(笑)。

ナベカワ:ははは。最後の“パッパッパラッパ”っていうコーラスも、一応フロアを意識してるんですけどね(笑)。

──前作でTHE CLASHの「Rock The Casbah」をカヴァーして、アナログ7インチとして発表して以降、BANDWAGONの中で“フロア対応”という言葉が意外とキーワードなのかなと思うんですが。

ナベカワ:確かに、そういうのを考えながら曲を作るようになりましたね。自分の葛藤とか内なるものを表現したいというよりは、みんなで楽しめるものを作りたいと思うんです。そこでオナニーで終わってしまうのがイヤなんですよ。最近思うのは、もっともっと音楽を楽しみたいな、と。昔のパンクの本を読むと、イギリスと日本ではパンクが生まれた土壌が全く違いますよね。'70年代後半のイギリスは失業率が凄く高くて、その中で溜まったものを発散するための音楽がパンクだったわけです。そういう土壌が日本にはないぶん、今の恵まれた日本で生きている僕らなりの音楽の楽しみ方を考えるようになったんですよ。曲を作ってる時も、それがリミックスされた時のこととかをどこかで考えたりするんですよね。核となるリフがあったら、リミックスしやすいようにここには何小節必要かな、とか。それに走りすぎるとロック的な醍醐味を失ってしまう時もあるから、そこはバランスを意識しながらですけど。僕達の音楽を通じて、感情を含めた上での肉感的な発散を求めているというか。泣きながら踊らせたいんですよ。

──3曲目の「It's No Good」は、'02年に完全自主制作で発表された『the archive ep.』収録の「It's good thing」をリアレンジされたものですが、これは愛着のある埋もれた楽曲にもう一度スポットを当てたいという気持ちから?

ナベカワ:そうですね。最初は「It's good thing」を録り直したいっていう僕のゴリ押しで、今のエンジニアさんに録ってもらえれば凄く良くなるんじゃないかという確信もあって。あと、ポップであることが凄く大事だと思うようになって、ポップなイメージのあるあの曲をまたやってみたい、と。

──原曲との違いはどんな部分なんでしょう?

ナベカワ:技術的なことを言うと、原曲はキーがひとつだったのが、今回は転調が2回ないし3回はあるんです。パート、パートでどんどん変わっていくんですね。キーも変われば曲の表情も変わるので、その変化を楽しんでもらえたらな、と。リアレンジする時に一番気にするのはO?、元々の古いヴァージョンが入ってる音源を買ってくれた人達のことなんです。その人達が「曲が足りないから入れやがったんだな」って思ったとしたら、このリアレンジで驚かせたいんですよね。もっとも、『the archive ep.』は当時1,000枚しか出してないから、原曲を知ってる人なんてほとんどいないよ、って話なんですけど(笑)。

──「It's good thing」から「It's No Good」にタイトルが変わっているのも洒落が効いてますね。

ナベカワ:ええ。それもオリジナルを買ってくれた人達に対するジョークというか。

──このリアレンジ・ヴァージョンには、自分達の原点に立ち返るという意味合いもありましたか?

ナベカワ:そうですね。自分達のルーツを見つめ直すことを恥ずかしいことにしたくなかった、っていうか。一連の流れでずっとここまで来てるわけだから、そこは自信を持ってやりたかったんです。

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