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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】HIGH VOLTAGE(2006年6月号)- 抑え切れぬ感情を激情へと昇華させる超高圧放電響音、新章突入!

抑え切れぬ感情を激情へと昇華させる超高圧放電響音、新章突入!

2006.06.01

bloodthirsty butchersやeastern youth、COWPERSといった同郷の先人達にも通じる、溢れ出る激情を猛々しい轟音に昇華させたサウンドを聴く者の胸に深く刻み込むHIGH VOLTAGE。過去の楽曲を現メンバーですべて録り直した集大成的アルバム『GEFUHL』でインディーズ時代を総括したばかりの彼らが、今夏遂に活動の拠点をメジャーへと移行させ、『CORE』という今後のバンドの方向性を提示した未踏の雪稜の如きミニ・アルバムを発表する。東京初となる自主企画も間近に控えた彼らに、激情の発露となる揺るぎないバンドの"CORE"〈核〉について訊いた。(interview:椎名宗之)

結成以来4年間の集大成的アルバム『GEFUHL』

──札幌から上京して約1年、もう東京の生活には慣れましたか?

高橋大望(g, vo):ええ、だいぶ慣れてきましたね。

──札幌と東京、どんなところに一番違いを感じますか?

菱谷昌弘(ds):規模が全然違いますよね、街のデカさとか。東京は札幌みたいな街がいくつもあるみたいな感じです。

──ライヴハウスのシステムとかも微妙に違います?

菱谷:そうですね。札幌のライヴハウスは結構ファジーなところがあって(笑)、リハ順とか別にないですからね。トップバッターのバンドがリハを一番最後にやるっていうのが決まってるくらいで。それに比べると東京のライヴハウスはキッチリしてますよね。入りやリハの時間もちゃんとしてるし。

──意を決して上京したのは、バンドとしての活動をより活発化させるためですよね?

佐藤弘坪(g):そうですね。東京に住めば、ライヴもいろんな場所へ行きやすい環境が整いますから。

高橋:最初は札幌にずっといたいと思ってましたけどね。

佐藤:活動の拠点をあくまで札幌に置くバンドが当時は周りにたくさんいたんですよ。sleepy.abとかThe Jerry、THE HOMESICKSとか。媒体もそういったバンドを応援するような下地があって。

──皆さんの場合は、地元に留まっているとそこから拡がりを持てないと感じたんですか?

佐藤:別に札幌でメチャメチャCDが売れたわけでもないし、ライヴの動員が凄かったわけでもないんです。札幌でやるべきことを成し遂げたつもりもないし、むしろ何かを達成するために東京まで出てきた感じですね。

菱谷:ただ、いざ東京へ出てみたところで実際にバンドがどこまでやれるのか、まるで実感が掴めなかったですね。最初は半信半疑って言うとヘンですけど、そんな気持ちでこっちに出てきたんです。でもやっぱり、東京へ出てきて大正解だったと今は思いますね。全国を廻るには好都合だし、陸続きなのは大きいですよ(笑)。

──なんせ年間100本以上ものライヴを敢行するバンドですからね。

菱谷:ええ。あと、札幌にも尊敬できるバンドはいましたけど、東京は心底凄いと思えるバンドがもっとたくさんいるし、生温い気持ちでやってたらすぐに弾かれちゃうな、っていう気負いがありますよね。そういう厳しい環境でバンドをやれることは凄くラッキーだと思ってます。

──そんなHIGH VOLTAGEの第1期集大成的作品『GEFUHL』〈ゲフュール〉が先だって発表されましたが、まず、このタイトルにはどんな意味があるんですか?

高橋:ドイツ語で、“FEELING”とかと同じ意味なんです。ファウストとかクラフトワークとか、ドイツの音楽が個人的に好きなんですよ。“FEELING”を感じてほしいと言うか、意味合いとしてはそんな感じなんです。英語で“FEELING”のままだと、ちょっとポップすぎるかな、と思って。

──1stミニ・アルバム『HIGH VOLTAGE』、2ndミニ・アルバム『此処にいる』収録曲すべてを現メンバーで録り直し、さらに未発表曲「影のない世界」まで収録した、まさにHIGH VOLTAGEの名刺代わりの1枚ですね。

高橋:そうですね。去年ベースが吉岡に替わって、今のこのメンバーで過去のナンバーを録ったらいい感じになるんじゃないかと思ったんですよ。それと、前のアルバムから年数も経ってたので、曲の細かいところを変えてる部分もあるし、それなら新たにレコーディングしたほうがいいと考えたんです。1枚目と2枚目は音が全然違ってたりもするので。

──ライヴを重ねることで、曲自体も徐々に進化を遂げているでしょうし。

菱谷:それは思いますね。常に上を目指していきたい気持ちがあるし、ライヴ経験を積み重ねて演奏力も上がっただろうし、バンドの一体感もより強まったと思います。レコーディングのやり方も少しずつ判ってきたりして、そういったものがこの『GEFUHL』でひとつの結果として残せたんじゃないか、と。

過去の楽曲を再録しての新たな発見

──収録された全13曲は一気に録った感じですか?

菱谷:『GEFUHL』は2週間で全部ですね。

佐藤:『GEFUHL』と、その次に出る『CORE』とまとめて一緒に録ったんですよ。

菱谷:2月の初めから3月の中旬まで、レコーディング期間は1ヶ月半くらいでした。

佐藤:そんなさなかにライヴもありつつ……(笑)。

菱谷:レコーディングとライヴの気持ちの切り替えはちょっと難しいところがありましたけど、そうも言ってられないので(笑)。

──その名の通り、高圧電流が全身を流れるような迸る激情サウンドがHIGH VOLTAGE最大の特徴だと思うんですが、メジャー・デビュー盤となる『CORE』のほうは、重くささくれ立った感じがだいぶ薄れていますよね。メロディの良さは一貫していますけど、『GEFUHL』に比べると少し角が取れた印象を受けます。

吉岡貴裕(b):
『GEFUHL』はほぼ一発録りに近い感じだったんです。僕が加入する前のアルバムは、アレンジをよく練って凄く時間を掛けて作っていたんですけど、『GEFUHL』に関しては敢えて荒々しく録ることにしたんですよ。

高橋:そう、昔はアレンジに凄く神経を使いましたからね。

佐藤:練って壊して繋げて、また練って壊して繋げて…っていう、そんなことの繰り返しでしたから。

──己の衝動に従うと言うか、激情直下型サウンドを身上とするバンドだと思っていたので、アレンジに凄く時間を掛けるというのはちょっと意外ですね。

高橋:「曲は衝動に駆られてすぐにできるんでしょ?」とか「余り考えないでやってるんでしょ?」とかよく言われるんですけど、実際は全然そんなことないんですよ。

佐藤:確かに、ライヴでは余り考えないで闇雲に暴れてますけどね(笑)。今まさに曲作りの最中なんですけど、これがまたなかなかできないんですよねぇ(苦笑)。

──メイン・ソングライターは高橋さんですよね?

高橋:だいたいの骨組みだけですね。アレンジはみんなで考えながらやってます。歌詞は僕が書いていて、普段から気に入った言葉を携帯電話にメモしておいて、それを膨らませていく感じです。

──過去の楽曲を録り直してみて、当時は気が付かなかった新たな発見とかもありましたか?

高橋:ミス・タッチを発見してちょっと凹みましたね(笑)。あと、今の自分ならこういうアレンジはしないで違うことをやるな、とか思った部分はありました。今の俺ならこのBメロは取るなぁ、とか。でも、それはそれで結構面白いんですけどね。

佐藤:「青」とかはオリジナルと全然違うよね。半分くらいアレンジも変えたし。久し振りにオリジナルを聴いて“何だこれはッ!?”って我ながら思いましたから(笑)。一度演奏が終わったと思ったらまた始まるんですよ。無闇に長いんです。さすがにそこは全部取っちゃいましたね。

──録り直したことで、改めて吉岡さんの加入が今のバンドにいい作用をもたらしているのが判ったんじゃないですか?

菱谷:そうですね。最初は第三者の視点からHIGH VOLTAGEを見てきて、自分がどういう立場でベースを弾けばいいのかをずっと考えてくれてた気がしますね。

吉岡:元々は友達でしたけど、それを抜きにしてHIGH VOLTAGEのライヴは恰好良くて好きだったんです。当時は自分もギターを弾いてたんですけど、ライヴではよく弘坪君の真ん前で観てましたから。彼がステージで暴れて落としたメガネを拾ってあげたり(笑)。

佐藤:渡されるほうは恥ずかしいんですよね、あれ(笑)。

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