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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】HIGH VOLTAGE(2007年6月号)- "UNDERGROUND"の漆黒の闇で掴み取った"1 (one) "という名の希望の曙光

“UNDERGROUND”の漆黒の闇で掴み取った“1 (one) ”という名の希望の曙光

2007.06.01

昨年のメジャー進出以降、それまでの音楽的レンジを押し広げるべく実験的なアイディアをふんだんに盛り込んだ『CORE』『SPIRAL』という意欲的なミニ・アルバムを矢継ぎ早に発表したHIGH VOLTAGEが、初のフル・アルバムとなる『1 (one)』を遂に完成させた。そのタイトルが示す通り、本作はこれまで果敢に挑んできた様々なトライアルを完全に血肉化した彼らがようやく踏み出した真の意味での第一歩であり、彼らにしか奏でることのできない唯一無二のロックンロールを生み落とした記念碑的な作品である。夜明け前の漆黒の闇をくぐり抜けた彼らが手にしたものは、表現者としてのプリミティヴな精神性と希望に満ちた曙光だ。その目映い光は『1 (one)』というアルバムに強い肯定性と慈愛の輝きをもたらしている。(interview:椎名宗之)

『CORE』と『SPIRAL』の試みは必然だった

──先月号の『1 (one)』をめぐるブッチャーズ吉村さんとの対談は如何でしたか。

高橋:凄く勉強になりましたよ。

佐藤:俺はあれからいろいろと考えて…「自分から逃げるな! 戦うんだぞ!」と自分に言い聞かせていたら、夢にまで出てくるようになって(笑)。吉村さんじゃなくて身近な人なんですけど、その人達が「戦えよ!」って俺に言うんです。

吉岡:取材の後に一緒に呑んだ時も、いろいろとアドバイスをしてくれて…あんなに真剣に助言してくれたのは有難かったし、凄く勉強になりましたよ。あの後にブッチャーズの新作を聴いて、吉村さんの仰る意味がよく判った気がしますね。

──初のフル・アルバムとなる『1 (one)』の話に入る前に、まず先行シングルの『UNDERGROUND』について伺いたいのですが、このシングルでバンドがまた一歩突き抜けた印象を受けたんですよ。メジャー進出後に挑んだ音楽的な新しい試みをようやく血肉化できたと言うか。

高橋:そうですね。「UNDERGROUND」は殻を打ち破れた曲だと思うし、ゴリゴリのリフで攻めながらポップなメロディも壊さないという、理想的なバランスになったと思います。

──初期を彷彿とさせるザラッとしたテイストも戻ってきた気がしましたが。

高橋:まぁ、周りを気にせずに自分らしく作ったという意味では初期っぽさもあるのかもしれないですね。

──今振り返ると、メジャー後の『CORE』と『SPIRAL』という2枚はどんなアルバムだと捉えていますか。

高橋:『CORE』は上京したての感じと言うか。で、東京の生活にちょっと落ち着いてきて、札幌と東京の中間くらいが『SPIRAL』だと思ってるんですよ。

──僕は、バンドの可能性を押し広げるべく試行錯誤した、どうしても必要な作品だったと思うんですよね。

高橋:それは確かにありますね。それまで全くやっていなかった「DUSK」のような新しいタイプの曲をやってみたり、そこからいろんな曲調が出来ていって、その調整と実験を貪欲に試みた2枚だった気がしますね。

佐藤:自分達の“こうしていきたい”という道筋がどんどん明確になってきた気がするんですよ。『CORE』の頃は何が何だか判らなかった部分も正直あって、環境が変わって戸惑ったりすることも多かった。でもそこで留まっていてもしょうがねぇ、いつまでも戸惑ってるばかりじゃ終われねぇな、と。そんな思いがこの『1 (one)』へと繋がっていると思います。

菱谷:大雑把に言えば、『CORE』はがむしゃらにやってたアルバムだったな、と。あの時は、新しいことをやって周りをビックリさせたかったんです。ただ、環境が変わって初めて作る音源という部分で迷いがあったのは事実で。でも、その中でも得るものはもちろんあったし、それがあったからこそ『SPIRAL』みたいにグイグイ押しまくる激しい感じの音源も出来たんだと思います。だから、作品のすべてに意義があって次へと繋がるもので、無意味なことは何ひとつやってこなかった自負はありますね。

──バンド活動を本格化させるために上京して、この2年の間に懸命に音楽性の幅を広げてきた成果がこの『1 (one)』にはよく表れていると思いますよ。

高橋:ツアーで全国を廻った経験もかなり大きいと思うんですよ。上京する直前くらいから全国を何周かするくらいのライヴをやって、そこで精神的に変わった部分もあったと思うし。札幌にいた頃はストレートな表現こそが恰好いいと思っていて──もちろん今でもそう思うんですけど、札幌時代は音楽の表現方法が一本化していた部分がなきにしもあらずで。東京に来てからは、こっちのバンドと対バンすることでいろんな表現方法を学べたし、それは凄く勉強になりましたよね。

──『1 (one)』を聴くと、溢れ出る激情を猛々しい轟音に昇華させていた札幌時代を基点として、よくこれだけヴァラエティに富んだ楽曲を表現し得るバンドに成長したなと素直に思えますよ。

高橋:ありがとうございます(笑)。個人的にもいろんなタイプの曲が好きなので、せっかくのフル・アルバムだし、それは素直に出していこうと思ったんですよ。

──楽曲やサウンドの方向性としては、どんな感じにしようと?

高橋:サウンド的にはそんなにないんですけど、とにかく妥協をせず、ストイックに曲を作っていこうとしましたね。アレンジに関しても、納得のいくまで徹底的に突き詰めて。

佐藤:高橋大望の望むギターの雰囲気とはどんなものなんだろうというのを際限まで考えて、考えては渡し、考えては渡し…っていう感じでしたね。

──リズム隊が気に留めた部分は?

菱谷:ドラムで言えば、雰囲気を壊さないように心掛けましたね。完全にバラで録ったのも多かったので、音だけで会話するしかないところもありましたし。ベースは相当頑張った思いますよ。考えて作ってきたフレーズが合わなくて、それを皆でやり直してみたり、そういう部分には凄く時間を掛けましたね。

吉岡:4人が4人とも、その曲に対して抱くイメージが違うし、それを如何に理解して共有し合うかというのがまずあって。大望君が持ってきた曲の中に自分のフレーズでどんなドラマを作ろうとするかを、自分なりに喰らいついてやってましたね。

──曲を持ってくる高橋さんの指示はいつも具体的なんですか。

16_ap01.jpg高橋:そんなことないです。凄く曖昧ですよ(笑)。

佐藤:投げられたものをまずこっちでしっかりと理解しなきゃいけなくて、実際に音を合わせた時に「もっとこうしたほうがいいと思う」という意見交換があって、それから改めて考え直してみたり。凄く大変な作業ではあったけど、アルバムを作り終えた時の達成感は今までになかったですね。

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