過去に同じバンドのメンバーとして蜜月を過ごし、現在はそれぞれ音楽的志向の異なるバンドをやりながらも公私にわたって良好な関係を保ち、堅い絆で結ばれたwash?の奥村 大とBRAZILIANSIZEの4106。昨年末に行なわれたwash?の『真昼の月は所在なく霞んでる』ツアーにBRAZILIANSIZEが参戦し、確かな手応えを感じた両バンドが今春再びスプリット・ツアーを行なうことになった。奥村がソロで客演したBRAZILIANSIZEの主宰イヴェント"Team ALCOHOLISM"(3月12日、ネイキッドロフト)終演直後、wash?の新ドラマー、長谷川道夫のお披露目を兼ねつつの縦横無尽トークが始まった。(interview:椎名宗之)
wash?新ドラマー、長谷川道夫その人となり
──今日はお疲れ様でした。双方のライヴはそれぞれ如何でしたか?
奥村:今日のBRAZILIANSIZEはねぇ…まずはちゃんと曲順を決めろ、と(笑)。それに尽きるね。でも、ライヴ慣れした感じはやっぱり流石やなーっていう感じ。
4106:今日の大ちゃんは最高でしたね。ぶっちゃけ、今まで大ちゃんのライヴを観てきた中で一番感動しましたよ。バンド・スタイルのwash?や南ちゃん(南波政人)とやってる素wash?ももちろんいいんだけど、それらを別物として考えても、凄く高いクオリティを感じましたね。大ちゃんとは付き合いが長いんですけど、大ちゃんが今まで表現したかったことが今日は凄くよく伝わったし、手放しでブラボー! って感じですよ(と、拍手をする)。
──奥村さんと4106さんの付き合いは、もうどれくらいになるんですか?
奥村:15年とか…それくらい? 20歳くらいからの付き合いだよね。
4106:そう、まだキッズでしたね。いわゆるキッズと呼ばれる前のキッズでしたから。
奥村:『ぴあ』とか『宝島』で面白いライヴを見つけて行くと、そこにいつも必ず4106がいた。俺のバンドすら観に来てたからね(笑)。その頃の“面白いライヴ”っていうのは、どんなジャンルでも限られてたんだよね。メディアで“面白い”と言われるものと実際にライヴハウスに行って“面白いよね、あれ!”っていうものとは凄い断絶があって、当時そのライヴハウスの現場にいたことが俺達の共通の財産だよね。
──たとえばどんなバンドを観に行っていたんですか?
奥村:んー、今生き残ってるバンドはほとんどいないからね(笑)。'92~'93年頃の話だけど。
──NUKEY PIKESとか、BEYONDSとか?
4106:その辺はまたもっと別格なんですよ。
奥村:そう、平たく言えばもっとエライんです。たとえば'00年前後に起こったバンド・ブーム的なきっかけみたいなものが当時あったとしたら、そのバンドもきっとガーンと行ったんだろうなっていう人達をよく観に行ってましたね。要するに、俺達でも普通に打ち上げに出られるような恰好いいバンド。結局、そのバンドにいたドラムの奴と4106と俺で一緒にバンドをやったりもして。
4106:俺はバンドっていうもの自体には興味がなくて、対個人みたいな感じでしたね。“あのバンドにいるあの人が格好いい”っていう感じで観てたんですよ。そういうのを追いかけていたら、いつも大ちゃんがそこにいたんです。
──そんな両者の深い繋がりがありつつ、昨年末にはwash?のレコ発ツアーにBRAZILIANSIZEが参戦したり、その関係は良好に続いているわけですが。
奥村:まぁ、4106とはかつて一緒にTrophyっていうバンドもやってたし、そんな流れもあって。実際、去年一緒に廻ったツアーが凄く面白かったんですよね。ウチの他のメンバーも凄く楽しんでたみたいで。それと何より、ウチのファンがみんなBRAZILIANSIZEを好きになったからね。それはやっぱり大きかったな。
──でも、wash?はそれだけ充実したツアーを終えたと思ったら、急遽ドラマーが脱退という事態に陥り。
奥村:うん。ドラムはバンドのエンジンだからね。ドラムが替わると曲まで変わってしまうから、尚のこと中途半端な人にはしたくなかったんですよ。新しくドラマーを探すにあたって、まず最初に連絡を取ったドラマーは3人いたんです。みっちゃんと、バンドを6個くらい掛け持ちしてる若い子と、あと実はパロだった(笑)。4106には言いづらいけど今だから話すと、パロには「BRAZILIANSIZEを辞める予定ある?」って訊いてみたんだよ(笑)。
4106:はははははは。
Parock86:その時は「ないっすね」って即答したんですけどね(笑)。
奥村:で、思い切ってみっちゃんに「俺とロックをやらねぇか?」と伝えたわけですよ。3月には宙ブラリとのツアーが決まってたから、できればそのタイミングからお願いしたかったんだけど、みっちゃんは「5月くらいからならいいよ」って話だった。そこで可能性を探りつつ…ってことで保留して、3月のツアーをどうしようと思い悩んでいたら、みっちゃんから電話があったんだよ。「やっぱり、そんな都合のいいタイミングから参加するなんてバンドとして良くないし、一番大変なツアーをやらないでバンド面するのもイヤだから、俺、3月からツアーやるよ」って。
──やー、オットコマエですねぇ!
長谷川:大ちゃんから貰ったメールがまた熱かったんで、その意気に応えたくて。
──奥村さんが長谷川さんを見込んだ理由というのは?
奥村:俺がドラムを見るセンスで信用しているハンサム兄弟の本田(太郎)が最初に挙げたドラマーがみっちゃんだったんですよ。あと、俺がMTVを見て恰好いいと思った日本のバンドが2つ、3つあって、その中のひとつがthe fantastic designsだったんです。これがねぇ、もうキチガイみたいに恰好いいバンドだった。ベースのmiyaちゃんは、今TYPHOON24をやってますけどね。俺はこのバンドのドラムのファンで…要するに長谷川道夫のファンで、Trophyの時にthe fantastic designsと一緒にイヴェントをやることになって凄く楽しみにしていたら、その当日にドラムが違う人に替わってたんだよね(笑)。
──長谷川さんのタイコ叩き人生は、かれこれ何年になるんですか?
長谷川:中2くらいの時から叩いてますから、もう20年になるのかな。wash?とは、僕がまた別にやっているバンド(Yellow Soul Source)で過去に一度対バンしたことがありましたね。
奥村:そう、恵比寿MILKで対バンしたことがあったよね。wash?がまだデモCD-Rを毎月出していた頃。そのデモをみっちゃんにあげたりして、「また対バンしようよ」って言いながら、お互いなかなかタイミングが合わなくて。
長谷川:そうやって擦れ違いつつも、大ちゃんとは「今どうしてるの?」ってたまに連絡を取ってた感じで。