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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】 山崎眞行 (PINK DRAGON代表) × 増子直純 (怒髪天)(2006年1月号)- やるだけやっちまえ! 自分らしさを貫くロックンロールな生き方!

やるだけやっちまえ! 自分らしさを貫くロックンロールな生き方!

2006.01.01

時代も人生も螺旋階段なんだ

増子:山崎さんの生き方を描いた『原宿ゴールドラッシュ 青雲篇』(森永博志)は僕のバイブルのひとつなんですけど、何と言うか、山崎さんっていい意味で物事に固執しない方ですよね。守りに入らずに、凄く軽いスタンスで次々といろんなことに取り組んでいく。
 
山崎:物欲ってものが余りないんですよね。何かを作って手に入れたとしても、何かの拍子ですぐに手放してしまう。別に愛情がないわけではないんだけれども、それが喩え大好きなものでも、自分のものにならなくてもいいってタイプなんです。サッカーの試合で日本と韓国が勝負したとすると、日本は経済でこれだけ勝ってるんだから、サッカーの試合くらいはせめて日本が負けてやれよと僕なんかは思うわけです。決して非国民なわけじゃないけど、そういう性格なんですね。相手を喜ばせたいと言うか、そこは客商売向きなのかもしれないですけどね。それは最近気が付いた。子供の頃に欲しいと思ったものは大体ずっと前に手に入れたしね。
 
増子:僕は、山崎さんがこの3階建てのビルの屋上にプールを作ったエピソードが最高に好きなんです。凄い大金と労力を注ぎ込んだけど、結局大量の水を手に入れただけだったという(笑)。
 
山崎:あの頃は毎日一千万くらいのお金が入ってきたんですよ。だからお金なんてどうでも良かった。そういうのを通ってきちゃったから、余計に物事に固執しないのかもしれない。ただ、ものを作ってる時は今でもまるで怒ってるみたいな凄いテンションで入り込みますけどね。怒ってるわけじゃなくて、凄く興奮しているだけなんです。こうして話していると、あなた、若い頃の矢沢永吉に似てますよ。凄く素直で、自分の意志をはっきり口にするところが。
 
増子:まだ永ちゃんみたいにビッグになりきれてないですけどね(笑)。BLACK CATSが現役だった頃と違って、今の時代はロックが子供のものになってるじゃないですか? そこで自分と同じ世代のヤツが聴けるロックをやろうとすると、なかなか難しいところはありますね。
 
山崎:でも、こんなにレコードが売れない時代に存在できているのは凄いんじゃないのかな。今は何でもグローバルになって、何事にもカッチリしてないとビジネスにならないでしょう? 昔は結構隙間があって、例えば古着なんてどこにも売ってたし、凄く安かった。僕が買いすぎちゃって値が上がってしまったんですよ。海外に行けば宝の山に出会えたし、原宿で店を開けば誰でもある程度は成功できた時代だったんです。音楽もレコードを出せば何とかそれなりに生活できた時代もあったけれど、今のようにコンピュータで誰でもレコーディングできる時代になれば、自ずと飽和状態になりますよね。結局、ハードのほうがソフトをダメにしてしまったんです。レコード会社のバックはハードを作ってるところだから。要するにビジネスが目的で、音楽を好きじゃない人が増えたんだと思いますよ。ロックンロールのプロフェッショナルっていうのは、それはそれで凄いことなんだけど、さっきも言ったようにその時点で全く別のものになるんです。
 
増子:プロのパンク・バンドなんて面白くも何ともないし、それじゃ単なるパンク芸になっちゃいますよね。
 
山崎:ビートルズのマネージャーだったブライアン・エプスタインも、元はレコード屋のオーナーで素人だったでしょう? セックス・ピストルズを手掛けたマルコム・マクラーレンも、最初はヴィヴィアン・ウエストウッドと共に“LET IT ROCK”というブティックを経営していた素人だった。マルコムとは当時僕の彼女を通じて友達で、「来年凄いことを考えてる」って言うから何かと思えば、それがピストルズの登場だったんですよ。ピストルズを“SEDITIONARIES”の宣伝に使ったわけです。
 
増子:“来年凄いこと”すぎますよ(笑)。
 
山崎:マルコム自身が一番ピストルズっぽかったですね。僕がラッキーだったのは、当時のロンドンやパリにいたそのレベルの連中と全部友達だったことですよ。ミュージシャンも結構いたけど、その時点でもうビッグ・スターだから余り面白くなかった。あの人はいい人でしたよ、クイーンのドラムの人。
 
増子:ロジャー・テイラーですか! 話がビッグすぎますから(笑)。
 
山崎:クリームソーダのライセンスと自分達のグッズを交換しようって真面目に言ってきてね。彼はビジネスマンでしたね。あと、T・レックスのマネジメントの社長にも同じようなことを言われましたよ。今はその頃と違ってロックの寿命も延びて、大人どころかおじいちゃんまでもがロック世代でしょう? 言い替えればいい時代なのかもしれない。第一線から消えないで、今もずっとロックをやり続けている先人が海外も含めてたくさんいますからね。
 
増子:そうですね。ローリング・ストーンズとかを見ると、まだまだ全然行けるぞ! って思いますよね。
 
山崎:でも逆に、若い子なんかはヒップホップじゃないとダメだなんて言う。若い世代のほうが割と頑なで、自由度が少ないんです。みんなと一緒じゃないと不安がるし、仲間はずれにされるのが一番怖いんですよ。
 
増子:こうして話を伺ってると、ピンクドラゴンの代表という肩書きとは関係ないところで男が男に惚れるって言うか、山崎さんの人間力みたいなものにやっぱり惹かれますよね。何に対しても好奇心旺盛で、まだ海外へ行くのが珍しかった時代に向こうでいろんなものを吸収して…時代も良かったのかもしれないですけど。今は時代としてはどんどん悪くなってきてるような気もしますね。
 
山崎:そんなこともないですよ。時代はグルグル回るけど、同じ位置じゃなくて螺旋階段だから。同じロックンロールの曲を奏でていても、速さが違ったり、アレンジが違ったりするでしょう? だから一見同じことをやっているようでも、ずっと変わらない場所にいるようでも、ちゃんとその時代で段差が違うんですよ。レベルが上がっているようで、ひょっとしたら下のほうにいるかもしれないけど、上がいいって単純なものでもない。だからこそ人生って面白いんだと僕は思いますよ。
 
増子:いや、全くの同感です。山崎さんみたいに流行り廃りに関係なく、本当に自分が好きなことを自分らしく貫いていけるようにまだまだ僕も頑張ります。今日は本当にどうもありがとうございました。
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