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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ROCK'N'ROLL GYPSIES(2005年12月号)- こうやって新しいものが作れる、この間までなかったものが今こうして作れるっていうことが、なにより素晴らしいことだと思う。

こうやって新しいものが作れる、この間までなかったものが今こうして作れるっていうことが、なにより素晴らしいことだと思う。

2005.12.01

ジプシーズはルースターズとは別物として存在している

12_ap02.jpgジプシーズの『I』と『II』の間に2年以上の時間が空いた理由の一つは、もちろん、2004年にルースターズのラスト・ライヴという大きなプロジェクトがあったことだろう。前年ぐらいからルースターズの初代ヴォーカリスト大江慎也が音楽シーンに復帰し、自身のバンド“UN”を始動していたが、そうした流れから2004年のフジロックで一夜限り、大江、花田、井上、池畑から成るオリジナル・ルースターズが再結成し、同時に解散するというラスト・ライヴの計画が生まれたのだ。それは今にして思えば、ジプシーズの『I』に大江が作詞として参加したことに端を発a苅すると言えるかもしれないが、もちろんこのラスト・ライヴは誰もが予想もしてなかった奇蹟と呼べる出来事だった。
 フジロックのグリーンステージでルースターズは見事な再結成、そして最後のライヴを貫徹した(ちなみにそのドキュメンタリーは石井聰亙監督のDVD作品『RE・BIRTH II』でじっくり観れる)。ラスト・ライヴで彼らは、長年に渡るルースターズのヒストリーにひとつのケリをつけた。ファンの下世話な興味だが、このことは今回のジプシーズの2nd制作にあたって、何らかの影響を及ぼしているのかどうかを是非とも訊いてみたかった。


──ジプシーズの『I』と『II』の間には、ルースターズのラスト・ライヴという大きな出来事があったわけですが、それは今作の制作に影響を与えていますか?

池畑:多少はあったかもしれないけど、俺の中でジプシーズはルースターズとは別物として存在しているから、今回も普通にやれたかな。このメンツでしかできないことがちゃんと音にも出ていると思うので。ただ、(ラスト・ライヴをやってルースターズが)自分がやってきたことの基本になってるんだなというのは確認できたし、それがカッコよかったものだとも思ったし、まぁ、それはそれでやったこととしてね。  僕のもう一つの興味は、池畑がルースターズから脱退した後に加入した下山が、オリジナル・ルースターズのラスト・ライヴをどのように観たのかだった。ラスト・ライヴは、下山にも何らかの影響を与えているのだろうか?

下山:いや、特になかったです。俺にとって(ルースターズは)もっと前に終わってるから。(ラスト・ライヴは)単純にいいなと思いましたよ。俺はあの4人でやってるところを生で観たことなかったから、ああこうなってたんだって思った。まぁ大江君はルースターズを辞めたわけじゃなかったから、やってよかったんじゃないかな。

池畑:ルースターズが続けてあったということは、自分自身のこととしてでなく、花田がずっとやってたわけだし、一緒にやってた下山とか、やり続けた人の強さだと思ったりします。俺の中では、やった人が凄いとしか言えないんですけど。

──ジプシーズには特にリーダーもいませんし、必要ないようにも思うんですが、ただルースターズを含めた長い歴史を見ていると、やはり花田さんが随所でキーになってると感じるんです。

花田:ジプシーズはみんなでしょう。俺は唄ってるから、どうしても唄ってる奴が目立つけど、内側はそうでもないし、このメンバーでやってないと成り立たないし。

池畑:ジプシーズで下山と一緒にやれてよかったと思う。まぁその前にも一緒にやったりしてたんだけど、今の形で一緒にやれるのは凄くいいと思いますよ。まぁ、長い話はあるけど、今があるということで。こうやって新しいものが作れる、この間までなかったものが今こうして作れるっていうことが、なにより素晴らしいことだと思います。

──みなさんがそれぞれの音楽活動をやりつつもスケジュールを調整してジプシーズを続けているのは、やっぱり自分自身の音楽人生にとってジプシーズが必要だってことなんでしょうか。

池畑:このバンドでしかできないことだから、やっぱり凄い大事なものだと思います。(ジプシーズは)結構、オーソドックスじゃないですか。その中で、どこまで変え得るかというのが、一番自分の中で自信になる。目先の部分や小手先でやるものではないから。もちろん他でそういうことをやってるわけではないけど。

──でも、次の3rdアルバムがいつ出るのかは全然判らない?

下山:まったく判らないねぇ。

花田:俺も判らん。

──まぁ、いずれ出ることは確かだと思うので、それまでは『II』、そしてライヴ・ツアーをじっくり楽しみたいと思います。


 一口にルースターズと言っても、その前期を牽引した大江、井上、池畑、後期を牽引した下山、そして最初から最後まで看板を守り続けた花田と、それぞれにとってのルースターズがあるのだろう。彼らがルースターズの長い伝説にようやくピリオドを打った今、大江も含め、これから新たな歴史を刻んでいく存在の一つが、ROCK'N' ROLL GYPSIESだと言えるのではないか。相変わらずその活動は予想できないが、今後も様々なドラマを僕達に見せてくれる予感を確かに感じることができる。なぜなら彼らはいい風が吹くのを読むのが抜群に上手い、天才的な風見鶏だからだ。だから僕は今後もずっと彼らを追い続けるだろう。どこまでも風の跡を追いかけるジプシー達の姿を。(文:加藤梅造/文中敬称略)

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