'90年代初頭、US直系のメロディック・ハードコア/オルタナティヴ・ロックを根幹に据えて抑え難い感情の高ぶりや叙情的な心情の揺れを独自のサウンドで表現したBEYONDSが、解散から実に11年を経てまさかの復活を果たす。谷口 健(fOUL)、岡崎善郎(ex. PEALOUT)のオリジナル・メンバーに加え、工藤"TEKKIN"哲也(WORD/ex. HUSKING BEE)、アヒト・イナザワ(VOLA&THE ORIENTAL MACHINE/ex. NUMBER GIRL, ZAZEN BOYS)という鉄壁の布陣が揃った新生BEYONDSが今のこの時代に敢えて活動を再開させることの意義、今後の方向性などについて余すところなく訊いた。(interview:椎名宗之)
新しくBEYONDSを始めるにはこの4人しかなかった
──まず、この2005年に再びBEYONDSを始動させた意図というのは?
谷口 健(vo):今年の春にPEALOUTが解散を発表して、fOULも活動休止に入ることになって、僕も善郎も表現者の端くれとしてそこで足踏みをしたくなかったんです。新しく次のバンドをやろうと思い立った時に、2人で話していたら必然的に「もう一度BEYONDSをやろう」ということになって。それに当たって、以前のメンバー(大地大介、中村修一)にも「一緒にやらないか?」と声を掛けたんですけど、それぞれ今の生活や他のバンドがあって動けないということで。それでも諦められなくて、ベースとドラムをどうしよう? と考えた時に、人間的にも魅力があって、それまでの音楽性やスタンスも申し分ない人…そうしたらもうアヒト君とテッキンしかいないんじゃないかということで、2人をお誘いしたわけです。
──fOULとPEALOUTが同じ時期に活動停止になったのは、全くの偶然なんですか?
岡崎善郎(g):そう。発表は偶然だったけど、今年の頭くらいから健ちゃんと2人でよく呑むようになっていて。3月の〈砂上の楼閣〉にPEALOUTが誘われた時に健ちゃんと腹割って話をした時も、お互いに同じようなことを考えていた。テッキンとアヒト君にお願いしようというのは、健ちゃんと一致した意見だったね。
谷口:テッキンはHUSKING BEEが終わっていて、アヒト君もZAZEN BOYSを脱退した後で、それなら時間的な調整も可能かなと思ったんですよ。
──テッキンさんとアヒトさんは、その話を最初に受けた時にどう思いましたか?
工藤哲也(b):BEYONDSのライヴは結局1回も観られなかったんですけど、僕は当時自分のバンドでコピーしたりして、本当に大好きだったんですよ。2人(谷口、岡崎)は最初それを知らなかったみたいなんですけど。だから僕としては、声を掛けて頂いた時点で断る理由が全くなかったんです。
アヒト・イナザワ(ds):僕はBEYONDSという名前はもちろん知ってましたけど、実は音源を聴いたことが全くなかったんですよ。でも入る直前に谷口さん、岡崎さんと呑みながらじっくり話す機会を持って、いいなと思って一緒にやることに決めました。
──今やVOLA&THE ORIENTAL MACHINEのヴォーカリストとしての活動も盛んなアヒトさんが、敢えていちドラマーとしてBEYONDSに参加することの意義というのが僕は凄くあると思うんですけど。
イナザワ:1年近くドラムをしっかり叩くことから離れてみて、バンドのフロントマンとしてすべてを取り仕切るようになってからは視野が凄く広がったんです。それまでは単なるドラマーとしての立場からしか物事を見られなかったから、フロントマンの大変さが身に染みてよく判った。そんな自分の意識の変化を、このBEYONDSに参加することによって活かせるんじゃないかと思ったんですよね。
──テッキンさんとアヒトさんなら、古くからのファンも絶対に納得する人選だと思いますよ。
岡崎:2人からOKを貰う前から、そう言ってくれる人が多いはずだと僕は信じてたから。2人とも僕らとロック・ミュージックに対する意識が凄く近いと思ってたしね。
谷口:最初、善郎と僕の間には郷愁の念みたいなものもあったと思うんですけど、それは2割くらいに抑えて、後の8割はリニューアルされたBEYONDSでありたいんですよ。新しいバンド名を付けずに2005年にBEYONDSとして新しいロックを追求していくのならば、もう絶対にこの面子じゃないとダメだと思いましたね。
──健さんと岡崎さんの中では、当時のBEYONDSというバンドはどう対象化されているんですか?
谷口:余りにも活動が濃密でしたね。僅か3年ちょっとの活動期間でしたけど、感覚としては10年間くらいの濃さがありました。それまでのハードコアの流れの中に、BEYONDSとして新しい異物を吹き込みたかったんです。
岡崎:僕は客も対バンも経験してからバンドに途中参加したんだけど、BEYONDSが登場してきた時、新しい感じが凄くした。間違いなくライヴハウスの中に新しい風が吹いてたね。
──岡崎さんは、健さんがBEYONDSを始める前のPUPPETS時代からのファンでしたよね。
岡崎:そう、ずっと観てたから。BEYONDSは他のバンドと明らかに違うオリジナリティがあったし、それは後々のfOULにも通じるような、健ちゃんが伝えたい空気や思想が当時のBEYONDSにはあったよね。精神的な部分まで踏み込んだところも含めて、斬新なロックだなと思った。自分が加入してからはライヴが多くて忙しすぎて、余りよく覚えてないんだよね(笑)。
谷口:故意に忙しくしてたわけじゃないんですけど、週一ペースでライヴの予定が入っていて、とにかくライヴと練習の繰り返しe´蕁だったですね。いろんな人達と交友関係を築くのにも忙しかったですし。
──今回、全く違うバンド名にしようとは思わなかったですか?
谷口:ええ。敢えて新しいバンド名にしようとは思わなかったですね。
岡崎:かと言って、過去のBEYONDSをなぞるつもりもない。音楽性云々よりも、当時このバンドをやろうとしていた意義を継承しつつ、全く新しいことをやっていきたいというバランスが凄く良かったんだよね。
──過去のBEYONDSのナンバーがこの顔触れによってどうプレイされるのか単純に楽しみだし、解散から11年を経たBEYONDSが2005年の今どんな音楽性を提示するのか、凄く興味深いですよ。
谷口:当時のBEYONDSの曲を今のこの4人でやることには当初余り興味がなかったんですよね。それよりも、この4人でこの先どんな曲を生み出していけるかが凄く楽しみなんです。