あの景色が自分にとっての夢を叶えた瞬間
──175R自体の話も聞きたいんですが、昨年のアルバム「MELODY」を出してから、今回のシングル「メロディー」まで、かなり色々な事があったと思いますけど。
SHOGO:やっぱり大きかったのは日本武道館ですね。武道館でやるっていうのはずっと自分らの夢でだったんで。
──武道館といえば、イメージとしてはどのバンドのライブなんですか。
SHOGO:やっぱりBOOWYですかね(笑)。「ライブハウス武道館へようこそ」っていう言葉が……。もちろん、ジュンスカもそうですし、ブルーハーツもそうですし、色んなバンドたちがあそこでライブをやってるわけなんで。武道館のライブ前日の夜はあんまり寝れなくて、そういうバンドのビデオをずっと観てましたね。
──明日ここでやるんだっていう感じで。
SHOGO:前の日に一応リハーサルをやったんですけど、やっぱりお客さんが入ると全然違うんですよ。バーンッて幕が落ちてライブが始まったんですけど、その光景はホント衝撃的でした。もう人の壁というか……狭いっていう感じ。意外にも狭く感じるんですよ。自分らの思いが届かない距離ではないっていう感覚ですね。これが「ライブハウス」と呼ばれる所以なのかな、とか思ったりして。ホントにライブハウスみたいな空気感を持っているハコだなって思いましたね。今思えば、あの景色が自分にとっての夢を叶えた瞬間だったと思います。一番大きな夢だったんで、一曲目から号泣しちゃいましたけどね。泣きそう……とかじゃなくて、全く無意識の内にポロって涙がこぼれちゃって。DVDを観てもらえればわかると思うんですけど、メチャクチャ泣いてるのに、全然平気に歌ってるんですよ。そういう変な感覚がありましたね。涙が勝手に出て来ちゃって、自分の中でも「何でだろう」っていう気持ちがあったりして。
──やっぱりそれだけデカかったと。
SHOGO:デカかったですね……。
原点回帰
──その目標としていたところを達成したことによって、バンドとしても一段落したという感じがあったんですか。
SHOGO:そうですね。終わってからすぐには感じなかったんですけど、そこからちょっとしてから自然とそういう気持ちになってましたね。やっぱり、武道館のライブでは今までの集大成を見せようって思ってたし、その夢が叶っちゃってこれから何をやったらいいのかなっていう。ちょうど、メジャーのサイクルみたいなものに飽き飽きしていた時期でもあったんですよね。リリースして、取材受けて、ツアーがあって、また曲作りして……みたいな。それと同時に一区切りついた事によって、メンバー間でもたるんだ部分があったりして、イベントに出たりしてもしっくり来なかったり。それで、色々と考え込んじゃって、一回休もうかな……って思ったり。メンバーと話し合いを行って、腹を割って話し合ったりもしました。
──そういう状況を打破するっていう意味もあって、今年に入ってから色々な事をやったっていうのもあるんですか。
SHOGO:そうですね。ライブハウス限定で売るシングルを作ってみたりとか、KIT KATとCDがセットになったCDパックをコンビニで売ってみたりとか……。今までと違う形で色んな面白いことにチャレンジしてみたいなみたいなっていう気持ちは生まれましたね。そういうのを経て、今回のシングルでやっと175Rとしてセカンドステージに行けたかなという気持ちはありますね。
──タイトルを前のアルバム「MELODY」と一緒にしたっていうのは何故だったんですか。
SHOGO:前のアルバムは最初に「原点回帰」っていうテーマを設定して作ってたんですけど、昔やってたみたいな英詩の曲を多く作ってレコーディングしてたら、なんかインディーズの頃の様なアルバムを作ろうとしている自分がそこにはあって。それで途中でハッと我に返って、オレはすごくネガティブな事をやってるんじゃないかと思っちゃったんですよ。なんで過去をそうやって振り返ってるんだろうって。そこで急遽レコーディングの途中で日本語の曲を追加したりして、一枚のアルバムとして完成させたんです。結果的にはジャケットワークに関しても全て自分らの思い通りにやって、一曲一曲としては最高の物が出来たんですけど、トータルで見ると自分の中では完全燃焼出来てないというか……、迷ってた感じがあったんですよね。だからリリースする頃には、もう早く次のアルバムを作り合いって思ってたくらいだったんですよ。ようやく今回「メロディー」というシングルを出せたんで、完結出来たっていう感じはありますね。
──前のアルバムをここで完結出来たという。
SHOGO:そうですね。今回の「メロディー」では、自分らにとって本当の原点回帰っていうのは、音楽に初めて触れた瞬間なんだっていう。音楽に合わせて体を動かすだけで楽しい、声に出して歌うだけで楽しいっていう、そういう気持ちを歌いたかったんですよね。本当の原点はそこだから。メンバー同士の話し合いの件も含めて、自分の中でメンバーに対して訴えたかったメッセージでもあったし。きっと夢を追いかけてる人たちとか、自分の好きなことを職にして行こうとか目指している人も多いと思うんですけど、それをやっていく中で、どの世界でも思い通りには行かない事がいっぱいあると思うんですよね。不安だったり戸惑いだったりしがらみだったり。そういう、我に返る瞬間にこの曲を聴いてもらいたいなって思ってて。結局、原点を見つめ直せば、そこからまた新しい一歩を歩き出せるんじゃないかな。実際ボクらがそうだったんで。良くも悪くもすごい不器用にそういう事を一つ一つ形に残して行かないと進んでいけないバンドなのかなっていうのも再認識もしましたね。
──原点回帰って、昔やってた同じ事をやるっていう事ではないですからね。
SHOGO:そうそう。原点って、再確認して新しい一歩を歩き出すための物だと思うんですよね。それを今回自分たちも身をもって感じたというか。……自分に言い聞かせている部分も大きいかもしれませんね。175Rっていったら、ポジティブなメッセージを放つロックバンドっていうイメージが強いので、よく、「すごいポジティブな方ですね」とか言われたりもするんですけど、でも決してボク自身がすごくポジティブなわけじゃなくて、自分に対して「こういう自分であれ」って思ってるメッセージを、この7年間歌ってきただけだと思うんですよ。ボク自身は浮き沈みが激しくって、落ち込んだ時はホントにヒドイんで。でも、そんなボクの口から放つ言葉が、たまたま色んな人に共感を得てもらったり、勇気づける事が出来てるんで、それはすごい嬉しい事ですね。一万人のために歌を歌うことは出来ないけど、ボクが歌う個人的な歌に対して一万人の人が共感してくれればいいんじゃないかと。きっと音楽の力ってそういう事だと思いますしね。
──自分の中にあるネガティブなものを認識しながら、ポジティブな事を歌うからこそ伝わるっていうのもありますからね。
SHOGO:すごくポジティブな人が、ポジティブな事を叫んだとしてもリアルに感じないと思いますからね。「メロディー」にしても、そういう感じで伝わると嬉しいと思います。
──そんな感じで同じ「ポジティブ」な事を歌っていても、今回の歌詞の感じはちょっと違うように感じましたが。
SHOGO:色んな意味で今回、すごく自由になれたんですよね。今まで「175R」っていうイメージに自分自身も縛られて活動してた部分もあったと思うんですけど、それを一回取っ払っちゃったんですよ。曲に関しても、今までだったら曲を作ってても「これは175Rじゃないな」って思って、メンバーにも聴かせずにストックしてた曲もあったんですけど、そういう曲たちを今になってようやくレコーディング出来るようになりましたからね。それを聴き手がどう思うかはわかりませんけどね。全然変わってないと思うかもしれないですけど。
──変わった変わったというよりは、原点に返って自由にやれているっていう事なんでしょうね。
SHOGO:今は175Rのイメージとか関係なしに、「SHOGO」個人として書けてるのかなって思いますね。