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トップインタビュー【復刻インタビュー】THE COLLECTORS(2005年8月号)- We are Mods! We are Mods! We are, We are, We are Mods!

We are Mods! We are Mods! We are, We are, We are Mods!

2005.08.10

1986年のデビュー以来、一貫してモッドでポップなロックを追求してきたザ・コレクターズ。そんな彼らも来年には20年選手の仲間入りである。デビュー20周年ということもあって来年はアニヴァーサリー・イヤーに相応しく様々な企画が進行中だとも聞くが、その前祝いを兼ねて、テイチク~コロムビア時代を包括したベスト『THE GREATEST TRACKS』、さらには全曲彼らのルーツたる英国のモッズ・バンドを日本語詞にてカヴァーした『BIFF BANG POW』、と計2枚のアルバムが今夏リリースされることになった。果たして今後彼らはどういった地平を目指さんとしているのか。リーダーの加藤ひさし(vo)と古市コータロー(g)に話を聞いてみた。(interview:小松崎健郎)

ベスト盤はクリームで喩えるならば『GOLD』

──まずベスト盤について伺いたいのですが、結構コレクターズって今までにもベスト出してるじゃないですか。でも、今回の『THE GREATEST TRACKS』がそれらと違うところは、やはりテイチク(BAIDIS)時代から現在のコロムビア(TRIAD)までの代表的な作品が一堂に会していることですよね。
 
加藤:うん、それが最大の“売り”だろうね。それと、これまでもずっと思ってきたんだけど、コレクターズのベスト・アルバムってちょっとマニアックっていうか、凝った作りだったじゃない? それはそれでコアなファンの人には良いんだろうけど。だから、今回は逆に、最近ファンになった人とか、これからコレクターズを聴いてみようかって人がごく自然に手を伸ばせるような、言うなればビギナー向けのものにしたかった。“コレクターズってどんなバンドなの?”って聞かれた時に、ハイ! とりあえずはこれですよ、みたいな。
 
古市:まぁ、言うなれば名刺みたいなもんですね。
 
──それにしても、オリジナル・アルバムだけでも14枚もあるわけでしょ。選曲とかは難しくなかったですか?
 
加藤:まぁね。確かに難しかったよ。いかにコンパクトな形でコレクターズの本質を伝えられるか、っていうのがポイントなわけだから。コロムビアの会議室にスタッフ集めて、ホワイトボードに曲書き込んでいって(笑)、“これは入れよう”“これはやっぱし外しとこう”って感じで進めていったの。ただ最近思うのって、やはり僕らの場合って、ライヴそのものが最大のプロモーションの場なので、ライヴで披露する機会の多い曲を中心に選んでみた。たとえば、初めてだけどウワサの(笑)コレクターズのライヴに行ってみようかな、って人たちは予習としてこのアルバムをとりあえず聴いてもらえばイイわけだし。たまたま幸運にも(笑)コレクターズのライヴを予備知識なしに観た人は、これを聴けば“ああ、あの曲は「世界を止めて」だったのね”みたいなさ。
 
古市:だから今回のベストは、まぁ、クリームで喩えるのであれば『GOLD』ってわけなんですよ(笑)。
 
加藤:そうそう、『BEST OF CREAM』じゃなくて、あくまでも『GOLD』なの(笑)。
 
──ベスト盤に加えてさらに今回はカヴァー・アルバム『BIFF BANG POW』も同時発売となるわけですが、アルバム・タイトルを1960年代の伝説のモッズ・バンド、クリエイションから取った理由をお聞かせ下さい。
 
加藤:このクリエイションのナンバーはもちろん今回のアルバムでもカヴァーしてるわけだし、当然昔から僕のフェイヴァリット・チューンなんだけど、単純に“Biff Bang Pow”って言葉自体が自分の中でモッドだなって思うわけ。ザ・ジャムのサード・アルバム『オール・モッド・コンズ』のインナー・スリーヴの中に、このクリエイションのシングルがレイアウトされていてさ、もう、10代後半にそれを観た時も、この“Biff Bang Pow”って言葉が凄くモッズ的なものとして自分の中にインプットされていたんだよ。だから、モッドなカヴァー・アルバムをコレクターズでやるんだとしたら、そのタイトルはこれしかないなって思った。だから結構、早く決まったね。
 
──どの曲をやろうとかって、カヴァー曲の選曲はどなたが決められたんですか?
 
加藤:全部、僕。だからもしかしたら、通常のコレクターズのアルバムと比べると、加藤ひさしのソロ・アルバム的な部分もあるかもしれないね。まぁ、それは聴いてくれる人たち、それぞれの判断にお任せするけど。
 
──これまでにもコレクターズはカヴァー曲やってますよね。たとえば「恋はヒートウェーヴ」(マーサ&ザ・ヴァンデラス、ザ・フー、ザ・ジャム)とか「茂みの中の欲望」(スペンサー・デイヴィス・グループ)、「シャラ・ラ・ラ・リー」(スモール・フェイセス)を筆頭に、シカゴやシークレット・アフェアとか。でも、それらはシングルのカップリングであったり、あるいは「茂みの中の欲望」だったら92年に加藤さんの手でリヴァイヴァル上映までもっていった同名映画とのタイアップだったりとか、ある意味で変則的だったじゃないですか。それが今回まるまる一枚のアルバムをカヴァーでやることに決めた意図って何だったんでしょう?
 
加藤:もちろん、来年でデビュー20周年だから、ちょっとした総決算の意味合いもあるよ。今後、コレクターズがどのような方向に行くのか、それを僕らなりに推し測る上で、まずは自分たちのルーツをもう一度再確認しておこうというのが最大の狙いかな。それに全曲カヴァー・アルバムを作ってみたいというのは、昔からの夢だったしね。それでやるなら今回だな、って思った。

日本を代表するリッケンバッカー・アルバム

──収められた曲についてみると、ザ・フーにスモール・フェイセス、クリエイションにアクションといった60年代のいわゆるオリジナル・モッズ・バンドがあれば、その一方でザ・ジャムやシークレット・アフェアにコーズ、マートン・パーカスにメイキン・タイムなどの70年代後半から80年代にかけてのネオ・モッズ・バンドといった具合に、同じモッズ・バンドであっても時代の異なるナンバーが並んでるわけですが、当然、両者の音の質感とか大きく異なりますよね。そのあたり、たとえばアレンジ、演奏も含めてレコーディングするにあたって意識はされましたか?
 
加藤:確かに60年代のオリジナル・モッズの全盛期にはモノラルが主流だったし、やっぱネオ・モッズと比べて質感の違いっていうのはあるよね。ただ、コピーとカヴァーって別物だと思うのよ。もうそれこそ40年くらい前の曲を、その時の音で忠実に再現しようとは思わない。だって、それをやっちゃったら、ただの自己満足、懐古趣味に過ぎないじゃない? むしろ、たとえカヴァーにせよ、“コレクターズの新曲”として聴いてもらいたいっていうのがあったね。だから、もう全曲、“コレクターズ節”(笑)で押し切った。そのあたりはプロデューサーの吉田 仁さんも理解してくれていて。あえて方法論としてのモデルを探すのであれば、ジョン・レノンがこれまた自分のルーツであるロックンロールを全曲カヴァーしたアルバム『ロックンロール』に近いかもしれない。いやぁ、実は僕、あのアルバム大好きなの。ベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」にしたってさ、ジョンがカヴァーした途端に、もう誰が聴いたってジョンの新曲になってるじゃない? あれは、ある意味、カヴァー・アルバムの最高峰だと思うね。
 
──確かにジョンもそうだし、ポールもそうなんだけど、ビートルズってカヴァーの達人ですよね。
 
加藤:そうそう、リンゴ・スターにですら『センチメンタル・ジャーニー』っていうスタンダード・カヴァー・アルバムがあるんだけども、あれもあれで憎めないアルバムなんだよ。
 
──コータローさんはレコーディングするにあたって、どのような意識で臨みましたか?
 
古市:選曲は加藤クンがやったわけだけど、結構、ネオ・モッズの曲とかで知らないのとかあったんですよ。ただ、今回は、ほとんどの曲でギターはリッケンバッカーを使いましたね。なんか、リッケンバッカーにこだわっていた頃の自分に久しぶりに戻ってみようと思ったんですよ。もう、それで押し通しましたね(笑)。
 
加藤:そうそう、言うなれば今回の目標は“日本を代表するリッケンバッカー・アルバム”を作ることでもあったの(笑)。
 
──歌詞は全て加藤さんが作られた日本語なわけですが、今回、インタビューするにあたってオリジナルとコレクターズ・ヴァージョンの歌詞を可能な限り読み比べてきたんですよ。たとえばザ・フーの「リリーのおもかげ」にしろザ・ジャムの「プリティ・グリーン」にしろ、オリジナルの詞を結構踏襲されてますね。
 
加藤:それはね、まずは、原曲を作った時の作者の意図や込められたメッセージを最大限尊重したかったってことなの。それに「プリティ・グリーン」にしても、やっぱ僕の中じゃ、いつまで経っても、ポケットにジャラジャラ小銭が入っていてジュークボックスで夜通し遊び明かす、ポール・ウェラーの歌詞のイメージが鮮烈に残ってるんだよ。あえて奇をてらって全く違った歌詞をつける必要なんてないじゃない?
 
──90年代以降は、結構、日本のアーティストが海外のアーティストの楽曲に日本語の歌詞をつける際の制約というか、それが顕著になってきたじゃないですか? たとえばビートルズやローリング・ストーンズ、クイーンやデヴィッド・ボウイなんかの楽曲に日本語の歌詞をつけることなんてNGですし。そのあたりで今回苦労されたこととかありますか?
 
古市:エリック・クラプトン関係もダメなんですよね。たとえばクリームとか。本当はクリームの「バッヂ」なんかもやりたかったんですけど、それもあって結局断念しました。
 
加藤:音楽出版社を通して、まずは僕が作った日本語の歌詞を英語に訳してもらって、それを先方に送って承諾を貰うという作業だったんだけど、そのやりとりがちょっと面倒だったね。一番難航したのがヒップスター・イメージの「メイク・ハー・マイン」。彼らの場合、数年前にリーバイスのCMで売れちゃったじゃない? だから、こりゃもう一度稼げるかもしれないって、まさに柳の下の2匹目のドジョウ狙いで“コレクターズって日本でどのくらい売れてるんだ? 今回の初回プレスは何枚だ?”って、それはもうしつこいくらいに聞いてきたの(笑)。おかげで、「メイク・ハー・マイン」だけ、もうすべてバックトラックまで録音し終えてるのに、最後の最後までヴォーカル入れが出来なかった。発売日に間に合うかどうかヒヤヒヤしたよ。
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