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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】特撮(2005年7月号)- ロック界のヴィレッジ・ピープルが放つ、前人未踏の形容不能ワールド『綿いっぱいの愛を!』

ロック界のヴィレッジ・ピープルが放つ、前人未踏の形容不能ワールド『綿いっぱいの愛を!』

2005.07.01

自分が一番面白い!

大槻:歌詞に関して、これはちょっと言っておきたいんですけど、1曲目の「地獄があふれて僕らが歩く」なんですが、これはどこだかで殺人事件があったんですけど、その殺人犯っていうのが特撮ファンだったんですよ。
 
──あ、実際にそういう事件があったんですか。
 
大槻:そうです。それで、その子と特撮のライヴでメル友になったっていう女の子から手紙があって、ちょっと色々と思うところがあって書いた詞でしたね。…だから彼は今、刑務所に入ってるんですけど、おかげで特撮ファンが1人減っちゃいましたからね。CDが1枚売れなくなったし。そういう問題じゃねーって(笑)。
 
──これは最近多かった、悩める若者たちをちょっと大人という目線から書いてっていう路線の歌詞ですね。
 
大槻:まぁ、今回そういう歌詞はこの曲と最後の「世界中のロックバンドが今夜も…」くらいじゃないかな。最近は、あんまり他人様に興味がないという子供大人なんで、自分が一番面白いっていう視点かもしれない。「江ノ島オーケン物語」にしても「ダンシングベイビーズ」にしても…。ああ、自分って面白いなっていう気持ちのほうが大きかった気がしますね。…他人をどうこうしようという気持ちも、最近全然ないんで。
 
三柴:ラブ・自分だからね。
 
大槻:子供な自分が一番面白いんで。
 
──やはり、興味の方向が「自分」に移っているんですか。やたらと「大槻ケンヂ」とか「オーケン」とか出てくる歌詞が増えたなっていう感じがしますもんね。
 
大槻:社会や他人をどうこうしようっていう前に、もう40にもなって、こんな汚い部屋に住んで…ボク、掃除が一切出来ないんですよ。そんな自分をどうにかするほうが問題だよっていう。ホント、今ヤバイんですよ、布団とか。イヤー、もうカビとか生えてきたらどうしよう…。
 
──そんなに汚いんですか。
 
大槻:ホントにひどいんですよ、今。
 
三柴:まず自分から変えていかないとね。世界を変える前に…。
 
大槻:この腐った音楽業界の前に、自分を変えなきゃダメだ。…ホント、掃除ぐらい出来るようにならないとダメですよ。
 
三柴:反省ロッカーじゃん(笑)。自分のことは棚に上げといてっていうロッカーが多い中でね。「結局、何も出来ないんじゃん」って言われるロッカーが普通なんですけど、オーケンの場合は自分でもうわかってるからね。…全然大人な視点じゃないけど(笑)。
 
ARIMATSU:「デス市長」とかは政治的な歌詞だけどね。
 
三柴:社会派ロックだからね(笑)。
 
大槻:「デス市長」に関しては、パンク・ロックというのは自由を求め、社会批判をするんだけど、じゃあそうやって自分たちでルールを作った時に、そのツケは誰がとるんだっていうことは一切誰も歌わないんですよね。みんな「自由を!」とか歌うだけで、自由を得るために自由と同時に得てしまう不自由については誰も言わないから。例えば「自由だ!」って言ってロックを歌えば、それだけで騒音問題が発生する訳で。そういった自由を得るためのツケっていうのを考えて作ってみました。でも、そういうのを真面目に歌うと、ホントに社会派ロックになっちゃうんで、ボクなりのコミカルな歌にしたっていう感じですね。この曲は「高木ブー伝説」以来の天才的な曲だと思いますね。
 
──いい歌詞思いついた! …みたいな。
 
三柴:曲もコード自体はすごく簡単だし、高校生バンドとかにコピーしてもらいたいですね。
 
大槻:替え歌もいっぱい作れそうだし。
 

みんなブラック・メタルをちゃんと聴いたほうがいいよ

──タイトル曲でもある『綿いっぱいの愛を!』ですが、これはPVもかなりインパクトありましたよね。大槻さんのコスプレはわりと見慣れてるんですけど、NARASAKIさんのコスプレは…何事かと思いましたよ(笑)。
 
NARASAKI:あれは、ブラック・メタルが自分の中で流行ってたんで。でも、完成を見たらコミカルな感じになってたんで悲しかったですね。
 
三柴:あの格好してものすごく悲しそうな顔してるから最高に笑えるんだよね。
 
NARASAKI:あの時は、口の中に血のかわりのトマトジュースを含んでたんだよ。もう口中酸っぱくって、いざ吐き出したら唾液だらけになっちゃってて…。こんなハズじゃないって感じでしたねぇ。
 
──衣装もバラバラですけど、話し合って衣装を合わせたりしないんですか。
 
大槻:特撮はロック界のヴィレッジ・ピープルなので、もう格好はバラバラですね。
 
三柴:昔は「今回はグロ系で…」とか、合わせようとしたこともあるんですけど、どうやったって合わないんで、そういうのはもう諦めましたね。
 
NARASAKI:みんながオレに合わせればいいんだよ。みんな白塗りで、ブラック・メタルのバンドとしてやっていったほうがいいんじゃないですかね。
 
ARIMATSU:(笑)。じゃあいいよ、それで。
 
──最後にアルバムについて一言ずつお願いします。
 
NARASAKI:イヤ、いいと思いますよ。もう、1枚でも多く買ってもらいたいですね。とにかくお金が欲しいんで…。
 
三柴:(笑)。そればっか言ってるよね、最近。
 
NARASAKI:…大儲けしたいんで。
 
大槻:大儲けするんだったら、特撮以外のことやったほうがいいんじゃないかなぁ~? 株やるとか。
 
──バカ売れしたい人がブラック・メタルの格好してちゃダメですよー。
 
三柴:イヤー、わかんないよー。あれはやっぱり目を惹くもん。バカ売れを狙っている人ならではの戦略かもしれないよ。
 
NARASAKI:もうちょっとみんなブラック・メタルをちゃんと聴いたほうがいいよ。
 
──それは儲かるんですかねぇ!?
 
NARASAKI:スカンジナビアとかでは儲かるんじゃないですか。
 
大槻:今回はかなり異質なアルバムで、まったり感がレッド・ツェッペリンを超えたなっていう感じで。ツェッペリンの『聖なる館』に近いものを感じたんですけどね、個人的には。今回はあんまり轟音っていう感じもしないし、音がキレイだよね。
 
三柴:もちろん轟音ギターも入ってるんだけど、もっと幅広い層に訴えかけられるアルバムだと思いますね。だから是非そういう人にも聴いてもらいたいです。
 
ARIMATSU:イヤー、今回のアルバム、本当にヨロシクお願いします!
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