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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】特撮(2005年7月号)- ロック界のヴィレッジ・ピープルが放つ、前人未踏の形容不能ワールド『綿いっぱいの愛を!』

ロック界のヴィレッジ・ピープルが放つ、前人未踏の形容不能ワールド『綿いっぱいの愛を!』

2005.07.01

死んじゃう前にピアノを真剣にやらないと

──これだけ色々なタイプの曲を1枚のアルバムにまとめるのって大変そうですけど、サウンド・プロデューサーのNARASAKIさんとしては、トータルのイメージをどんな感じにまとめたんですか。
 
NARASAKI:今まではわりと全体的に音を汚してたんだけど、今回はメインのエンジニアが変わったっていうのもあって、キレイに録ろうかなっていう感じで。前のアルバムがスゴイ汚い感じだったんで、今回は全体的にクリアなサウンドですね。
 
三柴:今回は随分とハイファイですよね。だからオーケンの歌は前に出てるんだけど、他の楽器もちゃんと一つ一つ聞こえるっていうミックスになっていますね。
 
──特にピアノがすごく前に出てますよね。
 
三柴:今回は一生懸命ピアノを弾きましたからね。ほとんどナッキーにシンセとか効果 音を入れてもらったんで、シンセを弾かなかったんですよ。だから、ボクはもうピアノをメインでやれたんで。ファースト以来ですね、これだけピアノを弾いたのは。
 
──それは何でだったんですか。
 
三柴:去年、ちょっと体を壊して入院したんですけど、その時「ああ、死んじゃう前にピアノを真剣にやっておかないとな」って思って。まだやり残したことがありますから。ロックな世界で生ピアノが入っているっていうのが最近すごく少ないじゃないですか。せいぜいデジタル・ピアノか打ち込みなんですよ。世の中で「おおっ、このピアノはッ!」って思うようなのは少ないから、それをどうしても残しておきたくて「生ピアノにさせて下さい」って初めにみんなに言いましたね(笑)。
 
──そんな悲壮な決意を持ってやってたんですね。
 
三柴:まぁ、いつも悲壮な決意でやってますからね。ライヴでも毎回これが最後だと思って演奏してますから。…まぁ、今回は思いっ切りピアノを弾かせてもらいましたね。
 
──これぞロック・ピアノ! っていう感じですか。
 
三柴:イヤ、ロック・ピアノってなると、ロック・ピアノのセオリーみたいなものがあるじゃないですか。そういうのを全く無視した上で、ロックの上にピアノを乗せるっていうことを自分の命題として考えているんで。だから、普通じゃあんまり弾かないような感じのピアノですね。
 
──音的にも、バンド・サウンドの上に生のピアノを乗せて行くっていうのは難しそうですよね。
 
NARASAKI:サウンド的には生のピアノは確かに扱いが難しいですね。結構レベルを上げてやらないと繊細なところまで伝わらないし、色んな音が混じっていくと音色自体も変わってきちゃうし。その辺は色々と考えながら音を構築させました。
 
三柴:すごい苦労をかけてるんですよね、ボクのせいで。ボクのピアノってダイナミクスも大きいし、色んな音色が出るようなタッチで色々と弾いてるんで。ボクは弾くだけ弾いちゃって、まとめはNARASAKIくんに任せてるんだけど大変だと思いますよ、いつも(笑)。
 
──ドラム的にはどうなんですか。色んなタイプの曲を叩き分けるっていうのは。
 
ARIMATSU:イヤ、そんなに大変じゃないですよ。プリプロの段階で、録音したものを持って帰って、ここはこうしたほうがいい、ああしたほうがいいって、ダイナミクスの兼ね合いとか気にしたりはしますけど、サウンド的には自分の好きな音を録ってるっていう感じですかね。
 
──ドラム自体の音も曲によって変えてたりしますよね。
 
ARIMATSU:まぁ、曲調によってチューニングを変えたりとかはしてますね。
 
NARASAKI:結構ミックスの段階で音を変えてたりするんですよね。全部同じ音でやっちゃうと、どれかがオイシクなくなっちゃうんで。どのパートもオイシク聞こえるようにまとめるっていう感じですかね。
 
三柴:ARIMATSUのドラムって、よく聴くと面白いのが、普通のドラマーってもうノリ一発でドッカーンっていう感じなんですけど、ARIMATSUはすっごい細かいところまで入念に研究してやってるんで。「そこまで細かくこだわってるの!?」って思うようなところまで頭を使ってやってるんですよ。そういうところはピアノも合わせがいがありますね。
 
──フレーズとかもキッチリ決めてからレコーディングに臨んでるんですか。
 
ARIMATSU:まぁ、レコーディング入る前は一人で練ったりっていう作業はしていますね。自分が聴いてる音楽とかもそういうのが好きだし、特撮でもそういうドラムのスタイルでバンドがまとまって行ければとは思ってるんで。必然的に、ここを出さないとノリが変わって来ちゃう、とかそういうところは気にしてますね。
 

ネタっぽい曲は……

──歌詞に関しては、曲が全部出て来てから書いてるんですか。
 
大槻:大概はそうですね。「江ノ島オーケン物語」とか「デス市長伝説(当選編)」なんかは曲と詞同時に作った感じなんだけど、あとはみんな曲先ですね。
 
三柴:ただ「回転人間テクレ君」とかは、あらかじめ世界観みたいなものがオーケンの中にあって、詞までは行かないんだけどモチーフがあったんで、それをみんなに話して作っていくっていう感じでしたね。だから、オーケンは自分で作った曲に関しては、ある程度先に詞のイメージがあって、それに合わせて曲を作ってるんじゃないかな。
 
大槻:ネタっぽい曲は大概詞と曲一緒ですね。ネタっぽい曲はそうなるんですよ、昔から。…もう「ボヨヨンロック」の頃から(笑)。曲が先にあって、それがネタっぽい詞になるっていうのはあんまりないですね。
 
──歌詞が出来てから、歌詞に合わせて曲をアレンジしていく、みたいな作業ってあるんですか。
 
三柴:そうでもないですね。ナッキーが効果音を足したりっていうくらいですよ。
 
NARASAKI:今回は効果音多いですよね。
 
三柴:ポーッていう汽車の音とか、「デス市長」の爆発音とかにも凝ったもんね。
 
──効果音に関しては、曲単体としてではなく世界観を演出していくために入れているという感覚なんでしょうか。
 
NARASAKI:ボクが作る曲はわりと、曲を作った段階で歓声が入ってたりとかするんですよ。デモテープの段階で歓声をワーッて入れてるんですよ。
 
三柴:色んなところにウォーッとか入ってるもんね。
 
NARASAKI:デモの段階でそういう効果音を入れないと盛り上がらないんですよ。
 
──そんな盛り上げ方、初めて聞きましたよ。
 
NARASAKI:始まった途端にウォーッて入れることによって、自分的にも盛り上がってデモ作りが楽しくなるんですよね。
 
──NARASAKIさん的には効果音も含めて曲だっていう感覚なんですか。
 
NARASAKI:よくわからないんですけど、なんか盛り上がってるところで歓声を入れたくなるんですよね。ミックス中にも、聴いてると盛り上がっちゃって「ここに効果音入れよう!」とか。
 
三柴:まぁ、入っているのはわかりやすい効果音が多いので、例えばオーケンの本を読んで買ってみようって思った人も楽しめると思いますよ。「あっ、こんなところにこんな音が!」みたいな感じで、音楽以外の部分で発見があって。そういう楽しめる要素が入るのはアリだと思うんで。…まぁ、普通はそういうのはキーボードの人が入れるんだと思ってたんですけど、ボクがとにかくシンセもキーボードも詳しくないもんで…。その辺、ナッキーが長けてるので、全部任せちゃってますね。
 
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