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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ランクヘッド(2005年4月号)- 新章突入──「体温」そして『月と手のひら』止め処なく溢れ出す "命が燃える音" への希求

新章突入──「体温」そして『月と手のひら』止め処なく溢れ出す “命が燃える音” への希求

2005.04.01

生きてるっていう、ただそれだけで必死なんだなって

──部屋で聴いてても拳を握りしめる感じです(笑)。歌詞のことも聞きたいんですが、シングルのカップリングにもなっていた「ハイライト」で「嫌われたくないから心にもない事を言う」と歌われてますが、こういうことって自分も思い当たる節はあるけど、誰にも言えないし、日記にも書けないことのような気がして。それが歌になって、人の声で聞かされることで、余計に自分に返ってくるものを感じました。
 
小高:あぁ。「ハイライト」はすごい迷ってる時期に書いてて。でも、僕も日記には書かないですよ。ランクヘッドだから言えるんだと思う。ただ、歌詞も随分変わったと思うんですよね。家の窓から外を眺めてるのが『地図』だとしたら、今度のアルバムは家から一歩外に出れた感じがあって。でも1stの時に、“これから先きっとどんどん開けていくんでしょうね”ってインタビューでもいつも言われてて、その通 りになってくのがすごくシャクで。天の邪鬼なところがあって(苦笑)。でも、人間としても成長していくし、僕、来月で25歳なんですよ。そういう中でずっと同じことをぐちぐち言ってるのもヤだし。一番思うのは、『地図』の時と今では、バンドとしての成長がすごい大きいと思うんですよね。
 
──そうですか。
 
小高:うん。さっき、龍(石川)が俺の声とか詞を埋没させないって言ってたけど、僕は逆で、先に曲が固まってバンドの音がガッチリしていくことで、音の鎧に守られているような気がして、そういうところに背中を押されて言葉が出てくるところもすごくあって。「体温」もそうですね。いつも、音やメロディが求めてる言葉を探すんですね。どういう言葉をこの曲は求めてるのかな、待ってるのかなって。僕が原曲を作ってくけど、みんなに聴かせた時点で僕のものじゃなくなるし、歌詞も、みんなの作った音から出てくるものだから、歌詞が強くなったっていうのは少なからずバンドの成長もあるんだろうなって…今、思いました(笑)。
 
──「ハイライト」で、「誰かにとって何かでありたい」と歌われてますよね。「魚の歌」では、「生きていることの証が欲しい」と歌ってる。どっちも、他人からの評価や外側から得られるものを求めてるのかなと思ったんです。「自分は誰かのためになってる」って自分で思えればいいけど、それは自己満足でしかないのかもしれない。ただ、他人の言葉を待ってるだけの弱い歌とも思えないし、他人の反応が得られなかったら前に行けないのか? というと、そうじゃないと思うんです。その辺って実際はどうなのかな、と思ったんですが。
 
小高:うん。やっぱねぇ、自分っていう人間がイヤでイヤでしょうがないって時が結構あって。誰でも彼でも羨ましく見える時があるんですよね。“俺よりはマシ”、みたいな。人として。
 
山下 :(ボソッと)そんなことないよ。俺もそう思うほうだから。
 
小高:“今日は歌詞を書こう”ってノートを広げて、神の啓示が降りてくるのを待つわけですよ。それから何もしないまま、気づいたらノートが見えないぐらい辺りが暗くなってて。で、電気をつけると余計わびしい気持ちになって。“もう9時か、そろそろ呑むか”って。呑むと書けるかなって思うんだけど、酔っぱらうと余計に書けなくて。今日一日何をしたんだろう? って。何もしなかっただけが残っちゃったよって、余計ダメな方向に行ったりして。っていう中で「魚の歌」が生まれ。魚はまだ晩ご飯のおかずになり、血肉になれば誰かの役に立つけど、でも100円引きの魚だから、廃棄処分かもよ。俺とお前は似てるかもよ、ふはーって。
 
──そういう歌詞があるからって、小高さんが四六時中落ち込んでるとは思わないけど、歌詞を書くことって必要以上に自分に向き合う作業なのかなと思って。そうした時に、誰にも言えなくて歌にしかできないような言葉ばかりが出てくるのかな、と。
 
小高:歌詞が出来ない時に、友達から言われたんです。“小高らしいことを歌えばいいじゃん”って。でも、親に対する時の態度と、友達とかメンバーとか知らない人とかに対する態度は全部違うし、みんなの中にある俺の印象ってそれぞれ違うじゃないですか? それぞれの中に別々の小高らしさがあって、じゃ本当の俺らしさってどこにあるんだ? 曲にするべき俺らしさって? 全然どこにも見つからないって思って。“見つかりません。どうしよう”っていうのがそのまま「ハイライト」で。でも誰かにとって何かでありたいし、その頃、龍に薦められて太宰 治を読み出して、彼の生き方ってまさにそのままだと思って。道化を演じまくって、人に否定されるのを極端に怖がって、でもどうしようもなく誰かを求めてしまって。一見ものすごく弱いように思えるけど、生きることに対してものすごく必死なんだと思って。生きてるっていう、ただそれだけで必死なんだなって。そこで「体温」につながっていったんですね。
 
──なるほど。そうだったんですか。
 
小高:一方で僕は、判りやすいお祭り好きなところもあって、熱血モノも大好きで、対照的なんですけど同時期に本宮ひろ志も読んでて。そこにも生きることへのエネルギーとか“熱いぜ!”っていうのがあって。それも「体温」につながっていくんですけど。
 
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